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プロローグ

 目の前に立ったデュオリムと名乗る少女

無口、といっていいほどしゃべらない

ショートヘアのてっぺんをキュッと結んだ頭

服装は、忍?装束だろうか

いや、恐らくそうだろう

腰元にはクナイがぶら下がっている


「あの、僕はなんでこんなところに、てかあなたは?」


 疑問ももっともだ

目が覚めたらいきなりよくわからない場所にいたのだ

夢かとも思った

しかし夢ではないことを頬をつねるというありきたりな行為で確認した

痛みがそれを現実だと語る


「私 あなた 呼んだ」


「あ、しゃべってくれた」


「...」


「あの、呼んで、なんです?」


「...」


またかよ!会話続かねぇよ!

そう思いながらも顔は笑顔

我ながら心が広いと思う


「いぶき」


突如自分の名前を呼ばれる


「え?どうして、僕の名前を?」

教えた記憶はない

なぜ知っているのか

もっともな理由は彼女が自分をターゲットとして誘拐するために調べていたから

しかし異質な空間がそれを否定するに十分な理由を与える


上も下もない

よくわからないかけらのようなものが浮かんでいる

そのかけらは触れるが質量を持っていないかのように軽い


どう考えても異空間だこれ


「いぶき 死んだ」


「はえ!?」


突然そう言われて変な声をあげてしまった

何も見ずにその声を聴いていればお尻でも触られたの?と聞きたくなる


「あの、どう見ても生きてる気がするんだけど」


「...」


もういいよ!なんで喋んなくなるんだよ!

心の中で突っ込みつつそれでも笑顔で質問する


「ど、どうしてそんなこと言うの?」

「それに、君はだれ..何者なの?」


「監視者 二番目 デュオリム」


「監視者?二番目?」


デュオリムが名前だということは最初に名乗ってきたのでわかる

しかし、監視者、二番目という言葉が新たな疑問を生む

監視者?やっぱり誘拐?

いや、でも、この空間はいったい

それに二番目?他にもいるってこと?

それともこの場所の番号?

わからない、わからないことだらけだ

僕は、どうして、ここにいる?


「それは あなたがあれを持っている から」


え?今、心を?


「そう」


「あれって?」


「...」


話さないのね

くそ、何も結局わからないじゃないか


「今は 言えない」

「悪いように しない」

「行って 守って」


「え?守る?何を?」


「...世界」


その声はまるで遠くから響いているかのように聞こえた

突如として遠のく意識

眠り、というより気絶




目を覚ましたいぶきは周りを見た

一面緑色のつるつるした床

何だここは?

さっきの女の子は?


いない

手を動かす

あれ?なんか、感覚が...


脚を動かす

あれ?いつもより動作がのろい


頭をもたげて体を見る


なに...これ...

僕の体...虫?

芋虫...なの?


体を動かしてみる

這うことしかできない

嘘でしょ!?

なんでこんな!

恨んで

恨んだ

こんな体にしたと思われる少女を


そこで少女の顔を思い出す

あの悲しそうな顔は、決して悪ふざけではないと思えるだけの深刻さを孕んでいる気がした

守って...そう言っていた

守れって言われても、どうやって...

グゥウウ

いや、今はそんなことより強烈な空腹感がある

何かを食べねば

周りを見渡すと、ようやくそこがどこなのか分かった


葉っぱだこれ

自分がいた場所が植物の上だと知った

上を見上げると雲へと届くかと思われるような広がる葉と枝

下を見れば地面が見えないほどの巨大な幹

いや、これは芋虫としての視点かもしれない


今僕は芋虫ってことは

これを食べればいいのかな?

葉っぱに突っ伏してパリッとかじってみる

小気味いい歯ごたえと甘さ?が、口に広がる


なにこれうま!

葉っぱのあまりのおいしさにムシャコラムシャコラ食べ続ける


たらふく食べた、もう食べれないよぉムニャムニャ

と、わけのわからないことを思いながら転がる

ふと、目の端に何か文字が見えた


んあ?なにこれ?


こまんど



コマンド?なに?え?

頭を振ると文字がついてくる

つまり、自分の目自体に文字があるということか

ん?カーソルが出てる


→こまんど


なにこれ...

