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13 迫りくる闇の猛威3

 黒い竜から飛び降りた二人はシェイナたちを見ると少し驚いた表情をしていた

 恐らくここで出会うつもりはなかったのだろう

 しかし、任務を続行するためか、メルリは竜に指示を出す

 キーユイの方は地面に手を付けると大量の蜘蛛を呼び出した

 その蜘蛛はどれも黒く毒々しい

 キーユイはシェイナに指を向けた


「あなたたちを殺せば褒めてもらえるの」

「あたしたち、狂乱の中でも抜きんでて強いわよぉ」


 見た目は男の上半身に蜘蛛の下半身の生えたスキュラという魔人種

 ただ、恰好が異様だった

 胸にビキニをつけているのだ

 それに、髪を伸ばし、顔にもうっすら化粧をしているようだ

 まるでオネェである


 方やメルリはドリル状の髪型にドレス、黒く鈍く光る竜のような翼に鋭くとがった尻尾

 瞳はまるで宝石のように金色に輝いている

 どこかの姫のように気品にあふれたたたずまいだった


「キーユイ、わたくしが国落としをしてまいりますからあなたはこの方たちのお相手をお願いします」


「りょうか~い」


 ぶりっこのようにメルリに敬礼する

 それを見てメルリは竜の飛んでいった都市の方へと羽を広げて飛び去った


「それじゃぁ、殺しあいましょうか」


 真剣な表情になったキーユイは腰に下げていた二刀の鎌を取り出す

 蜘蛛の足でカシャカシャと動きながら高速で迫ってくる

 速い、かなりの手練れであることがその動きでわかった

 しかし、ミューにあっさりと鎌による攻撃を止められた

 初撃を受け止められたことにイラついたのか、猛撃を開始する

 そのことごとくをミューは防いで見せた


「そんなぁ、あたしの攻撃、全部弾かれちゃってるぅん」


 そんなことを言いながらも口角をあげて不敵に笑った

 気が付くと、ミューの体には先ほど発生した黒い蜘蛛がまとわりついている

 蜘蛛たちは糸を吹き出しミューの動きを鈍らせた


「糸?う、動けないよぉ」


 糸は頑丈で、ミューの筋力では到底切れそうにない

 鎌が目前に迫る

 その鎌をシェイナが結界術で弾くと、イアがミューに絡まる糸を切り裂いた


「ありがとう!」


 自由になったミューが下がる


「生意気!」


 憤るキーユイの複数ある目をリモットの矢が貫いた


「あぐぅ!」

「目が!あたしの目が!」


 目の一つから血を流し、もだえる

 その体勢の崩れたところをイア、詩季、シェイナの三人で切り刻んだ

 もはや狂乱すらほんの少し手応えのある相手くらいにしかならない

 あっという間にキーユイは細切れになり消滅した

 かけらも残すことなくだ


 発生した蜘蛛に噛まれていたらしいミューは毒が回ったせいか、少し苦しそうだが、ハノラの治療ですっかり元気を取り戻す

 蜘蛛の処理をした後すぐにメルリを追いかけた

 ものの数分でキーユイを倒したため都市に大した被害の出ぬ間に追いつくことができ、メルリとメルリの竜に対峙した


「キーユイを倒すなんて、あなたたち、相当強いんですのね」

「でも、わたくしの竜は竜種の中でも最も力のある黒竜」

「それに、セプテリル様から力もいただいている特別製ですわ」

「さぁ、お行きなさい、私の可愛いファフニール」


 竜は咆哮をあげるとこちらに向かって飛んできた

 結界を張ると竜は見えない壁に激突し、怒り狂いながらその結界をかみ砕いた


「な!」

「僕の結界を砕いた!?」


 相当堅固なはずの結界はたった一撃で砕け散った

 しかし予備としてもう一枚張っていた結界が竜の侵攻を足止めする

 その結界も長くはもちそうにない、その間に準備を整える


 まずはリモットが目を狙って矢を放った

 その矢は寸分たがわず竜の目を貫く


「グギャァアアア!!」


 悲鳴を上げ、さらに暴れまわる


「ファフニール!」


 メルリがファフニールの目に手をかざすとその目はすっかり元通りに治っていた


「これは、厄介だね」


 詩季が銃を構えて滅多撃つ

 しかし弾は固いうろこにはじかれた

 銃弾は効かないと判断すると、銃を変形させて槍に変えた

 槍にESPを流し込むと槍から炎を雷がほとばしる

 素早く竜の腹下に潜り込むとその槍で刺し貫いた

 腹はうろこが薄く、深々と槍が食い込む

 竜は悲鳴を上げるが、その開いた口にリモットの矢が飛び込む

 炎を帯びた矢は竜の喉を焼いた

 痛みで絶叫する竜


 イアは翼を変質させて席が透けて見えるほどの薄いブレードを作り出した

 そのブレードで竜のうろこをそぎ落としにかかる

 鱗の隙間を縫うようにブレードが入り込み、みるみる削がれていった


「これで攻撃が通るはずです!」


 鱗のなくなった皮膚にミューとシェイナの剣が食い込み、ハノラの光槍が突き刺さった

 それによりとうとうファフニールは断末魔の悲鳴をあげながら絶命した


「よくも、よくも私のファフニールを!」


 気品のあった顔をゆがめてメルリが叫ぶ

 体が変質し始めた

 手には装甲のように竜のようなうろこが生え、頭の角が二倍ほどに伸びる

 羽はさらに大きくなり、口は裂け、牙が覗いている

 まるで小さな竜のようだった(かろうじて人型は保っている)


 ぎょろりと目をシェイナたちに向けると、先に倒した竜とは比べ物にならないほどの膂力で地面をけり、シェイナに突撃した

 結界で受け止めるがあっさり壊されその突撃がシェイナに直撃した

 ゴキゴキと肋骨が嫌な音を立て砕けるのがわかる

 倒れ、地面に突っ伏し血を吐き出す

 肺も破裂したのか息ができない

 今度は回復させようと駆け寄るハノラが狙われた


「させません!」


 イアがそのまま体で受け止めた

 シェイナと同じようにグシャッと腹部で音がしたが、尋常ではない回復力でその傷をふさぎつつ何とかメルリの動きを止めた


「今です!」


 そのすきにハノラの回復魔法によってシェイナの傷は癒えた


 メルリはイアから離れる


「厄介ねあなた」


 イアにはもはや傷はない


 メルリはさらに体を骨格ごと作り変え、四足歩行のように四つん這いになった

 不気味さを増したメルリに固唾を飲む

 メルリ、彼女は狂乱最強の力を持つ戦士だった

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