女神行動中
トレーシャとシエティは違和感に気づいた
というより恐怖していた
自分たちが一瞬とは言え消滅していたことに、そして何事もなかったかのように復活させられたことに
何があったのかは少しは予想ができる
混沌に消されたのだ
それだけは分かるが、復活したのはなぜ?そんな疑問が頭をよぎる中、一番目のアンリから連絡が入った
何者かに、自分たちでは及びもしないほどの力を持った何かが混沌から救ってくれたらしい
「一体何者なのでしょう?」
トレーシャが口元に指をあてがいながら首をかしげている
シエティはとにかく今起こったことに恐怖し、震えていた
そのシエティをトレーシャがひしと抱きしめ落ち着かせる
姉らしく、妹を包み込む
「トレーシャねえは、怖くないの?」
シエティを抱きしめていた腕が離れ、まっすぐ目を見つめる
「いいえ、怖い、怖いわ」
「でも、わたくしたちは世界を監視する者、世界に住む者たちのために動かなくては」
撫でられると不思議と震えは止まった
トレーシャは優しく微笑んでいる
それから二人はこの世界に降り立っているであろう闇を探すためにこの世界をめぐり始めた
混沌が去ったため当面の脅威である闇を排除するためだ
気配は探知できるためすでに大体の居場所は把握できていたが、恐らく向こうもこちらに気づいている
そのため先手を取られる可能性は高い
向こうは動かずただこちら来るのを待てばいいだけ
進んで罠に飛び込まなければならない状況
それでも女神二人は闇の居城まで向かった
一方その頃零番目を探しに行った女神たちは零番目のノルの気配をたどり、ようやくその位置を掴んだ
そこの気配は何か懐かしい感じのするものに包まれている
そのためノルの気配は捕らえるのが難しかった
「姉貴、この辺りだろ?」
「あぁそうだ」
「ファイ、ロクシア、この結界を破壊する」
「私に合わせてくれ」
「おう」
「はい」
フィーアは銃剣を構え、ファイは拳に力を溜め、ロクシアはすらりと太刀を抜く
三人は姉妹ならではの非常に息の合ったトリオネーションで結界を破壊した
そこには大扉がそびえ、三人を迎えるかのように開いた
「ここだ」
「今ならわかる」
「姉上の気配がはっきりと」
フィーアたちは互いに顔を見合わせると扉内へと踏み込んだ
踏み込んだ中で見たものは、封印され、身動きのとらなくなった女神たちの長女、ノルの姿だった
「姉様!」
ロクシアが駆けよろうとする
「待てロクシア!」
フィーアの制止も聞かず、ノルの元へ
「来たね、ついに」
「ロクシア、避けて!」
ノルの方から声がし、ロクシアは慌てて転がりその場を離れた
直後に衝撃が襲う
そこに立つ何者かの影
三人はその姿に驚愕した
自分たちのよく知るその者
いや、その方
彼は悠然と彼女たちの前に立ち、不敵に笑う
「そんな、馬鹿な」
「あなたは…」
「お父様…」




