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【白銀甲虫】シルバービート〜装殻系短編集〜  作者: 凡仙狼のpeco
コラボ:白銀の甲士~悪の大幹部VS黒の伍号~
4/12

第4節:変身!

 翌日。

 ジンが待っていると、彼は時間通りに現れた。


 銀次は、彼から見ればまだ若い少年だ。

 しかし、ゆったりと歩く今の姿から立ち上る、その風格はどうだろう。


 着崩された制服と、無造作に纏めた銀髪が風に揺れる。

 歩くたびに足元から舞う粉塵すら、彼の闘志に呼応しているようだ。


 今の目つきは、高校生とは思えない程に鋭く真剣で、ジンを正面から射抜いて逸れる事がない。

 多くの実戦をくぐり抜けた者特有の、圧するような雰囲気を身に纏っている。


 しかし。

 その闘志を、決意を。

 隠し切れない事が、彼がまだ未熟である事の証左だ。


 大き過ぎる戦闘力と、それを律する冷たい理性。

 しかしそれに比べて、その魂の幼さと……それを補って余りある、満ちあふれる心の強さ。


「来たな、銀次」


 ジンはあえて凶悪に笑みを歪ませ、岩に片膝を立てて腰掛けたまま、彼に語りかける。

 銀次は、足を止めた。


「……そっちも一人か」


 意外そうに、銀次はそうつぶやいた。


「タイマンだ。そう言っただろ?」


 ジンは指を鳴らして、人指し指をおどけるように銀次へと向ける。

 そのまま岩を滑るように降り、ジンは彼と対峙した。


※※※


 銀次は、ジンを観察した。


 相変わらず粗野で、軽そうな雰囲気の男だ。

 改めて見ても悔しいぐらいスタイルがよく、ラフな服装がサマになっている。


 銀次は、人を脅して来たその男の余裕綽々の態度に相手の力量を察する。

 決して油断は出来ない相手だと、彼の経験が警告を発していた。


 ジンは今日、銀次自身が腰に巻いているベルト型の変身具……『アームギア』によく似た黄色い宝玉を持つ黒いベルトを身につけている。

 銀次は、口を開いた。


「お前に対して、抹殺命令が出た」

「そうか」


 ジンの態度は変わらない。


 相手の戦力は未知数で、強者の気配がする。

 何故あんな姑息な脅しで銀次を呼び出したのか、とそんな疑問を覚えるくらいに。


 しかし銀次は、毛頭負ける気はなかった。

 相手が強いならそれでも良い。

 勝てば、親父……行方不明のゴルドビートの強さに、また一歩近づけるだろう。


 銀次は、そう確信していた。


※※※


 先に動いたのは、銀次。

 彼は、アームドライバーと呼ばれる変身具のパーツを取り出した。

 それを『アームギア』のバックルをスライドして現れたソケットに叩き付け、バックルを擦って戻す。


『Scanning StagBeetle!!』


 『アームギア』がドライバーを読み込んで応え。

 銀次の体は、光に包まれた。


 コンマ数秒。

 銀次は、西洋の鎧を近未来的なデザインに変えたような、それでいて生命力を感じる有機的な銀色の外殻を纏っていた。


 右腕には、前腕部にかけてグリップされた、二本角のクワガタのような形の武器。


 巨大な二本の角の意匠が、力強い頭部。

 全体的にヒロイックなイメージの外見だ。


 だが、関節や肩に取り付けられた棘や角。

 何より兜の鋭い目つきが、決して彼が只のヒーローでは無いことをうかがわせる。


 甲虫に良く似た姿に変わった、彼の名は。




金色に継ぐ者(カドレー・オブ・バース)〟ーーー名を、白銀の甲士(シルバービート)




「へぇ、写真は見てたけど、やっぱよく似てるな。……マサトに」


 ジンは、自身のよく知る人物の姿を思い浮かべて言い、固く拳を握って両腕を体を前で重ねる。

 それは、天を貫くようにそそり立つ、逆十字アンチクロス


「装殻展開ッ!」

命令受諾ゲットコネクト


 ジンの力強い声に応えた生体移植型補助頭脳インナーベイルの宣言で、彼のベルトから滲み出した流動形状記憶媒体ベイルドマテリアルが全身を覆う。


 現れたのは、胸郭と両肩が分厚く盛り上がった、艶のある黒色の外殻を纏う装殻者。


 全身を走る出力供給線イエローラインと。

 頭部にそびえる、先端が二股に別れた一本角。


 雷の色を持った双眼を苛烈に輝かせて。

 見るだけで強大な力を秘めていると分かる、その装殻者は。


「まさか……《黒の装殻シェルベイル》、だと……!?」


 シルバービートが、緊張感を増した声で言う。


「俺が従う者は、黒の一号!」


 ジンは、高らかにうたった。


「天を従え! 地を降し! 人を欺く!」


 天を差した右手で、そのまま親指を下に向けて、横に手を払い。


「蔓延る邪悪に制裁を!」


 最後に、握った拳を真っ直ぐ空へ。

 引き締めた左腕を、硬く腰へ。


「俺は〝憤怒の雷神〟―――名を黒の伍号(シェルベイル)大甲ビートコア!」


 一条の雷鳴が、轟音と共にジンに突き刺さり、彼の両腕が、雷電を纏う。

 シルバービートも、スタッグブレードを展開して、双刃を構えた。


 こうして。


 世界最強に近い二人ーーー刃の白銀と、雷の漆黒を持つ二匹の甲虫が。

 神山市の一角で、激突した。


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