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狂乱葬送 爆葬のメルリ

 メルリはその日、両親と共にヒュームの街を見ていた

 炎竜人である彼女はすでにヒュームに化ける術を覚えている

 一見するだけでは全く区別がつかない

 だが、一人の魔導士によってその変装は見破られた

 彼はヒューム至上主義者であり、多種族を見下していた

 しかもそこそこ地位のある人物で、声を荒げてメルリたちがいかに危険かを語る


 それによって民衆の目が変わった

 彼らはメルリたちを捕まえ、そのまま処刑すると言い始めたのだ

 メルリたちは何もしていない

 ただ観光を楽しんでいただけだ

 

 ヒューム達に興味を持った自分たちが悪いのか、それとも民衆を惑わした魔導士が悪いのか

 魔導士には演説の才能があったのも災いし、ヒュームの数倍の力がある炎竜人でも多勢に無勢であっという間に捕まってしまった


「せめてこの子だけは!」


 そう叫ぶ両親の声には耳も向けず、メルリの目の前で両親は生きたまま皮を剥がれ、見るも無残に解体され殺された

 そして泣くメルリにその手が伸びる

 ひん剥かれ、足先指先から順番に切り落とされていく

 

 耐え難い苦痛と屈辱に泣き叫ぶもその手はやまない

 両親よりも長く長くいたぶられ、やっと死ねそうになるが、それでも回復魔法などで延命されできるだけ長く苦しめられた

 

 そして死ぬ間際、メルリはこの世のすべてを呪った

 何をしたわけでもない自分たちをただいたずらに苦しめて殺したヒュームをすべて根絶やしにしたい

 それが彼女の願いとなった

 そして、呪いと恨みの言葉を吐きながら、やがて動かなくなり、いたぶるヒューム達を睨め付けたまま死んだ


 その直後にメルリの体に異変が起こる

 光を失った目が再び輝き始めた

 ヒューム達は光の加減による見間違いだと思ったが、その体がウゾウゾと動き出したことで恐れた


 メルリは再びその口を開き、けたたましく笑う


 彼女は理解した

 自分は蘇ったのだと

 彼女は炎竜人からドラゴンゾンビ系の怨竜死人へと変わり果てた

 その力は手の一振りだけで街を死の都へと変えた

 生きとし生ける者は全てが死に絶え、街に人の気配が消えた


 彼女はそれからセプテリルに出会うまでいくつかのヒュームの村や町を滅ぼした

 

 彼女は今でも思っている

 すべてのヒュームを根絶やしにしたいと

 

 セプテリルと出会ってからはヒュームをまだ殺していない

 それは彼の目的を理解したから

 狂乱最強の彼女は言うなれば切り札のようなものである

 おいそれと力を見せるわけにはいかない


 だが、セプテリルの名とあらばどんなことでもする

 彼に心を救われたから

 だから、今、彼の目的を果たせず消えるのは悔しかった

 悔しかったのだが、もう、恨みはない

 怨恨を消し去る優しい光はメルリを包み込んでいる

 だいすきな父と母の姿が見えた

 手を伸ばし、掴む

 メルリは目を閉じ、安らかに眠った



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