白い鬼の姫
幕間なので気にしないでください
鬼人族は代々最も強い者が治めてきた
今より280年前、若き日のアマツユは先代王より次期頭首へと任命されていた
誰もがその通りになる。そう思っていた。
アマツユ自身も、そのライバルであったキリサメもだ
そんなある日、先代が亡くなられる
戦場で敵の毒矢を受けてのことだ
すぐに処置は施されたが、毒消しの薬も魔法も受け付けないほどの猛毒
国に帰還しすぐに息を引き取った
すぐに次期頭首であるアマツユにその任が受け継がれる
戦争も終わり、しばらくたったころ
キガシマへと帰還した一人の女性がいた
先々代頭首、ウラの娘だった
彼女はアマツユと同世代の力ある戦士だったが、自らを鍛え上げるために旅に出た
そんな彼女子供を連れて帰ってきた
そのことは国中に知れ渡る
子供、少女があまりにも美しかったからだ
ウラの娘はその子を自分の娘だと言った
目元も魔力もそっくりなその子が娘だというのはわかるが
問題はその子が希少種の白鬼だったということだ
白鬼は鬼人族の歴史上1度しか生まれていない
その力はどの鬼人をも凌駕すると伝えられている
その子をキガシマに連れてきてすぐ、ウラの娘は亡くなった
旅の途中で患ってしまった病のためだ
娘の名前はハクラ
まだ子供のはずなのに母親の死を泣くことなく受け止めた
父親はすでに亡くなっているという
幼くして母と父を両方なくし、ハクラは先々代の孫娘ということでアマツユに引き取られた
子育てなどしたことのないアマツユには子供、さらに女の子の育て方などわからない
だが、ハクラは器量もよく、自分で何でもこなした
戦闘訓練にしても、腕力こそはあまりないものの、魔法はどの鬼族よりも抜きんでていた
その理由は仙力
父親の力だった
仙力をうまく操り、魔力と身体能力を高め、恐るべき能力を発揮した
それから幾月も年を重ね
強く、美しく成長したハクラは名実ともに次期頭首へと任命された
早期に隠居したアマツユを側近に付け
頭脳と手腕で傭兵団を立ち上げ、それを国のある意味特産として世界各国へと貸渡した
しかしこの傭兵団にはルールがある
・非人道的行為に関する依頼はNG
・戦争、または戦争に準ずる以来もNG
・依頼は主に魔物退治や魔獣退治に関することだけ
などだ
ハクラはもっぱら平和主義者だったが、好戦的な部下たちのため
戦争以外の方法でその欲求を満たす
それが鬼人傭兵団だ
それから数年
その美貌と傭兵団の話は世界中に轟く
ヒュームの国でも魔物退治の依頼など、現在の愚王の先王の代では友好的な関係を築いていた
そして現在、愚王の代
ここ15年は先代と同じく友好的だった
しかし、ある時からダーストン王は変わった
誰も知らない
宰相はそれほどにうまく事を運んでいた
世界は優秀な宰相のおかげで国が持っていると思ってる
宰相が王を愚王に変えたとも知らずに
そのことにただ一人気づいている存在がいる
それが愚王の息子のデュルクだ
彼は今、宰相にも気づかれないほどの水面下で動いていた
魔王に情報を流すために
彼は、今、魔王と手を組もうとしていた
ハクラ姫を奪うため、鬼人族に戦争を仕掛けた父親を止めるために
囚われの姫を救うがごとく
彼は奔走していた