14 最終決戦2
強大な力は魔王連合軍に恐怖の影を落とした
対して闇の軍勢は指揮を高めていく
その闇の軍勢に、闇の王の一撃が振り下ろされた
闇の兵、黒い兵と黒い魔物はすべて消えさる
「王、一体何を!」
セプテリルが驚愕し、問う
「もう君たちにも用がないから、消えてもらおうと思ってね」
「な、何を、言って…」
闇の王が手を一振りし、セプテリルたちにゆっくりとかざしていった
右から左に手が流れると、シェイナたち魔王連合軍を残してすべての闇のモノたちが消えた
恐ろしいほどのあっけなさ
彼らは最後の言葉を残すこともなく一切合切が消え去った
信じてきた闇の王自身の手によって
「なにが、起こったの?」
今しがた起こった衝撃の光景に言葉を失うシェイナ
それはあの時みた上位次元の少女が行った“消去”と似て非なるもの
世界そのものを消す力である“消去”に対し、闇の王が行ったのは“削除”
すべてを消す力はないが、任意のものを消す力だった
それは当然シェイナたち側にも行使できる
彼女たちが生き残ったのはただ単純に闇の王が彼女たちと話したかったからに他ならない
「これでゆっくり話せそうだね」
「初めまして、僕に名前はないから闇の王とでも呼んでね」
ニコリとほほ笑む王、そこにはまるで邪悪な気配はない
むしろ癒されるような笑顔だった
しかしそれが逆に恐ろしさを醸し出している
「あなたは一体、誰な」
「その前に、邪魔者は排除しておこう」
再び闇の王が手をかざして右から左に流すと、シェイナ、イア、詩季を残して誰もが消えた
周囲にあれほどあったざわめきはなくなり静まり返る
「そ、そんな、ミューが、サクラが、皆が消え…」
「さて、君たちと話したかったんだ、」
「ずっと、ずっと見ていた。」
あまりのことに三人は彼の言葉が入ってこない
それに、体は全く動いてくれなかった
重圧をかけられているかのようにピクリとも動けない
「君たち以外に光の王のかけらを持っていた子たちは、誰も彼もその力に適応できずに僕の配下に消されていった」
「そういえば、君もそうなるうちの一人だったんだけどね」
そう言ってシェイナに指を向ける
言われて思い出す
自分が元いた世界、転生する前の自分を
あの時は世界の勇者として選ばれ闇と戦い敗れた
大切な家族も友人も、すべてを亡くし、一人で挑み、自分も闇にのまれて消える予定だった
女神に救われていなければ今ここに自分はいなかったはずだ
そして再び手に入れた大切な存在
それもたった今しがた消された
ぽろぽろと涙があふれ出す
「さて、君たちに聞きたい」
「おとなしくかけらを渡してくれないかい?」
「そうすればこの世界から闇を引き上げて君たちの仲間もすべて無事に返そう」
かけらを渡せばみんなが帰ってくる
また平和な暮らしが戻ってくる
そんな考えが頭をよぎる
いっそのこと渡してしまおうか
僕はもうなにも失いたくないから
手を伸ばして差し出された闇の王の手を取ろうとする
「だめです!」
その手をイアと詩季に抑えられた
「あいつの言ってることは絶対嘘、渡しちゃったらきっとあたしらも消される」
その考えはおおむね正解だった
現に彼女らは光の王の欠片と融合しているため消すことができない
だからこそかけらを引きはがす必要があった
「やっぱりだめか、まぁ予想通り」
「さて、じゃぁ戦いを始めようか」
「君たちが僕に勝てば終わり、僕が君たちからかけらを奪えば世界は終わり、簡単だろ?」
話は終わったといわんばかりに彼は歩み始める
シェイナたちは構えた
女神たちは闇の力が行使されたのがはっきりと分かった
「急ぐ、走って」
デュオリムがつぶやく
女神達は戦場の目前まで来ていた
始まりまでのカウントダウン