11 妖精王オベロン1
オベロンは美しい男の妖精で、いたずら好きだが恋人たちの仲を取り持つ存在としても知られている
彼は何代目かのオベロンで、はるか昔、まだ魔王すらいなかった時代にはティターニアと夫婦だったものもいる
シェイナはティターニア
オベロンと同じく妖精をすべる女王
およそ数千年ぶりの女王の誕生にオベロンが興味を持ったらしい
数千年前、最後に確認されたのはモルガナ
世界樹と融合したかつての守護者だ
それ以来ティターニアへと至った妖精族はいない
オベロンが興味を持つのも当然だろう
妖精国へと向かうシェイナ一行
新しくマーキナをパーティに加えての旅は新鮮だった
マーキナは生活における様々な機能も備えているため、炊事洗濯はお手の物だった
てきぱきと動き、次々と作られる豪華な料理はまるで旅ではなく屋外レストランのようだった
材料もそのあたりに生えている野草や狩ってきた獲物
香辛料や調味料以外にお金がかかっていないとう節約っぷり
「マーキナはいいお嫁さんになりそうだね」
冗談でそういうとマーキナは顔を赤らめ
「では私はマスターのお嫁さんになります」
といった
目が本気だったので少し怖かったが冗談だと思うことにした
パーフェクトなマーキナの料理に舌鼓
特にコペコという鳥の香草焼きは最高においしかった
この体でお肉が食べれるようになるなんて
嬉しい誤算
シェイナは肉を食べれるようになっていた
進化するたびに一応食べてみたのだが今までは一切受け付けなかった
だが今回は違う
胃が受け付けてくれた
それゆえ転生してから一度も食べれなかった肉を食べれたのだ
その嬉しさ、おいしさから次から次へと食べた
それはもうみんなが引くくらいに
どこに入ったのか、シェイナのほっそりとした体形は全く変わっていなかった
「おいしかったよ、ありがとうマーキナ」
「いえ、マスターに喜んでいただき光栄です」
昼食も終わり、片付けるとまた歩き始めた
現在地はヒュームの国だった元グランドルの僻地
あの事件のせいでグランドルは事実上滅んだ
王だったデュルクは現在聖国セレニティアの王となっていた
聖王女と夫婦となったことで可能になったことだ
グランドルは復興しようにも民がいない
周辺から連れて来ようにも彼らには彼らの生活があるためそれはできない
ガルードラを滅ぼした狂乱達はそれ以来息をひそめている
今のところ何の行動も起こしていないし、足取りもわかっていない
だが、必ず次はあるはず
各国、各種族が警戒にあたり、情報を共有した
グランドルという抑止力がなくなったせいか
街道には魔物があふれ始めている
いまはまだ弱い魔物ばかりだが、いずれ強い魔物も闊歩するようになるだろう
そういった問題も早急に解決しなければならない
各国を拠点とする冒険者たちもその対応に追われている
討伐依頼は劇的に増えていた
シェイナたちも魔物を倒しながら進む
その過程でシェイナの召喚する妖精がパックに進化していることが分かった
人の子供と変わらない大きさにそれぞれ顔立ちは違うが、どのパックも美少女だった
五人のパックは話せるようにもなっており、意思疎通がさらに楽になった
常に連れて歩こうかとも思ったが、魔力消費が激しいので無理だ
パックたちの妖精魔法も相当に強くなっている
最上位魔法くらいは楽に放てるくらいに
最上位をほいほい放てるとなると、彼女たちの実力は冒険者でいうところのAランクほどはあると思われる
街道は妖精国まで続いてはいるのだが、山をいくつも越えなくてはならない
その山が問題だ
CランクからBランクに加え、Aランクの魔物もちらほら出てくる
かなり強くないと超えるのは無理だろう
だがシェイナたちはかなり強い部類にはなっている
シェイナとマーキナに至っては口笛を吹きながら山を越えてしまうだろう
こうしてみるとリモットとハノラは実力的にかなり劣っているかもしれない
ついて行くだけでも必死
それでも努力し、新しい力を身に着け、レベルアップはしている
いずれ追いつくための努力は絶対に惜しまなかった
ちなみにミューはというと、身体能力の高さとスキルでこちらもちゃっかり強い
やはり見ただけでスキルを習得してしまう能力はチートに近い
魔物のスキルだろうが人のスキルだろうが大概のものを使えるようになる
本人はそれをサラッとやってしまうのだから恐ろしい
リモットもハノラもそれなりに実力はある
しかしそれはあくまで通常の冒険者の場合はである
三人はほぼ神話クラスの力を持つ
天と地の差
それでもそこに至れる可能性はある
それがティターニアにもらった加護
仲間の強さに応じた成長を成せるという加護はリモットとハノラをいずれ高みへと引き上げることとなる
オベロンやティターニアはパックといういたずら妖精を率いているという伝承があります