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【白銀甲虫】シルバービート〜装殻系短編集〜  作者: 凡仙狼のpeco
コラボ:白銀の甲士~悪の大幹部VS黒の伍号~
2/12

第2節:鮮やかな手口


 世界最古の悪の組織、『バース』。

 表向き巨大企業として存在するYLCがその組織の隠れ蓑である事を知る者は少ない。


 大幹部である彼の正体を知る者となれば、その数はさらに限られる。


 『バース』は、情け容赦のない悪の組織であり、世界征服を目的としてはいるが。

 同時に関係のない民衆を巻き込む事を良しとしない、仁義を重んずる一面を持つ組織でもある。


 故に、争う気はないというジンの言葉を受けて、二人は近くにあるオープンカフェに場所を移していた。


「女の子二人くらい呼んでくれてもいーよ? のぞみんとかのぞみんとかのぞみんとか」

「呼ぶわけねーだろ! てゆーかなんでのぞみん呼びだよ!」

「のぞみん、連絡先教えてくれなくてさー」

「このナンパ野郎……!」

「何だよハーレム野郎」


 額に青筋を浮かべる銀次に向かって肩を竦め、ジンは話を切り出した。


「最近さ、この辺りで妙な化け物が出てるだろ?」

「……どれの事か分からん」


 ここ最近に限らず、悪の組織と正義のヒーローは常に戦いを繰り広げている。

 悪の組織同士も例外ではない。


 銀次自身も、高校に通いはじめてからも幾度も敵対者との戦いを経験している。


「そーゆー明確な敵じゃなくて、組織も所属も不明な輩の話だよ」


 身を乗り出すジンの鼻先に、銀次は指を突きつける。


「今目の前にいるコイツとかか? 誤魔化してないで、洗いざらい話せ」

「もうちょっと仲良くしよーって気はねーのかよ」


 ジンは口をへの字に曲げたが、手札を明かす事にしたようだ。


「《寄生殻(パラベラム)》だよ」

「寄生殻?」


 銀次はおうむ返しして思案した。


 寄生殻は、かつてヒーローだった男、黒の一号に壊滅させられた『フラグメント・ラボ』の怪人だ。

 ラボ壊滅後、自我のない野良寄生殻がたまに現れていたが、現在は根絶されているはずである。


 しかし、言われてみれば。

 確かに最近、正体不明の怪人を何度か『バース』も退治しているという話は聞いたことがあった。


「寄生殻がな、また生み出されてるって情報がある。Ex.g(エクシード・ゲー)っていうクスリが原因らしいんだが」


 ジンが、意味ありげに頬を歪めた。


「この街でそれを流通させてるのが『バース』だと」

「それはあり得ねぇ」


 銀次は即座に断言した。

 『バース』は利益のない事は行わない。


 そのクスリを撒く事で一時的に得られる利益は大きいだろう。

 しかし、神山市の状況を長期的に見れば、『バース』の利潤となる人材や産み出す金を食い潰す遠因となる。


「経済活動の破壊って意味じゃ銀行強盗も一緒じゃねーかよ。まぁ、質は違うけど……それはいーや」


 ジンは、液体カプセルを取り出してテーブルに置いた。


「ここにあるのが、Ex.gの現物だ」


 見てみろ、と言われて手に取る。

 色は何の変哲も無いただの風邪薬みたいに見えた。


「よく分かんねぇな……こんなカプセルを見た覚えもない」

「そうか」


 ジンは銀次に渡されたカプセルをしまい、体を起こして腕を組んだ。

 銀次も、背もたれに体を預けた姿勢になる。


 対峙するような心持ちで、銀次は改めて言う。


「情報が間違ってるんじゃないのか?」

「それは俺の知った事じゃないな。調べろと言われたから調べてる。で、結果シロと断定出来ないから、君にお出まし願ったって訳だ」


 誘き出しやすく、中核に近い者に接触を図り、情報を探る。

 間違ってはいない。

 しかしふと、銀次は疑問を覚える。


「そこまで『バース』の内部情報に詳しいなら、お前、他にツテがあるんじゃないのか? 何で俺なんだ?」


 銀次の事を知る以上、少なくとも『バース』内部に協力者を飼っているはずだ。


「おっと、意外と鋭いな。だが情報源は秘密だ」


 否定はしないジンに対し。

 後で裏切り者を見つけ出す事を決めつつ、銀次はそれ以上追求しなかった。


「でもま、正面から当たれない事情もある。例えば『バース』と『黒殻(アンチボディ)』は協力関係にあるだろう?」


 『黒殻』。

 それは、先ほどの寄生殻を使う悪の組織、ラボを壊滅させた黒の一号が立ち上げた悪の組織である。


 元ヒーローで、現・悪の組織の総帥。

 彼は『バース』と不可侵協定を結んでいる。


 だが、元々黒の一号はラボの改造人間だ。

 つまり、寄生殻の技術を持っていてもおかしくない。


 その彼が自身のパイプを使って神山市にEx.gを撒いている可能性がない、とは言えないわけだ。


「お前は、そっちにバレるとマズい立場か。政府関係者か?」

「幾ら詮索しても、俺に関する情報を出す気は無い。逆も考えられるだろう? 『黒殻』と協力体制にある別の組織からの依頼で、相手が力を持ちすぎるのを防ぎたい、とかな。敵の敵は結局敵だしな」


 どうにも思考が黒い男だ。

 油断がならない上に、肝心のジン自体の目的がまるで見えてこない。

 銀次は、テーブルに肩肘を掛けて指先で軽くテーブルを叩いた。


「結局、お前は何をどうしたいんだ?」

「ぶっちゃけて言えば、今回の依頼に、俺は乗り気じゃないんだよな。依頼主は躍起になってるけど。という訳で、手っ取り早く解決したい」

「出来ないから困ってるんじゃないのか?」


 銀次の言葉に、ジンは平然とうなずいた。


「そう。だから、犯人を〝作る〟ことにした」

「は?」


 ジンが言い、彼は通信で一枚の写真を送ってくる。

 それはたった今しがた撮られたもので。


 カプセルをジンに手渡す銀次の姿があった。


「………っお前、まさか!」

「そのまさかだよ、銀次くん?」


 ジンは、してやったりとばかりに満面の笑みを

浮かべて見せた。


「Ex.gをばら蒔いている犯人として、『バース』の大幹部ってのは最適な人材だろ?」


 銀次は、自分の迂闊さを呪った。


「この野郎……!」

「吠えても、もう遅い。俺はお前を始末して、犯人として報告する。それで一件落着……〝模倣犯〟が出てくる頃には俺はもういない、って寸法だ」


 ジンは立ち上がり、銀次の肩に手を置いた。


「明日、15時。郊外の採石場跡に来い。タイマンだ。もし逃げたり、人を連れてきた場合……のぞみんたちの安全は保証しない」

「……っ!」

「じゃあな」


 ―――ハメられた。

 銀次は、ジンが去った後、キツく奥歯を噛み締める。


 奴は。

 銀次に、冷静に状況を把握する時間すら与えないまま、彼を追い込み。


 出会ってからほんの一時間で、銀次の退路を断っていた。 


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