第3節:お互いの内心
危ないとこだった、と。
ジンは内心冷や汗を掻いていた。
まさかあれほど早く臨戦態勢で銀次が出張ってくるとは、彼は思っていなかった。
なんとか余裕の外面を保ち、予定を繰り上げて銀次を嵌める事は出来たが、もう少し疑いを持たれていては危なかっただろう。
「『バース』の人材も豊富だねぇ……アタマも食えないし、やっぱ誰か一緒に来てもらった方が良かったかな」
しかし結果オーライ。
銀次が聞いた通りの性格なら、ああいう脅しは通じるはずだ。
「次代もマジで一人二人引き抜いたいレベルだったしな。でもまぁ……上手く行ったし、後はしくじらんように気を付けなきゃな」
情報戦は得意ではないように見えたが、あの行動選択の直感力は天性だろう。
本人は気付いていないようだが、彼はジンにとって一番嫌なタイミングで現れたのだ。
「仕上げでミスったら、元も子もないしな」
気合いを入れ直して、ジンは商店街を後にした。
※※※
本部への報告をどうするか迷った銀次は、自分に対する脅しは伏せて、彼の動きだけを報告した。
街に流通しているドラッグの事を調べていたらしい。
その為、学園の目立つ生徒に声をかけていたようだ、と。
それに対する本部からの返答は意外なものだった。
―――始末しろ、方法は任せる。
そう言われて、銀次は嫌な感覚を覚える。
いきなり本部が始末を命じるほどの何かを、ジンがしていたようには見えない。
本当に『バース』とドラッグに関わりがあるのか、と銀次は疑ったが。
外部から調査が入るほど大規模な事を『バース』が神山市で行なっていて、それを大幹部である銀次が知らないのもおかしな話だった。
しかし、好都合だ、と銀次は考えた。
ジンは言った。
もし一人で来なければ、クラスメイトたちを害する、と。
それは銀次にとって、何よりも許しがたい事だった。