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コロポックルちゃんは龍玉を探しています終

 龍玉の調査は完了したようだ

 結果、それはアズにしか使えないことが分かった

 アズが触れば様々な機能が起動するのだが、他の者が触ってもうんともすんとも言わない

 とりあえず龍玉はアズが持つことになった


「わっちにこれが使いこなせるかわからないけど、きっと使いこなして見せるよ」


 それから数日、リュウグウにて滞在を楽しんだ

 観光名所を一通り回り、おいしい料理を食べ、十分に満喫して、さて地上に帰ろうかというときにそれは起こった

 

 突如として襲来する一人の翼人の男

 それは強すぎた

 調査に来ていた冒険者や実力者をたやすくねじ伏せ、リュウグウの兵たちも全く歯が立たず、成すすべなくリュウグウを壊されていく

 死者は多数、このままではリュウグウは滅びてしまうだろう

 当然アズたちも参戦した

 最初こそはなんとかアズの精霊魔法で善戦していた

 アズの魔法はなかなかに強力で、翼人の男を圧倒していた

 その時現れたのがアズと同じコロポックルの少女だった


「久しぶりねアズ」


 その声、その姿にアズは見覚えがある

 目を見開いて驚いた

 それは、かつての自分の親友、まだ実力が伴わない初心者だったころに魔物に殺されたはずのラピスだった


 二人で龍玉を探す旅に出た

 二人はとても仲が良かった


 初めての戦闘で強い魔物と出会ってしまったのが命運を分けてしまった

 その戦闘でラピスはアズをかばい死んだ

 確かに、死んだはずなのだ


「あちしが炎であなたが氷雪」

「相性は悪かったけど、とっても仲良しだったわよね」


 そう言われ、思い出す郷での日々

 幼いころから常に一緒でまるで姉妹のように育ってきた

 生きていたことは嬉しかったが、その彼女は今敵となって前に立ちはだかる

 現に仲間たちが一撃で倒され、重傷を負い倒れている

 速く治療しなければやがて死んでしまうのは目に見えて明らかだった

 特にリンナのやけどは酷く、顔や腕など上半身の皮膚は溶けて張り付き、呼吸もできそうにないほどドロドロだった

 全員が死にかけている

 助けなければ

 焦る気持ちで攻撃を仕掛けるが、氷結を得意とするアズでは炎を得意とするラピスに届かない

 全てが当たる前に気化させられた


「お願いラピス!このままじゃリンナが死んじゃう!」


 ラピスは笑う

 凶悪に


「あちしが死ぬ間際、あんたは逃げたよね?」

「あちしを置いて!」

「それが今では新しいお友達と一緒に仲良しこよし」

「むかつくんだよ!!」


 大火炎

 まるでマグマのように吹き出す炎がアズを襲った

 焦熱地獄のように燃え滾る

 血は沸騰し、一気に体が炭化し、指先から崩れ落ち始めた

 声も出せないほどの熱波に肺は焼かれ、呼吸はできなくなった

 やがて意識は奪われ、死の足音が目前に迫る


 その時、持っていたリュックから光が漏れ始めた

 龍玉が輝きを放ちながら飛び出す


「死なせない」


 龍玉から声がした


「君を、死なせない」


 その声は遺跡で出会った少年、リロロスのものだった

 

 龍玉は、ほとんど炭となり、死のうとしていたアズに入り込む

 それはアズの魂と癒着し、アズを進化させた


 炭化していた体は再生し、体長15㎝ほどの体は人と同じくらいのサイズにまで大きくなる

 

 アズは氷雪女王コンルカムイへと進化した


「なに!?その姿は何なの?」

 

 ラピスは驚愕の声をあげた


 顔立ちは変わらないが、美しく、暖かそうな青い目、腰まで伸びた薄い青の髪

 リンナと同じくらいの身長165㎝ほどになっている


「癒しの雪花!」


 周囲に雪の花が舞い散ると、倒れていた仲間たち、冒険者や一般市民、兵士がその傷を治癒していく

 顔もわからないほどドロドロになっていたリンナは傷一つ残すことなくもとの姿に戻った


「守りの雪像!」


 巨大な雪の兵士が現れ、倒れていた仲間や人々を守るように覆う


「礫靭の獄氷!」


 周囲の空気ごと凍らされた氷の刃が無数に現れ、ラピスと翼人の男アニマに襲い掛かった

 炎をぶつけて溶かそうとするが、次から次へと放たれ飛んでくる氷刃に炎の温度がどんどん下げられ、やがて水蒸気爆発を起こした

 爆発をもろに受けたアニマは下半身を吹き飛ばされ、上半身もボロボロになる

 それでも氷刃は止まらない

 そのうちの一本

 たった一本がラピスに届いた

 それはラピスの体を貫き、地面へと縫い付けた


 小さな口からカフッと吐血する

 

「あれ?なんでこんなの刺さってるの?」


 状況を理解できない

 相手はかつての親友だが自分より弱いはずだった

 なのに、急に姿が変わり、自分を圧倒していた

 

わからない、何が二人をこんな風に分けてしまったのだろう

可愛い私のアズ

ずっと、私のもとにいて欲しかった


 ラピスはアズに手を伸ばす

 その手をそっと握った

 手の大きさはもはや違うが、ラピスはあの頃二人で暮らした楽しかった日々を思い出す

 走馬燈は幸せだった日々ばかり

 そっと目を閉じるとラピスは満足そうな笑顔で消えていった


 吹き飛ばされたアニマもラピスの様子を見て安心したのか、一言だけアズに言って消えた


「ありがとう」


 アニマは本来優しく、争いが嫌いだった

 死してすぐのラピスを助けたのも彼だ

 小さな彼女を守りたい

 ただそれだけでラピスと共にいた彼は、今目的を失った


「終わったの?」


 アズはゆっくり気を失っているリンナたちに近づく

 酷いやけどを負ったリンナは既に傷一つなく完治していた

 

 


 それから数日後、多数の死者を出したリュウグウは敵を倒したアズたちをたたえた

 アズの顔は浮かない

 再会した親友のことを思っているのだろう


 かくしてアズは龍玉の英知をすべてその体に宿し、大きな力を手に入れた

 

 そして、今度の旅の目的は

 

 初心者支援施設を立ち上げること、そして、自分たちのような初心者の段階で魔物に殺されるのを防ぐため、ラピスラズリという団体を作り上げた


 アズたちは新たな目的のため旅に出る… 

このシリーズは終わりです

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