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妖獣たちは復讐に燃える3

 ガルードラ領から出て巨人族の国アトロマ領に入るアナフィア

ふと、立ち止まる


「私は、ここで何を?」

「そうだ、陛下を、陛下をお守りせねば」


自らのありようを確認する


「なんだ、これは」

「なぜこんなにボロボロに?」


...ナフィ..ア


頭の中から声が響く


「ぐ、頭が、痛い」


アナフィ...


「誰だ、私の頭の中でしゃべっているのは」


アナフィア、止まれ、恨みに身を任せるな


「恨み?」

「私、は...」

「ガッ、アグァ!!」

「あっ、あぁぁぁ」


もう頭で声はしない

彼女の精神を恨みそのものに支配される


「ンフフフ、フラァ、フラァ」


またふらふらと歩みを進める

目をぎょろぎょろと動かし、どこを見ているのかもわからないが

その鼻の良さを活かし、着実に自らを殺したアスティレットを追う


「うぅうう、あっあっ」


よだれをたらし、乱れた髪をたらし、進み続ける


村に着いた

ここには慎重3メートル前後、巨人族としては比較的小さいゴリアテ族が暮らす

そこに、不気味な女がフラフラと入って来たのだ

村は騒々しくなった

だが、その女は何をするでもなくただフラフラと入ってきた方向とは反対の出入り口に向かっている


「あれぇ?ここには、人がぁ、いっぱいですねぇ」

「フフフ、悪い子はぁ、いないようですねぇ」


誰もが恐怖で顔を引きつらせている

そんな彼女に一人の老齢の男が近づく


「お嬢さん、この村に何用ですかな?」


グルンと首を傾けてその男を見つめる


「用~?」

「ここにぃ~、用なんてぇ~、ないですよぉ~」


ぎょろぎょろと動き続ける瞳には男の姿など映ってはいない


「そ、そうですか、村の者が恐怖しております」

「できれば、早々に立ち去っていただきたいのですが」


ぎょろぎょろ動いていた眼が男を見据えて止まる


「ひぃ!」


自分の身長の半分以下のアナフィアに恐怖する巨人たち

アナフィアはにたりと口が裂けんばかりに笑顔を浮かべる


「だ~いじょぉ~ぶで~すよぉ~」

「ここの~ひとたちにぃ、恨みなんてぇ~ありませんからぁ~」

「すぐ出ていくさ」

「騒がせてすまない」


口調が変わったアナフィアはまともに見えた

いや、むしろ凛々しくもある

そこには聖騎士のような気高さがある


アナフィアは村から出ていく

ゆっくりと遠のいていく背中

凛々しさはもうない


「何者だったんだ」

「あれはまともじゃぁない」

老齢の男、村長はつぶやいた


「だが...」

「どこか悲しげでもあったな」


アナフィアの

彼女の目の奥は

泣き叫んでいた

それは彼女の目をまともに見た村長だけがわかることができた


一瞬だけまともに戻ったその目

真っ赤な狂気を抑える青い瞳


目が怖い!

私の人形目が怖い!

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