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4 魔王のもとへ1

 僕たちはエルフの国にいる

世界樹、僕が生まれた大きな木

なんだかずいぶん前のように感じる

まだ一か月ちょっとしかたっていないのに

僕が世界樹を見上げるため外を見ているとドアがノックされた


「失礼いたします守護者様」


「しゅ、守護者様はやめてくださいコニアさん」


今声をかけてきたのは僕の身の回りを世話してくれているエルフの女性コニアさんだ

エルフ族は総じてみんな美、そのものだった

僕たちをこの国に連れてきてくれたカノンさんもそうだが

道を歩く人、兵士、果ては子供にいたるまできれいすぎる

一度コニアさんにキレイですねっていうと

「守護者様も相当美しいではありませんか」

と言われて苦笑いするしかなかった


それにしても落ち着かない

羽が生えたせいか、背中あたりがむずむずする

伸ばしたい

けど、今伸ばすと鱗粉が巻き散って大変なことになるし

あ~外に出たい


ここに来てからすでに5日、その間一歩も外に出ていない

ずっと王宮にいる

王宮内は自由に歩けるし、中庭みたいなところもあるけど

せっかく羽も生えてることだし空を飛びたい

まだ一度も飛んでいない

飛びたい飛びたい飛びたい飛びたいとb


そこでまた扉がノックされた

コニアさんが出る


「守護者様、勇者様が来られました」


勇者、それはミューのことだった


ここに着いてからエルフの秘宝と言われる鑑定眼というアイテムによって

職業適性というものを見てもらった

それにはっきりと

僕、守護者

ミュー、勇者

と書かれていたのだ


ミューはトテトテと部屋に入ってきた


「シェイナちゃん、訓練の時間だって、行こう」


シェイナ、僕のことだ

ワムちゃんという名前はミューに付けてもらったのだが

「もうワームじゃないのにその名前はおかしいね」

と言われ、シェイナとつけられた

名前を付けた人が変えるとどうやら本当に変わるらしい

僕のコマンドでの名前表記がシェイナに変わっていた

この名前は勇者の物語に出てくる光の女神からとったものだそうだ


「オッケーミュー、行こうか」


「おっけー?」


あ、この世界にはそんな言い回しないのかな?


「了解って意味だよ」


「うん、オッケー、シェイナちゃん」


二人で手をつなぎ、訓練へと向かった

戦闘訓練

ミューは模造刀による剣術や短剣術

僕は主にタクトと呼ばれる

某魔法使い映画で使われてたような小さな杖を使った魔法と召喚の練習

タクトは軽く振って待機中の魔素をかき回し、そこに魔力をこめて魔法を発動させるもの

杖なんて使わなくても僕は魔法が使えるんだけど

あまりにも威力が強すぎてとんでもないことになったので

タクトで力を抑えた感じだ


ミューはというと

カノンさんにスパルタ的に剣の稽古を受けていた

しかしミューは泣き言ひとつ言わずに頑張っている

いくらスキルを簡単に覚えれる特異体質だからと言って

そのスキルをちゃんと使いこなせるか?と言われれば答えはNOだ

使いこなせなければ宝の持ち腐れ

ということでいかにしてスキルを使うか

また、フェイントを交えての戦い方や連撃など、実践に必須な技術も教えてもらっていた


さすが勇者というべきか

たった5日だというのにメキメキと上達し

今ではほんの少しだが、カノンさんに攻撃がかすり始めている


「ふむ、いい動きだ」

「私などすぐに超えてしまうな」


エルフの皆が僕やミューに敬語なのだが

カノンさんは違った

僕たちが頼んだのもあったが、カノンさんは熱が入るとそういったことそっちのけで

熱くなる性格のようだった

まぁ、そんな時敬語なんて使ってたらなんかおかしいよね

(もっと!!熱く!!なってくださいよーー!!)

みたいな


さて、僕も魔法の練習をば

タクトを振る

目の前にある的に魔法を放った


「フレイム!」


的は勢い良く燃え上がり、消し炭になった

タクトで魔法を出したからこの程度で済んでいるが

ここに着いてすぐに力を見たいと言われ、魔法を使った結果

ただのファイアボールでこの訓練場が悲惨なことに...

