白鬼の姫武者修行中3
カンショウりはハクラの後ろ姿を見つめる
かつてこの国にいた仙人の男を思い出す
「あれの娘たちか、クラハちゃんは確かに天才だった」
「しかし、ハクラちゃんの潜在能力は、あの娘を越えている」
「仙力を使いこなせれば歴代最強の仙になれるかもしれんね」
にこやかにハクラを見送る
ハクラはやがてリョドウヒンのいる小さな家のある広場に着いた
そこでは一人の青年が広場の真ん中に座し、瞑想をしているようだった
後ろに刺してある身の丈ほどもある大剣にもたれかかっている
その大剣が不意に浮かび上がった
フヨフヨと宙を舞い、まるで踊るかのように華麗に舞う大剣は意志を持っているようにも見える
大剣はやがて、こちらに気づいたようで、クルクルと回転しながら向かってきた
斬られる
慌てて刀を構えるとそれを受け流すため刀身で受けた
刀身はギャリギャリと音を立てて火花を散らす
重い
いまだリョドウヒンらしき青年は動かない
相変わらず瞑想をしているようだった
それなのに剣は達人が操るように鋭い一撃を見舞ってくる
先に会得した覚えたての神速剣技でかろうじて防いでいるものの、スタミナはどんどん奪われていく
やがて横なぎに重い一撃を受け、飛ばされ、木に叩きつけられた
「ぐがっ!」
背中と頭を強く打ち付け、息ができなくなり、意識が飛んだ
気が付くと薄い布団の上に寝かされていた
額には濡れタオルが張られ、ひんやりとして気持ちいい
「ここは?」
そんな疑問に若い男の声が答えた
「ここは私の家ですよ」
優し気な印象に見惚れそうなほどのアマイマスク
さきほど瞑想していた人物だった
彼は桃の果実の酢漬けが入ったおかゆを持ってきてくれた
「これを食べなさい、元気が出ますから」
思わず頬を染めてポーっと見てしまう
「どうしました?」
「い、いえ、何でもないです」
とっさにいつもの口調から変えた
すると
「いつものように話してくれて構いませんよ」
と、まるで見透かされたようにそう言われた
彼をジッと見てしまう
今までこんなことはなかった
それほどまでにリョドウヒンは魅力的だった
「食べ終わったらお風呂に入りなさい」
「この家の裏手に一応浸かれるお湯を張ったお風呂があります」
そう言われてハクラはカーッと赤くなった
真っ白な肌に赤みが射すせいか、真っ赤になったように見える
恥ずかしがるのも無理はない
この国の気温は常に25度前後で、激しく動けば当然汗もかく
ハクラはここについてからは風呂はおろか水浴びもしていない
蒸れてきつい汗のにおいがしていた
「あ、ありがとうございます」
それだけ言うとおかゆをかきこみ飲み下し、風呂へと向かった
そこにはホカホカと湯気を立てて薬を混ぜ込んだ薬湯があった
着ていた戦闘用の着物を脱ぎ、雪のように白く美しい肌があらわになる
髪を結っていた髪留めも外し、そこに置いたあったヘチマのスポンジをとると体を洗い始めた
ヘチマの横には桃の香りのする石鹸が置いてあり、それで泡立てる
肌はしっとりと艶を帯びてくる
とてもいい香りで、気持ちも落ち着いてきた
それから体を洗い流すと薬湯にゆっくり浸かった
疲れが一気に抜けていくようだった
風呂から上がると真新しい着物を用意してくれていた
「汚れた服はこっちに入れておいて」
「後で洗っておくから」
「い、いえ、洗濯は自分でやります」
自分の汚れた服を彼に見られるのが恥ずかしい
「そう?それじゃぁ僕は先に寝るよ」
「明日また修行の続きをやろう」
これまでの仙人と違い、彼は悠然とし、どこか気品があり、一見すると女性と間違われそうなはかなげな雰囲気もあった
それに紳士的で、ハクラは布団で寝かせ、自分は外に藁の布団を作って寝ていた
そんな彼にハクラはどんどん惹かれていった
そして次の日、リョドウヒンとの修行が再開された
サービスシーン?




