白鬼の姫武者修行中4
リョドウヒンの力は剣に意識をこめて自在に操る力
剣はその意識によって自在に動く
瞑想しながら戦うので本体を叩かれれば弱いと思われがちだが、剣にこめられた意識は一部であり、本体にもきちんと意識はある
要するに剣とリョドウヒン、二つの意志で戦うのだ
瞑想はあくまで集中力を高め、剣のみで戦うときだけ
普段は自らで剣を自在に飛ばしながら戦う
ハクラはその剣に翻弄されていた
速く鋭く重い一撃一撃は受けるだけでも体力を奪っていく
しかし、ハクラも負けてはいなかった
戦闘開始から全力を出すために散雪を二振りの大剣と小太刀に変えて攻撃の手数を増やす
激しいぶつかり合い、リョドウヒンの剣はだんだんと押されてきていた
「雪花鬼流閃!」
ハクラの放った剣技は襲い来る剣を叩き折った
「なかなかいい動きでしたよ」
「それにしても、私の剣が折れるほどとは、だんだんと仙力の扱いがわかって来たようですね」
褒められて顔を赤らめる
リョドウヒンに言われるとなぜか鼓動が速くなり、体が熱くなった
「では次は私も本気を出すとしましょう」
折れた剣を拾い上げるとヒュッと振った
すると折れたはずの刀身が傷一つなく元に戻っている
幅広の大剣、“孤軍奮闘”は自己修復する特殊な刀で
ハクラの“散雪”同様に持ち主の意志を反映した能力を有している
“散雪”の場合は改変と言ってどんな形状の刀にも変質できる
“孤軍奮闘”は自己修復と意識の投影
この二振りは世界的に見ても特殊で、宝剣としても価値が高い
しかし持ち主以外には決して扱うことができず、散雪は姉クラハをもってしても扱うことはできなかった
リョドウヒンが迫ってくる
先ほどとは打って変わって優しさなど見受けられない
本気でハクラを潰しにかかるために歩みを進めた
剣を腰から降り、流れるようにハクラを薙ぎ払った
やはりというべきか、剣のみが襲っていた時とは比べ物にならないほど重い
後ろに飛びながら威力を弱めようとするが、少し遅れた
衝撃が骨にまで響き、刀を落としそうになるのをぐっとこらえる
「仙力、膂力覚醒」
リョドウヒンが仙力を解放した
動きが格段に速くなり、力も増す
速く、重い一撃一撃、それでもハクラはその力に追いつき始めていた
赤い目がさらに赤く輝く
中から何かがわきあがってくるのを感じた
タガが外れ、仙力が内側からあふれてくる
リョドウヒンの力に惹かれるかのようにハクラの仙力が引き出されたのだ
「おお、これこそまさしく、あなたの父親、桃仙と呼ばれた男の力」
「素晴らしいですよ!」
勝負は一瞬だった
パキンという音と共にリョドウヒンの大剣“孤軍奮闘”がツカだけを残して粉々に砕けた
と同時にリョドウヒンの体に無数の傷が刻まれる
ハクラのスピードが神速を越えた瞬間だった
その速さはクラハを大きく上回る
リョドウヒンは満足した笑顔で倒れた
倒れた彼を介抱していると、数分で目を覚ました
ハクラとしてはもう少しこのままでいたかったが仕方ない
「仙力はどうやらものにできたみたいですね」
「あとはいつでもその力を引き出せるように練習しましょう」
起き上がりざまにそういうと、ハクラの頭をポンポンと手で覆った
それによりハクラは真っ赤になり、プシューととろけた
彼に触れると幸福感が体中を駆け巡る
それから次の八仙の元へ行くよう言われた
リョドウヒンとの別れは名残惜しかったが、またいつでも来ていいと言われたので修行が終わった暁にはこの思いを伝える決意をした
次の八仙はランサイカという女仙
舞踊武闘で踊りながら戦う
彼女は夏の間は厚着をし、それでも汗一つ書かず
冬の間は裸で過ごし、それでも吐く息は白くならない
よくでたらめな歌を歌うがそこには仙道の神髄が込められているらしい(誰も解読できていない)




