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いざ参ります





試験結果の発表日、掲示板の前には人だかりが出来ていた。結果は事前に知らされていたが、一応、確認に来た。7位、マリア・シャルロッテ。確かにそこに私の名前があった。私以外は至って順当な結果だった模様だ。アムナート様は2位につけている。あのゆるーい話し方とチャラさでバカなんじゃないかと思うこともあるが腐っても宰相閣下のご令息であるらしい。周りが私を見てひそひそ話をしている。内容までは聞こえないが、わずかな嫌悪感は察知できる。目立つことは予測していたが、はて、嫌悪感?その理由を私は放課後知ることとなる。


朝、担任から個別に結果通知を渡された際に付いてきた1枚の紙切れ。生徒会長、ユリア・ランダハルの名の下に記されたお呼びだし状。放課後の生徒会室。これは想定の範囲外である。シオン様に報告しようにも、連絡手段はない。頼みの綱のアムナート様は今日は風邪で休みである。しかし、呼び出された以上は一生徒として行かねばなるまい。


私は校舎の最上階、生徒会室へと向かう。ノックをすると、室内から可憐な美少女が現れた。リリーの会会長にして生徒会書記のソフィア様である。伯爵令嬢。目を合わせずにそっと頭を下げる。


「あらやだ、可愛い子ね。入ってちょうだい」


鈴のなるような声で入室を促される。華奢な後ろ姿について入るとそこは絢爛豪華な部屋だった。学園の調度品は基本的に高価であり、廊下もふかふかの赤絨毯が敷き詰められている。しかし、生徒会室はさらに格上の調度品が品良く配置されている。そして、入って一番奥、重厚な机の向こうにはユリア様が待ち構えていた。

金糸の女性にしては短い髪を一つにくくり、凛々しい顔立ちをしている。水色の瞳が私を捉えている圧力を感じる。目を伏せたまま、私は一礼する。


「マリア・シャルロッテだな?」


「はい」


「なぜ、呼び出されたかは分かるか?」


「申し訳ございませんが、分かりかねております」


ユリア様が立ち上がって近付いてくる気配がした。あまりに近い気配に顔を上げると、予想以上に近い。シオン様といい、王族は距離感というものが分かっていないのではないかと思いつつ、驚きのあまり後ろに下がる。と、絨毯に足をとられて、そのまま倒れると私は目を瞑った。

しかし、痛みはこない。

私はユリア様に抱え込まれていた。背中には細長い腕が回され、どうやらこけそうなところを助けられたらしい。

慌てて、お礼を述べて立ち上がらねばと動こうとすると、それをユリア様に封じられた。

美しい顔が近い。とにかく近い。私の視界はほとんど澄んだ水色の瞳である。

囁くようにユリア様はおっしゃる。


「君の成績の伸び方に不正が疑われている。試験前に教師と親密にしていたそうだな」


あ…それで朝の嫌悪感の意味が分かる。質問のために何度も担当教官の元を訪れていたことが原因らしい。


「何か言いたいことは?」


とりあえず、なぜこのような体勢なのでしょうか…?と問いたいがそれよりもと私は水色の瞳を見返して述べる。


「努力の結果です」


しばし、返答はなかった。その姿勢で固まる…固まる。いや、とりあえず変な体勢だから腰が痛いんだが…と思い始めた頃、ユリア様が微笑んだ。


「いい目をしている。気に入った。私はがんばる女の子は好きだよ」


やっとそこで解放された。立ち上がり、礼を取ろうとするとユリア様が手で制した。


「君のここ数ヵ月の体型の変化は聞いている。こればかりは不正のしようがない努力だからね。努力のきっかけが知りたいところだが、今はいい。君は努力家だ。私の名の下に不正疑惑は否決で終わらせておこう」


ユリア様はそっと私の手を握る。私よりも大きいが白魚のような手である。


「リリーの会に入らないか?」



我が主のシオン様、予想外の展開でしたが無事にリリーの会にスカウトされました。

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