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3 冒険の始まり2

 少女、ミューはこの小屋に一人暮らしだそうだ

以前は木こりと山菜取りの両親とともに暮らしていたそうだが

二人とも突如現れたブラッディベアに殺されてしまったらしい

ミューを守るために

それからはずっと一人

母親に教えてもらった山菜取りのやり方と

父親に教えてもらった魚釣りで何とか今まで細々と暮らしていた

たまに来る父親の木こり仲間たちにも差し入れをもらったりもしていたらしい


なるほど、この子じゃ木を切り出して運ぶのは不可能に近いのに

新しい切り株があったりしたのは木こりたちが来るからなのか


 ミューは木こりたちに住むところを提供してもらったりしていたが

両親と過ごしたこの小屋で暮らしたいと言い、この場所にとどまっていたそうだ

そのため木こりたちもたまに見に来るらしい

今回ゴブリンたちに襲われたのは見回りの木こりがいない時を狙われたのだろう

自分たちより弱いミューを食料にしようと来たが

泣き叫ぶ反応が面白かったために遊んでから食べようとした

そんなところだろう


「私ね、ずっとここで一人で暮らしてて」

「話し相手もいなくて」

「たまに来る木こりのおじさんたちは優しいけど、ずっとはいてくれないし」


寂しそうな横顔


「ごめんね、変なこと話しちゃって」


(ン~?いい話だったよ?)


ミューの作ってくれたサラダをほおばる


「私ね、夢があるの」


(へぇ~、どんなどんな?)


「いつかね、冒険者になって」

「世界中を旅するの」

「そのために剣の練習もしてるんだ」


指をさすミュー

その先には木で作った無骨な短剣があった

その剣を手に持つと

「ちょっと外に出てみて」

と言った


(え?みせてくれるの?)


「うん!」


トテトテと外へ向かうと、小屋の裏手へと回る

そこには傷だらけの切り株がいくつもあった


一体どんな練習したらこんな傷がつくの?


切り株の傷は深々と切れている


「みててね」

「まだ20回に一回くらいしか成功しないんだけど」


ミューは剣を構えた

フーッと息を吐く


「神風!」


突如暴風のような風が吹き、目の前にあった切り株がずたずたに切り裂かれた


あ、う、うう


目を白黒させる

何が起こったのかわからない


「これね、お母さんがよく読んでくれた勇者さんの本にのってる技なんだ」

「他にもね、いろいろあるんだけど」

「私にできたのはこれだけなの」


(あ、う、うん)

(すごいね)


「えへへ~、どう?私、冒険者になれるかな?」


(あ、はい、なれるんじゃないでしょうか)

(いえ、なれると思いますでゲスよ)


「なんか変だよワムちゃん」


あまりのことに言葉がおかしくなっていた

見た感じまだ10歳くらいの少女

その剣才は恐らく(まだ他の剣士を見たことないからわからないが)

相当なものだろう

素人目にもわかる


そうこうしていると

警戒に何かがひっかかった


む、敵?


周囲を見回すと

無精ひげを生やし、斧を持ったが体のいい男が歩いてくるのが見えた


うわ!明らかに明らかな風貌!

敵だ!間違いない!


そのおとこが何かをしゃべりだす


「おお、ここにいたのかミュ...」

「うお!魔物か!」

「ミュー!離れなさい!」


男は斧を振り上げワムに向かってきた


あわわわ!

ミューが危ない!!


ミューをかばうように前に出ると超硬化とアームドを発動させ

臨戦態勢に出る


「待って!」


突如上がるミューの声


男とワムは動きを止めた


「アゾットおじさん、その芋虫さんは私を助けてくれた恩人さんだよ!」


「なに?この魔物が?」


(あの、僕、魔物じゃないんですがね)


「ぬお!なんじゃ!しゃべるのか!」


驚いて持っていた斧を落とす


 ミューとともに小屋へ戻り事の次第を話し終えると

獣人の男、アゾットは深々と頭を下げた


「すまん、勘違いした」

「まさかミューを助けてくれた恩人だったとは」


(いえいえ、僕もこんななりですから)

(もし僕がおじさんと同じ立場だったら同じように攻撃すると思いますよ)


