ちっちゃなイズナの大冒険5
登るごとに吹雪は強くなり、雪は深くなっていく
それにより体力は削られだんだんと登るのが苦しくなっていった
「頑張んなさい、もう少しであたしが建てた小屋があるからそこまでいけば休めるわよ」
クスクの励ましに自らを奮い立たせるナズミ
子供の身でここまでついてこれているだけでも奇跡だ
それほどに親友への思いは強い
ナズミの思いの強さにクスクは感心していた
この子なら、本当にフェニックスに会えるかもしれない
まもなく木で出来た小屋が見えてきた
クスクが自ら運び作り上げた簡素な小屋
彼女はポルターガイストを自由に操ることによって重い木材を動かしこの小屋を建てた
そういった小屋がこの山には点在している
小屋の中にはいつでも食料や燃料が常備されており
迷った登山者の道しるべともなっていた
小屋にたどり着き身に着いた雪を払い落とす
ドサッ
何かが倒れる音がした
クスクが足元を見ると、ナズミが床に臥せって震えている
「ナズミちゃん!?」
ゆっくり起こすと、ナズミの顔は真っ白になていた
「まずい、氷雪病だわ」
「氷雪病?」
「えぇ、この山特有の病」
「かかるとだんだん体が凍り付いてやがて死に至る」
「ナズミちゃんはまだ初期症状だけど」
「進行すれば助からないわ」
「早く暖炉に火を!」
急いでまきをくべ、火をつける
クスクは毛布を大量に持ってきた
やかんに雪を入れ、火にかける
持ってきていたスープも火にかけて温めなおす
「まずは指と足先をあっためて」
「末端から凍り始めるから対処が遅れると切断しなきゃいけなくなっちゃう」
クスクに指示されシャーズロットは沸いたお湯を湯たんぽに入れてナズミの手足を温める
今や手足は紫色に変色してきている
触ってみると驚くほど冷たい
すでに凍り始めている証拠だ
「次は毛布を掛けて体自体をあっためるのよ!」
毛布を掛け、体をこすって摩擦で温める
少しずつだがナズミの顔色も戻り、頬に赤みが差してきた
まだ震えてはいるがとりあえずの危機は脱出
「ふぅ、何とか落ち着いたけど」
「まだまだ油断しないでね」
火に薪をくべ、部屋をさらに暖める
ナズミの震えは収まり、寝息を立て始めた
「ナズミちゃんはここまでかもね」
「この小さい体でよく頑張った方だと思うわ」
「...そうか、仕方ないな」
シャーズロットがナズミの髪をなでる
ナズミは目を覚ましたのか、薄目を開けていた
「私、どうしたん...ですか?」
「お前は氷雪病にかかってたんだよ」
「まだ治ってないから寝てるんだ」
「ごめん...なさい」
「一緒に、行ってもらってる、のに」
「もう大丈夫...です」
起き上がろうとしたナズミを抑えるクスク
「だめよナズミちゃん」
「まだ完全には治ってない」
「安静にしとかないと手足の切断だけじゃすまないわよ」
「でも...」
「でもじゃないの!」
「いいからしっかり寝なさい!」
強い口調で言われ、しぶしぶと毛布の中に戻る
そのまま、また気絶するように眠った
「だいぶ体力を消耗してるわ」
「一人で置いとくのも危ないかもね」
「どうする?引き返す?」
「...あぁ、そうするしかない」
「ナズミには悪いが、明日の朝戻るとしよう」
「いや、です」
「戻るわけにはいかないんです」
「コニアンのために、私は戻るわけには」
「いかないんです!」
再び意識を取り戻したナズミ
そのナズミの姿を見て二人は驚いた
体が輝き始めていたのだ
「ナズミ、お前、どうしたんだ?」
「私は、私は、親友を、助けたい!」
光は強くなりナズミを包み込んだ
「うそ、進化?」
「ナズミちゃんってイズナだったっけ?」
「あ、あぁ、そうだ」
「もしかして、すごいの見れるかも」
「イズナはね、進化すると神の使いになるの」
だんだんと光からナズミの姿が現れる
「その名も白狐」
真っ白な毛並みにすらりと伸びたふさふさで三又の尾
背も伸び、クスクと大体同じくらい
白狐
神の御使い、妖術と幻術に長ける美しい種族
仙術すらも使いこなし、戦闘能力も高い
また、あの世とこの世を行き来できると言われている
ナズミは白狐となり、すっかり元気になった
妖狐大好き
特に白狐は一番好き




