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コロポックルちゃんは龍玉を探しています9

どうしましょう、わっち一人迷子になってしまいました

リンナもジャノもハイリーも探せど探せどいません

皆とはぐれてしまいました


 それは数時間前のこと

 不思議な文字と美しい絵で装飾された小部屋で探索していたアズたちリトルワールドの一行

 小部屋には机がいくつか置かれており、椅子はない

 その机には引き出しがあり、中には解読不明な文字で書かれた資料のようなものが幾枚かあった

 それらを束ね、調査用として持ち帰るためバッグに詰めていたところ、リンナが壁にあるスイッチに気づいた


「これ、何かな?」

「押してみよう、ポチッとな」


「ばか!何勝手に押して…」


 すると、地面が少し揺れ椅子がせりあがってくる


「な、なんだ、ただ椅子を出すためのスイッチか」


「勝手に押すなよ!罠だったらどうすんだ!」


 ハイリーに叱られブスッとするリンナ

 椅子に座った

 そのとたん椅子がカチリと音を立て、高速で部屋から飛び出し

 そしていずこかへと走り去ってしまった


「リンナ!!」


 慌てて追うが全く追いつけない


「ひゃぁああああ!!助けてえぇぇぇぇ…」


 悲鳴が遠ざかっていく

 あっという間に姿は見えなくなった

 

「何やってんだよあいつは…」


 あきれるハイリー


「とにかく追わないとな」


 冷静にジャノが言うとリンナが向かった方向へと走り出した

 長い一本道の廊下をリンナを呼びながら探す

 しかしどこへ行ってしまったのか、廊下にある小部屋にいる様子はない

 

 しばらく探していると調査隊の冒険者に出会った

 彼らに話を聞いてみると、悲鳴をあげながらとんでもないスピードで走り去る何かを見たそうだ

 一瞬すぎて魔物かと思ったらしい

 それは廊下の突き当りの壁に吸い込まれるように消えたそうだ


「まったく、どこ行ったんだよ」


 ぶつくさ文句は言っているものの、その顔には不安の色がありありと見て取れた


「早く見つけてあげよう」

「きっと一人で不安だろうから」


「あ、あぁ」


 三人は突き当りまで来ると壁を調べ始めた

 かべには特に怪しいところはない

 リンナは小さいため下におろされその様子を見ていた

 すると、二人が急に消えた


「え?あれ?ジャノ、ハイリー?」


 壁をぺたぺた触ってみるが何も起こらない

 それから一時間ほど調べてみたが彼らが帰ってくる様子もなく、自分自身がどこかへ移動させられることもなかった

 仕方ないので一旦戻り、別のルートを探すことにしたのだが…


わからない、ここはどこなの?


 見事に迷子になったというわけだ

 もともとコロポックルであるアズはここまで広い遺跡を探索するのに適していない

 彼女にとって広すぎる遺跡を他の調査隊に出会うこともなく一人で何時間も彷徨い、やがて不安に押しつぶされた

 その場にへたり込み、声をあげて泣く


「うあぁあああん、ジャノ~、リンナ~、ハイリー~」


 泣いていると、後ろから少年のような声がした


「どうしたの?」


 振り向き見上げると、見たことのない衣装を着た角の生えた少年がいる

 藁にもすがるような思いで彼に事の顛末を話した


「なるほど、それなら僕に心当たりがあるよ」


 彼は名前をリロロスと言い、この辺りをフラフラ歩いていると泣いている女の子の声が聞こえたので様子を見に来たのだそうだ

 ひとまず彼の胸元のポケットに入れてもらい、心当たりのあると言う方向へと案内してもらった

 それは今歩いていた方向と逆で、しばらく道なりに進むと、リロロスは一見すると壁の装飾にしか見えない扉?の前に来た

 そこに手をかざすとまるで彼を主であるかのように扉が開き、彼を招き入れた

 中に入るとすぐに扉は閉じる

 その部屋にはモニターがあり、まるで個人の部屋のようだった

 モニターなど見たことのないアズは不思議そうに首をかしげている

 リロロスは椅子に腰かけ、モニターのスイッチを入れる

 ギューンという起動音と共に光がモニター前に現れ、文字の羅列と何らかのスイッチが配列された

 