幸い女王陛下の側近である魔術師オールスさんがリターンという修正魔法で戻してくれた


「次は、トルネード!」


的は渦巻く風にずたずたにされる


「うんうん、ちゃんと制御できる」


「ストーンエッジ!」


地面から岩のとげが現れ的に突き刺さる


「よし、フラワーパルファムは実践訓練の時に試そう」


こんなところで使えば周りの人がやばいことになりそうだ

同じ理由でスキル“鱗粉”も却下だ


「さて、召喚の訓練だ」


「サモン!」

タクトを振ると、召喚術式が現れ、そこから蜂のような昆虫種が三体現れた


タクトで的を指し、指令を送る

「攻撃指令!」


蜂は一斉にその的に向かい、毒針を刺した


「防御指令!」


蜂は戻ってくると、シェイナを守るように前に来た


「撤退指令!」


蜂はシェイナの後ろに待機する


「召喚解除」


そういうと蜂は再び召喚術式によって消えていった


召喚魔法

指令さえしっかりできればかなり便利だ

蜂たちも自分に懐いていてかわいい

時おり召喚したときに頭を擦りつけてくるのだ

始めは戸惑ったけど

元虫な僕にそれに対する恐怖はなかった

いや、これが妖精族の当たり前の感情なのかもしれない


「なかなか飲み込みが早いですな、守護者様」


後ろにオールスが立っている

老人のような話し方だが見た目はどう見ても20代前半だ

これで何百年も生きているのだという

エルフってすごい


「ありがとうございます、オールスさん」


オールスさんは若い弟子ができてうれしいのか、何かと僕を気にかけてくれている

それに、いろいろと魔法のコツを教えてくれた

それもあって制御が簡単にできた

やっぱり師匠って必要だね

このままいってたら魔法で都市、いや、国くらいは焼いてしまったかもしれない

守るべき僕が破壊者になってしまうところだ



ふっと、何か気配がした

何か、異様な気配

空だ!


上を見上げる


「みんな!離れて!」


僕はそう言うとタクトを上に構えた


空に黒いもやが現れる

その靄が広がると、中から女性三人と男性一人が出てきた

どれもヒューム族ではない

銀色の体を持つきれいな女性

真っ黒で顔すら判別できず、かろうじて体系で女性だとわかるもの

鬼のような角が生えた男性

手が鳥の翼のようになっている女性


「何者だ!」

カノンが剣を突き付け叫ぶ


「あら~、私たちはお話に来ただけですよ~」

「勇者ちゃんを下さいな~」


「何を言ってる!」


「馬鹿!違うだろ!」

真っ黒な女性が銀色の女性を殴る

銀色の女性の頭がへこんだ


「ヒッ」

ミューが小さく悲鳴を上げた


「も~なにするの~シャーズロットちゃん~」

グニグニと顔が戻っていく


「すまん、争うつもりはない」

「俺たちは勇者の保護に来た」

「魔王サクラ様の部下だ」

鬼のような男が話す


「魔王!?」

「新しい魔王が就任したのか?」


「そうでっす~、私っ達は~、そこにいる女の子を助けるために~来たんでっす~」

手が翼の女性がちょっと馬鹿っぽい口調でしゃべる


「なに?魔王が?」

「勇者と相対するはずの魔王がなぜ勇者を守ると?」

「信用できんな」


「いいからよこしなさいよ~」

「連れて帰らないとまたお仕置きされちゃうじゃない!」


「お前は黙ってろ」

シャーズロットと呼ばれた女性がまた殴る


「痛い~、何で殴るかな~」


「もういいからちょっと黙っててくれ」


「はあい」


むすっとする銀色の女性


「すまん、話を続けよう」

「お前たちも聞いたことがないか?」

「大いなる闇という存在を」


「たしか、妖精女王様が予言に残したとされる世界を滅ぼすもの、じゃったか?」

オールスが答えた


「そうだ、妖精女王様は我ら魔王軍の生き残りに慈悲を下さり、すむ場所まで提供してくださった」

「その恩義にこたえるために勇者を育てると約束した」


「まだ信じれんな」

「なぜ魔王自ら話に来ない」


「それはっですね~」

「あのお方ッも~」

「城を守っている身~でして~」

「離れられないんでっすよ~」


「城を守る?」


「大いなる闇からだ」


そう聞いてオールスとカノンは驚いた


「もう、動いておるというのか?」


「ああ、闇は目覚めた」

「頼む、勇者を渡してほしい」

「必ずわれらが守り、育てる」

「心配なら守護者も来てもらって構わん」

「魔王様は守護者も守りたいとおっしゃっていたからな」

「いや、それどころかあのお方はすべての種族が手を取り合うことを望んでおられる」

「そちらの女王や、妖精女王様と同じようにな」


「...少し、女王様と話し合いをさせてくれ」


「あぁ、わかった」

「では俺たちはここで待たせてもらおう」

「バニエイラ、余計なことはするなよ」

「おとなしく座ってろ」


「は~い、わかりましたよ~だ」

まだむすっとしているバニエイラと呼ばれた女性


すぐに会議が開かれた

決定は意外と早く決まった

女王はこうなることを分かっていたようだ


「待たせたな」

「女王様は勇者様を育成してほしいとお望みだ」

「ただし、守護者様と私もついていく」


「いいだろう、こちらには様々な種族がいる」

「エルフの一人くらいどうということはない」


「そうか、ならば準備がいる。明日の朝出立しよう」


こうして、僕たちは魔王のもとへ行くことが決まった

正直、怖い

魔王と言えば勇者の敵

記憶はないがその認識であっていることはカノンの態度で理解した

もし、ミューに何かするつもりならその時は

タクトなしで全魔法を叩き込んでやる


召喚っていいよね

わたしだったら召喚でいっぱい召喚して国を落とすね

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