13 迫りくる闇の猛威5
セプテリルのうろたえ振りはかなり激しいものだった
すでに狂乱の半数近くが消滅している
体の一部さえ残っていれば復元できるが、消滅したどの狂乱も一部も残さず消えた
まるで自分たちは満足した、とでもいうように
いや、実際そうなのかもしれない
狂乱達はもともと復讐心や悲願が生んだ化け物たちだ
彼らが満足すれば存在意義はなくなる
「やはり私たちが行かねばならない」
「すでにこの世界の住民たちは我らに迫る力を持ってきている」
「どうやら、何者かが干渉し始めているのかもしれないね」
イアの世界を闇で飲み込もうとした男、デュオッソニウスが不敵に笑っている
「神や創造主よりも上位の存在か、あの時の少女、あれと同等…」
少し前に一度この世界を消し去った少女ロナ、混沌と呼ばれるモノの一人
そんなものに出られては闇たちでは適わない
しかし彼らの決意は変わらない
自分たちの世界を突如として消した双子の創造主に復讐を果たす
それが彼らの願い
――――――――――――
シェイナたちはゴードロン王の前にいた
闇の二人を撃退したことでこの国は救われた
王は直々に礼を言いたいということで呼ばれたのだ
「本当によくやってくれた」
「いや、いただけたじゃな」
「効けばシェイナ様はマシニア国の女王だそうではないですか」
かしこまられたことに委縮した
慣れないことなのでちょっとびっくりしたので、元の口調でお願いしますと言うと
わしもその方がしっくりくると言ったのでほっとした
ゴードロン王から様々な金属、財宝を報酬としてもらうと、すぐにドワーフの国を旅立った
魔王国のサクラ(魔王)から呼び出されたからだ
緊急を要すると言う
どうやら狂乱の残りのメンバーが一気に攻めてきたようだ
今なんとか魔王とその配下たちで食い止めてはいるが、長くはもたない
簡易転移装置ですぐさま魔王国に戻ると、すでに国は戦場となっていた
大量の黒い兵たちに魔王国の兵たちは押されていた
どうやら闇率いる狂乱たちも本気のようだ
重傷を負い、運ばれる魔王の兵たちをしり目に急いでサクラの元へと向かった
道中襲ってくる黒い兵を一撃で屠り、襲われている人々を助けつつ急ぐ
途中で幹部数人と出会って合流
マリオネットマスターのキムタム、コープライとマーローの恋人たち、鬼人族のアマツユ、シルフのシルアやニンフのエコー等々、彼らは怪我こそしているもののとりあえずは無事だった
それは、肝心の狂乱達が手を出してきていないということもあってのようだった
「いったい、何を考えているのでしょうね?」
イアが当然の疑問を投げかける
それは誰にもわからないが、ひとまずはサクラと合流するため急ぐ
周りでは少なからず死者が出ている
幹部連中は一人も死んではいないものの、一般市民に被害が及んでいることにシェイナたちは心を痛めた
まもなくサクラの指定した場所だ
大扉が眼前に迫る
一気に開くと、そこには逃げのびた一般市民と、それらを守る幹部たち、指示を出すサクラの姿があった
ところどころに傷を負っているが、元気そうな様子にホッとした
ひとまず流れ込んでいた黒い兵を一掃し、彼らを助けた
シェイナとサクラ、ミューは再会を喜び抱き合う
勇者、守護者、魔王の抱き合いという世にも珍しい光景だが、親友となっている彼女たちにはすでに違和感などない
「よかった、無事で」
心の底から安心したシェイナは魔王をしっかりと抱きしめている
痛いほどに
外では相変わらず黒い兵が蠢いているが、やはり狂乱はただ見ているだけだ
疲弊するのを狙っているのだろうか?
しかし、シェイナたちからすればそんなもの大した労力もなく全滅させるだろうことは相手も知っているはずだ
ならばなぜ?という疑問に答えるかのように狂乱達が大声をあげた
筆頭はリコリスとルコリアの双子の姉妹
「「そろいましたわね」」
「「では、あなた方には我らが主様たちがお相手いたしますわ」」
息のそろったその声に次いで、空間が歪むようにして裂けた
そこから出てきたのは、闇の一団だった
そろそろ決戦です