「これで探せるはずだよ」


 そういうと文字の羅列を指で叩き始めた

 モニターに映像が映り始める

 それは、様々な区画の管理画面のようで、調査隊や冒険者、外の様子、食堂のような広間などこの遺跡に関する様子が映し出されていた

 その中に、暗がりに閉じ込められたリンナたちの様子が一瞬映った


「いた!」


 アズが声をあげるとリロロスが画面を戻す

 リンナたちは元気そうにその部屋の壁を叩いている

 どうやら出れないようだ

 よく見ると他にも何人か調査隊と思われる人の姿もある

 

「ここは侵入者を排除するための部屋だね」

「今は機能してないけど昔はここから転送でどこかに飛ばしてたんだ」


 リロロスが再び文字列を叩くと、部屋の扉が開き、リンナたちが外に出るのが見えた


「これで大丈夫」

「調査するのはいいけどあまり変な者には触らないようにね」

「また閉じ込められちゃうから」


 笑顔でそういうリロロス

 彼にお礼を言い、頭を下げる

 そして頭をあげると、彼は消えていた


一体誰だったんだろう?なんでこの遺跡のあんな機能を知ってるんだろう?


 疑問はわいたがひとまずリンナたちと合流することにした

 リロロスが道を教えてくれていたのでしばらくするとこちらに向かって歩いてくるリンナたちの姿が見え、泣きながら足元に抱き着いた

 すぐにジャノが拾い上げ、肩に乗せてくれる

 

「よかったアズ、無事だったんだ」


「無事だったんだじゃないよばか!」

「わっち、滅茶苦茶心配したんだからね!」


 ぷんすか怒るアズをほほえましく見る三人

 それから四人でまた調査を再開したが、宝や資料はかなり見つけたものの竜玉らしきものは一切見つからない

 もうあきらめようかと思った時、アズは自分のバッグパックが少し重くなっているのに気が付いた

 小さいバッグパックのため自分の水筒や道具以外は入れていない

 不思議に思いながら中を開けると、手紙と共に七色に輝く球が出てきた

 重さはアズが片手で持てるほど軽いのだが、かなりの硬度を誇っているようだ

 手紙にはこう書かれていた


“君たちと出会えたことに敬意を表しこれを送る

          

                 リロロス”


 それはリロロスからだった

 いつの間に入れたのかは分からない

 その球には何か力が宿っているのを感じる

 

 調査も終わり、リュウグウに戻ると、遺跡に詳しいマシニアで知り合ったクラベル女史という竜人に連絡を取ってみた

 どうや人が多すぎてk気づかなかっただけで、調査隊に参加していたらしくリュウグウに滞在していることが分かった

 すぐに待ち合わせ、その球を見せると驚くべきことが分かった

 それは竜玉より上位の英知、龍玉だった

 竜玉は結構な数が世界中で見つかっいるが、そのどれもがだいたい壊れており使い物にならない

 しかし上位の龍玉はまだ二個しか見つかっていない

 一つはリュウグウのオトヒメが持ち、もう一つは仙人のいる桃源郷にあるのだとか

 伝説の通り、英知を授けてくれるそうだが、それぞれがその機能を秘匿しているため効果のほどがわからない

 

「つまりこれが、世界で三個目の龍玉ってこと?」


「えぇ、そうなりますね」


 目をらんらんと輝かせるクラベル

 知的欲求を満たしたいという表情を隠しもしない

 全財産を出すから売ってくれないかと言われたが断った

 そもそも調査費用で全財産が一か月暮らせるかどうかという彼女だったので残念そうにあきらめた

 しかし何か機能がわかったら真っ先に教えると言う約束を交わし、それだけで満足してもらえたようだった


 かくしてアズたちは目的のものよりはるかに上位の龍玉をてにいれた

 しかしこのことは周囲に隠しておいた方がいいとクラベルに教えられた

 玉を狙ってくる輩を避けるためだ

 

 龍玉をくれたリロロスという少年…

 彼は一体何だったのだろう?

 疑問に答えてくれる者はいなかったが、もしかしたら彼はムー大陸の関係者だったのかもしれない

 四人はそれで納得することにした

 


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