生誕は物語の後で
フィーアは隠れていた
ノルとアンリに隠れるよう言われ、気配を完全に絶っている
そして見てしまった
姉二人がなすすべなく粉々に砕かれる姿を
姉上…私はまた、助けることができなかった
悔みながら闇の王の動向を見守る
彼は何かをつぶやくと世界のかけらの一つを手に取った
そして吸い込まれるように中へともぐりこむ
シェイナのいる世界へと降り立ったのだ
まずい、あそこには姉上とシエティが!
すぐ後を追うようにフィーアも降り立つ
降り立った先は森の中だった
すぐに姉上たちを探さねば
位置は...
近いな、どうやらあの男はこちらに気づいていないようだ
急がねば
森の中にはすでに闇の王の姿はない
どこかへと飛び去ったようだ
感知能力を最大限に発揮し、デュオリムたちの居場所を突き止める
どうやらシェイナの元へと向かっているようだ
その足は魔王国へと向かっている
同じように闇の王の気配もそちらへと向いているようだ
まずいな、このままいけばぶつかる
早く姉上たちと合流しなければ
ノル姉上、アンリ姉上、かならず敵を取って見せます
進める足を速めて魔王国へと向かうフィーア
ところどころで魔物が襲うが、流れるように撃破し、歩みを一切止めない
――――――――――――
こちらに向かってくる知った気配に歩みを止める三人
二番目のデュオリム、三番目のトレーシャ、そして末妹七番目のシエティだ
「デュオねぇ、この気配って」
「うん、フィーア」
高速で向かってくるフィーアの気配
「何か、あったのでしょうか?」
数分後、フィーアの姿が見えた
「どうしたの?フィーアねぇ」
フィーアは悔しさと悲しさの入り混じった顔で三人を見る
目には涙を浮かべていた
「姉上が…もう残っているのは私たちだけだ…」
フィーアからこれまでのいきさつを聞く
「そんな、お姉ちゃんたちが…」
女神たちは半分にまで減ってしまった
残った女神達では闇の王には勝てないだろう
それでも行くしかない
シェイナたちを助けるために、この世界を闇で染めないために
四人は走った
―――――――――――――
これで役者はそろった
あとはあの子が壊したかけらを収束させて一気に世界を引き上げる
こちら側にね
えぇ、私、準備するわ
もうすぐ生まれそうなの
うん、よろしくね
その子が生まれれば管理体制も整う
僕と君の子…
愛おしそうにおなかの大きくなった妹の腹を見る
彼らの子供がその中にいるのだ
まもなく生まれそうである
僕たちには名前はない
だからこそ、その子には名前を
誕生までもう少し
世界を生み出すため、この子に世界を託すために
双子の創造主は準備を始めた
自分たちはそれで役目も終わり消える
それでもよかった
長年の夢がそれで叶うから
今日初音ミクの日じゃないか