次はどうする
『助けてください』
確かに言った。
頭を下げて、新しい校長室の床をじっと見つめる。
「私からも、お願いします」
猫実さんまで頭を下げなくてもいいのに。
また、静かな時間が流れる。
どのくらい時間が経ったか、
「浅野くん、でいいかな」
校長先生の声が頭上でに聞こえた。
「はい、浅野です」
頭を下げたまま答えた。
心臓が前よりもっと、速く動き出した。
これから言われるのが、校長先生の、答えだ。
「顔をあげなさい」
軽く、トントンと背中を叩かれる。
隣にいる金子先生だろう。
言われた通りにゆっくりと頭を持ち上げる。
「君の献身的な志は認める。」
ちょっと小難しい言葉だったので本能的に理解しずらかった。
でもしばらくして、それが肯定の意味だとわかった。
ふわりと、体が軽くなった気がした。
安心感で、気が緩くなるのをこらえるのに必死だった。
「会計の麻生先生に頼もう。
金子先生、2人を麻生先生のところに連れてってもらえますか?
お助け部の部費を増やすと私が判断したことを言ってください。」
「了解しました」びしっ、と金子先生が返事をする。
「ではさっそく、麻生先生のところに参りましょうか。」
「ありがとうございます!」巧は校長先生に礼を言った。
猫実さんも、ありがとうございます、と頭を下げた。
嬉しさが自分の体を包み込むのを感じた。自然に頰が緩んでしまう。
来た時とは正反対の気持ちで校長室を出た。
「よかったな浅野」
金子先生が労いの声をかけてくれた。
「はい、本当に良かったです」
久しぶりの笑顔で答える。
「良かった」
猫実さんも嬉しそうに呟いた。
「まぁ、麻生先生は厳しいかならあ。まだ油断は禁物だぞ?」
「えっ、そうなの?」
まだ全然安心できないのでは、、、
巧は猫実さんに確認する。
「うーん、まぁ厳しい先生ですよ。ラグビー部の顧問をやっていらっしゃる先生です。知りませんか?」
顎に手を当てて猫実さんが言う。
、、、ラグビー部の顧問っていう情報いらなくない?無駄に怖がらせないでほしいのだが。
巧はまた別の心配が胃を蝕んでくるのを感じた。
「まあ、話せばわかるでしょうし、バックに校長先生がいますから、きっと大丈夫ですよ。」
「ですよね、、、。」
そう言って、自分を納得させる。
とにかく、怖がるのは麻生先生を見てからにしよう。
「ともかく、ここまで来たんですからもう一息です。」
にっこりと、明るい声で猫実さんがいう。
足取りも自然に軽くなっている。
「そうですね。」
巧も、落ち着いてきた。
歩きながら、ぐっと制服のベルトを締める。
大丈夫だ。きっと、わかってもらえる。そう信じている。