あ、弟がやってたゲームに似てる?

あれ?弟?あれ?そういえば、僕、名前以外思い出せないぞ?

弟、多分いた、少しだが、おぼろげだけど、記憶がよみがえる

(...ちゃん!俺のプリン喰っただろ!)

(いいじゃん、また買ってきたげるから)

(もー、...ちゃん昨日喰ったじゃんか!)

(ごめんごめん、後で買いに行ってくるってば)

そんな他愛のない兄妹喧嘩を思い出す


そうだ、コマンド!

集中してそのカーソルを見る


すると、何か文字列が開く


みる  きく  


はなす たたかう


うわ、なんか出た!


なになに、見る、話す、聞く、戦う?

まるっきりゲーム?じゃないのこれ?


自分の置かれた状況は分かった

いや、わからないことになってるというのは分かった


とりあえず、順番に見てみるか

まずは


→みる


すると、目の前に様々な文字が現れた


葉っぱ、空、雲、木、芋虫


この、芋虫というのは僕?のことかな?

芋虫を見てみる


個体名ユグドラシルワーム


一般的なワームがユグドラシルに巣くったもの

性能はワームの二倍ほど

ワームもユグドラシルワームも昆虫でありモンスターではない

ごくまれにユグドラシルワームには進化するものもいる

弱い


弱っ、弱いってなんだよ!

それにしても、見逃せないワードがあるね

ユグドラシル

モンスター

これも見てみよう


ユグドラシル


世界を支える大樹

世界に様々な恩恵をもたらす


モンスター


世界にはびこる生物

人間種に使役される友好なものもいる


ふぇええ、ここイセカイダッタヨォオオ

思わず思考が停止する


グゥウウ


ん?またおなかがすいた

よし、葉っぱはいっぱいある

とりあえず食べて落ち着こう


ムシャパリムシャコラ


うん、うまい

今まで野菜ってあんまり好きじゃなかったけど

これならいくらでも食べれる気がするムシャァ


ポーン


突如脳内に不思議な音が響いた


うお、なに?


— 成長を確認しました

— スキルを獲得します

— スキル、食事高速化を獲得しました


え?葉っぱ食べてただけなのになんか獲得した

食事高速化?

試しに葉っぱをムシャってみる

シュン!という表現が正しいだろう

そのくらいのスピードで葉っぱが抉れた

なのに口の中には葉っぱのうまみが広がる


うわああああなにこれ、はやああい!


喜んでいいのか分からないが一応喜ぶ


おなかも膨れたし、もっかい確認しよう


えーっと次は?


→きく


きく

異なる国、異なる種族の言葉を翻訳して聞くことができる


ほうほう、これは助かる


異世界だとわかったからには言葉は重要といえる

しかし、芋虫がほかの人、もしくはそれに準ずる知能を持った生物に聞き耳を立てて何か意味があるの?

とも思った


次は


→はなす


はなす

異なる国、異なる種族の言葉を話せます


うおおおお!これは便利!

素晴らしい!

これで...あ、僕芋虫だわ


自分が芋虫というハンデを改めて確認する

ああああ、まぁ考えても始まんない

仕方ない、次見てみよ


→たたかう


たたかう

戦闘中攻撃をできる

スキルを覚えることでコマンドに表示される

様々なスキルを覚えよう!


覚えよう!じゃねぇよ!

誰だこの説明作ったやつ!

ぶん殴ってやる!


怒りに震えながらもスキルを見てみる


スキル

現在獲得しているスキル


食事高速化



何だ一個か

持ってるだけで使えるスキル一個

でもこれ戦闘で使えないよねぇ...


とりあえず、僕は弱いらしい

ここは幸い鳥とかもいないみたいだし

ここをひとまずの拠点にして、戦えるようになったら...

戦う?今までそんなことしたことはないと思うが

記憶はないが、なにか、違和感がある

それが何だかわからない


まぁおいおい考えればいいか

今は、なんだか、眠いんだパトラ...


そんな危ないセリフを口ずさみながら眠りについた


何の変哲もない芋虫をひたすら頑張らせる感じです

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