白鬼の姫武者修行中2
山は霧たちまるで槍のようで、そこをハクラたち一行は命綱もなしに崖を登っていた
岩肌には苔も生え、集中力を途切れさせれば一気に落ち命はない
いかにして滑らない手掛かり足掛かりを選ぶかの見極めが重要だった
やがて登り切り、開けた場所へ出た
「やっと登り切りましたね」
息を切らしながらキリサメが言う
回りを見回すが何もおらず、気配すらなかった
「何もいませんね」
「うむ、じゃが警戒は怠るなよ」
何もいない、四人それぞれが警戒し、四方を見渡すが、隠れる場所などどこにもない
「一体どこに…」
その時ハクラの後ろで声がした
「ふひ~、リテッカイの修行を越えてきたか」
どこから現れたのか、太った男がいた
青龍刀に手をかけている
「危ない!」
リンドウがハクラの前に立ち、刀でカンショウリの攻撃を受けた
激しい金属音と共にリンドウが大きく飛ばされ、あわや崖下へと転落するところだった
それをアカネが受け止め何とか落下はしなかった
「ふひ~、殺気を出していたとはいえこれを防ぐか」
今まで温和に笑っていた顔が変わり、細い目が開き三白眼が覗く
「どれ、修行をつけてやろう」
ふしゅーと息を吐き、青龍刀を構えた
目の前から消えた
「消えっ」
後ろに現れる
「姫様!」
ハクラは慌てて刀を抜き、受け止めた
「ホホ、リテッカイの修行が生きておるな」
「速さをあげるぞ」
さらに速く、重く、鋭くなるカンショウリの青龍刀による切りつけ、防ぐだけで精いっぱいだ
「姫様!こちらへ」
キリサメがハクラを呼ぶと、ハクラは飛びのきキリサメと刀の息を合わせる
二人の斬撃がカンショウリに迫るが、すべてを片腕で持った青龍刀によって受けきられる
「片腕一つで!?」
そこにリンドウとアカネの攻撃も加わり、激しい斬撃の嵐がカンショウリを襲う
しかしそれでも片手で受け止められ、心なしかあくびすらしている
「遅い遅い」
あの体のどこにここまでのスピードを出す膂力があるのか分からない
「よし、ではこちらの番ぞ」
「しっかり目を見開いて見ておけよ」
青龍刀を流れるように扱い、四人の武器をはじいて落とさせた
「あれま~、武器がなくなったね~」
「どうするかね?」
青龍刀をハクラの喉元に突きつける
「死ぬか?」
クッと切っ先が少し刺さり、喉元から流れる真っ赤な血がハクラの白い肌を染めた
「ぐっ」
しかしハクラはあきらめていない
飛ばされた武器から自分の髪の毛一本が伸びている
とっさに括り付けていたのだ
「せりゃぁ!」
髪の毛を手繰り寄せ、手に戻ってくる散雪、すぐに大小二振りの刀に変質させ、カンショウリの青龍刀をはじいた
「ふぉ、いい動きだよ」
ニコリと笑う、そこから再び神速のような剣技が炸裂した
だんだんとハクラの目がその動きを追えるようになってくる(キリサメ達は未だ追えてはいないが…)
ハクラの速度が、カンショウリに追いついてくる
「ホホホホ、いいねいいね」
「もっと速く、もっと鋭くだよ」
神速、ハクラはその域にまで到達しつつあった
ほか三人には二人の動きが全くみえていない
ハクラが、神速の壁を、破った
「あららら、おっとっと」
カンショウリが押され始め、体に細かな切り傷ができ始めた
それでもハクラの勢いは止まらず、速度を増し続ける
「それよそれ、いい動きいい動き」
にこにこしている
この状況に置いて楽しんでいるようだった
しかし、カンショウリが再び目を見開き、青龍刀をふるった
ハクラは刀を飛ばされる
「くっ!もう少しのところで!」
「いいよぉ、合格合格」
「え?」
「合格だよ」
「ただし、白い娘だけね」
当然だろう、キリサメ達は全くついていけていないのだから
「君は先に進むといい」
「後の三人は、ジョカのところに行きなさい」
カンショウリの許可はハクラのみに出た
あとの三人はジョカの下で特訓を受けよとのこと
「どれ、ハクラちゃんよ」
「次はな、リョドウヒンという男だよ」
リョドウヒン
天遁剣法という剣を飛ばし操り魔を払う剣術を使い、雷雨を操る
背中には剣を背負い、青年の姿をした道士だ
カンショウリの弟子で、若くして仙人となった天才である
にこやかに笑うカンショウリに送り出され、ハクラはリョドウヒンの元へ、三人はジョカの元へとそれぞれ向かった
仙人は面白いですね