「すまんな」

ばつの悪そうに謝るアゾット

「この子はわしら木こりたちにとって娘のような存在なんだ」

「わしらの友人の娘でもあるしな」


なんでも、ミューの父親は木こりでありながら森の管理もしていたらしい

それも、もとは冒険者だったそうだ

冒険をしていたころにミューの母親と出会い、子供ができたため冒険者をやめた

その後故郷であるここで木こり兼森の管理者として暮らしていた


冒険者だったことはミュー自身も初耳だったようで、驚いていた


それからアゾットはいろいろと話をしてくれた

わかったのはまずここは獣人の国ガルードラだということ

その中でもここいらは辺境の森、開拓予定地だということ


なるほど、それで木こりが多いのか


ミューの父親は元冒険者

母親もそうだったようで

薬師兼治癒師として冒険していたところ、ミューの父親と出会い、恋に落ちたそうだ

引退した後はともにこの地で生活を築き、ミューが生まれた

木こり仲間うちでもそれはそれはミューをかわいがったそうだ


それらを話し終わった後

アゾットは少し口調を重くして話し始めた


「実はな」

「ミューは非常に珍しいハーフなんだわ」


(ハーフ?)

(人間と獣人とか?)


「いや、それならば多くはないがいるんだ」

「ミューはな」

「滅んだ種族同士のハーフなんだよ」


(ほお、どんなどんな?)


すごく興味をそそった

そういう珍しいものが好きなのは恐らく転生前もそうだったからなんだろう


「父親は銀狼族ぎんろうぞく、母親は妖猫族ようびょうぞくと言ってな」

「銀狼族は成長すると美しい狼へと変身する力を持つらしい」

「わしも見たことはないがな」

「妖猫族は様々な妖術と呼ばれる力を使えると言われている」


妖術?

もしかして、さっきのは


先ほどミューが見せた力を思い出す


なるほど、そういう種族同士の子供なら

あれほどの力があるのもわかる


一人で納得していると

アゾットが言う


「今、わしらがこの子の身に危険が及ばんよう交代で見守って入るんだが」

「どうしても穴があってな」

「ゴブリンにおそわれたんだろう?」

「近頃魔族どもが活発に動いておってな」

「ここいらもずいぶん危険になった」

「それで今日はこの子を引っ張ってでもわしらの村に住まわせようとしてたとこじゃったんじゃ」


(ふむふむ)


「そこでじゃ、あんたここでこのこと暮らしてくれんか?」


(え?)


「ゴブリンを一瞬で屠ったというあんたならこの子を守れると思うんじゃ」


(いや、まぁ、大概の攻撃は防げる自身はありますけど)


「頼む!この通りじゃ」


再び深々と頭を下げるアゾット


(ん~、まぁ、急ぐ旅でもないし)

(オッケー、引き受けるよ)


「そ、そうか、助かるよ!」

「わしらも時々ここに来て差し入れするよ」

「ミューの顔も見たいからな」


いい笑顔でミューの頭をポンポンする

ミューはくすぶったそうに眼を閉じる


「じゃぁ、ワムちゃん一緒にいてくれるの?」


(うん、そうなるね)


「やったぁ!ありがとうワムちゃん!」


嬉しそうに飛び跳ねるミュー


くっそぉ、可愛いなぁこんちくしょう


デレデレするワム

こうして一人と一匹の生活が始まった



―――――――――――――


ユグドラシオン、王の間


「それで、どうでしたか?」

「守護者は見つかりましたか?」


女王の言葉に下げていた頭をあげて答えるカノン


「申し訳ございません!」

「頂上まで行き隅々まで探索したのですが、それらしきものはいませんでした」

「ただ、これを」


カノンが異次元収納袋から取り出したのは青い金属のような硬さの抜け殻だった


「これが、世界樹の花があった場所より採取されました」


「これは...」

「ワーム?の抜け殻でしょうか?」

魔術師オールスがそれを手に取りながら言った

「ふむ、ワーム、確かにワームですが、こんなワームは見たことがないです」

「陛下、どう思われますか?」


「ええ、わたくしも見たことがありません」

「しかし、この抜け殻の持ち主が世界樹の花を持ち去った」

「あるいは、食した、で、間違いないと思います」

「恐らく、その時力を得て、進化したのでしょう」

「その時の光があの日わたくしたちがみた光で間違いないかと」


まじまじと抜け殻を見る一同


オールスが抜け殻を見ながら言った

「ひとまずこれは私が預かって鑑定いたしましょう」

「陛下、よろしいですかな?」


「ええ、そうしてください」

「何かわかればすぐ報告を」


「ハッ、かしこまりました」


「陛下、私は引き続き周辺の捜索をしてまいります」


「そうですね、たのみましたよ、カノン」


「ハッ!」


カノンは頭を下げ、王の間からまた騎士を率いて旅立った

あれ?冒険は?

って疑問は置いといてください

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