12 混沌を撃つ6
オベロンの前に立つ七人
深々と頭を下げた彼は妖精たちを代表して感謝していた
もしシェイナたちが闇の侵攻を食い止められなかったら妖精の国は滅んでいただろう
「本当にありがとうございます」
「僕の大切な妖精たちを守ってくれて」
「まぁ、一度経験したからね」
「経験?」
「いや、何でもない、こっちの話」
シェイナたちはその後、妖精たちに見送られながら国を後にした
ひとまず魔王国に戻るため、マジックアイテムを起動させる
その時いきなり通信が入った
「シェイナ!緊急です!」
「ど、どうしたの?」
「見つかりました、恐らくあれが混沌」
「現在アドライトさんが交戦中です!」
「長くはもちそうにありません!」
「私も向かいますがその前に合流しましょう」
「ひとまず魔王国に戻ってください!」
「ちょうど戻ろうとしてたんだ。すぐ行くよ」
そのまま扉をくぐり、魔王国へ着いた
転送地点の前ではすでに武装した魔王サクラとその配下たち
「お帰りなさい、でも話をしている暇はありません」
「すぐアドライトさんの元へ向かいます」
そういうとサクラはマジックアイテムを取り出した
「これは古代魔法転移が込められた宝珠です」
「使える回数には限りがありますが致し方ありません」
「これで全員を一気に転移させます」
宝珠を起動させる
光が放たれ全員がその光に包み込まれ
目を開くと見知らぬ場所にいた
「ここは元ガルードラ、ミューさんの故郷ですね」
「この辺りには私来たことないよ」
ミューが答えた
魔王があたりを見渡すと、前方に二人の人影があった
その一方が何かを振り上げ、降ろす
それにより片方の影は倒れた
すぐにその場へ走り込むと
倒れていたのはアドライトだった
魔王がアドライトを抱きかかえる
「アドライトさん!無事ですか?!」
気を失い、肩口から腹部にかけて袈裟斬りにされ、おびただしい出血
それでもかろうじて生きているようだった
すぐに治療を施す
その間アドライトを斬った相手・・・少女はジーっと興味深そうに見ていた
その少女が急に話しかける
「ねーねー、なんで直してるの?」
「だめだよ直しちゃ、せっかく壊れたのに」
少女がスッと持っていた錆びだらけの刀を振る
「危ない!」
シェイナが結界を張り、食い止める
が、あまりの力に結界は破られ弾かれた
すかさす二撃目
素早く結界を張り直し、さらにイアが体で受け止める
結界はまたも破壊され、イアの体を切り裂いた
真っ二つになるイア
「イアさん!」
「うぐっ・・・」
「私は、大丈夫です」
すぐに体が再生し始める
命天使となってからその再生力はさらに増していた
ものの数秒で再生が完了し、立ち上がる
「あれれれ、おねえさんなんで死なないの?」
「まぁいいや、死ぬまで斬ってあげるね」
刀を振り始める
その手元が全く見えない
風を切る音すらしないほどの光速でふる
「任せて」
「止まれ!」
桜色の髪になった詩季が時間を停止する
停止できる時間は約20秒
その間にありったけの弾を撃ちこむ
そこでおかしなことに気づいた
少女の刀の動きが止まっていない
そのまま近づいてくる
放った弾丸は全て刀で切り刻まれ地面に落ちた
「嘘、止まってない」
「なんなのこいつ」
少女はクスクス笑っている
「フンフフフ~ン♪」
鼻歌を歌い始める
「うわ、不気味」
「解除」
停止を解除する
が、いつの間にか少女が視界から消えていた
「え?」
急にアドライトの胸部から刀が突き出ていた
「死に損ねちゃったもんね」
「きっちり壊してあげる」
そのまま切り上げ、アドライトは絶命した
「・・・アドライト・・・・・さん?」
目の前で起きた惨劇に反応できないでいる魔王に刀を振り下ろす少女
「次はあなたね」
鼻歌を歌いながら楽しそうに魔王を切りつけた
「まずい!」
シェイナたちがかばうように少女の前に出る
「あ~ん、もう、なんでとめるの~?」
「なんなんだよ、お前は」
「なんでこんな・・・」
倒れた魔王とアドライトを見る
イアが魔王の治療をし、アドライトの蘇生を開始した
イアは奪った生命力を分け与え、死してすぐの肉体を蘇生することができる
今ならまだアドライトを蘇生できた
「なんでって~」
「みんなみんなこわれて~、死んじゃって~」
「それって、とってもいいことだよ?」
「全部全部壊して消して、最後には何も残んなくなっちゃうの」
「それが私の役目」
「ロナの仕事なの」
少女はロナと名乗った
その間に何とか蘇生を完了し、魔王はアドライトを連れて簡易式転移で飛んだ
「あ~あ、逃げちゃった」
「まぁいいや、どうせぜ~んぶなくなるんだし」
「・・・たったひとりで、そんなことできると思ってるの?」
「思うよ~、だってロナは、本気、出してないもん」
雰囲気が変わった
刀を捨てる
「じゃぁみんな」
「消しちゃうね」
パンッと手を叩いた
それで、すべてが消えた
シェイナたちどころか、世界も
これで
消えた
なにも
かもが
終わりは唐突
女神達は、闇は、その様子を見て絶望した
予想外すぎる
成すすべなくすべてを消された
自分たちが監視していた者
世界に降り立っていた仲間
そのすべてが・・・消えた
終わり?




