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コードLP  作者: ノーリターン新
コードLP・第二章
61/76

フェアリィ・ランゲージ・中編

「あなたたち!」

「電子グレネードは行き届いたわね」


「はい」


「はい!」


ピンピンピン


「ふんぬ!」


ブン!


目の前の道路が白から赤く染まる。

電子グレネードがさく裂し、機械化師団が破壊されてゆく。

もう武器弾薬が無くなってきた頃だ。

次の補給までエネルギーパックをケチらなければいけない。


カチン


キュウーーン


ガチャ!バク


「ミサキさん」

「ツトムさんは?」


「あれ?」

「どこ行ったんだろう」


青い色の作業ツナギを着たミサキがあたりを見回す。

白いがれきの中で人間と義人LPは生きる為の抵抗をしている。

機械化師団が殺しに来る、望みは人間の死なのだ。


ジャリジャリ


「ツトムさん」

「こんなところで何をしているんですか?」


レーザーライフルを右肩に回しながらレーザパックを取り出すミサキ。


「あ」

「ミサキさん」

「ほらこの蝶々」


「え」

「蝶々?」


「うん」

「タンポポと蝶々が生き残っているんだ」


日陰になった白いがれきの廃墟の一角で。白いタンポポが咲いている。その胞子の周りを黄色い蝶々がひらひらと飛んでいる。


「うわ」

「絵が上手なんですねえ」


「そお?」

「ありがとう、ミサキさん」

「こうやってスケッチ帳に気にとまった絵を描いていくんだ」


「ねえねえツトムさん」

「ミサキの似顔絵を描いてください」


「え」

「ミサキさんの似顔絵ですか」

「・・・・・」

「うん」

「いいですよ」


白いホコリが舞う空間で、日向と日陰のコントラストに生えるタンポポと蝶々を見ていると、時間が止まっている錯覚がする。


「ミサキさん」

「出発まで時間がありませんわ」

「みんなを集合させてください」


擬人リーダーのオトハが巨大な二連レールガンを担ぎながら指示する。


民間のトラック2台に乗って南へ抜ける。

行く先はブルーディンゴ・シティ。

最近開発が進み始めた青い都市。ビルディングや道路チューブが青い色をしている。

障害物だらけの高速道路を微速で前進するトラック。

擬人は3名ずつ2台のトラックへ分乗する。


擬人とは700年前ほどに行われた戦争で開発されたロボットの通称。LPシリーズと呼ばれ、高度な戦闘技術とスキルを持つが。

平和主義の精神が脳回路に組み込まれている、と言うよりも。

クリスタルエーアイ、人間で言う魂にあたる部分に愛が生きている。本気で愛と自由を信じているコンピュータエーアイ。



「!」


「来ましたわよ」

「イネさん」

「速度を上げてください」


ミサキが乗るトラックにはリーダーのオトハと擬人シスターのイネが乗る。

擬人姉妹の脳レーダーには機械化師団の情報が埋め尽くされる。


ヒュン


ズドン!!


「きゃああ」


グララララ・ザシーーン


ミサキが乗るトラックの後輪を狙われた。派手に横転しながら止まった。

光エネルギーによって融解したタイヤがもう走行出来ない事を物語っている。


「負傷者の手当てをしてください」


トラックの内部と外の外壁沿いでレーザ銃撃戦が始まる。

もう一台のトラックは先方で止まっているが、擬人3人だけ降りて来て戦う。


「オトハさん」

「この場に居ては危険です」

「車が爆発します!」


ミサキが叫んだ。


「ええそうね」

「こいつらは地上部隊の歩兵だけよ」

「すぐにかたずけましょう!」


ポチ!


ヒュー―ィ


キンキン!!


ズドドドドオーーン


オトハが持っていた二重レール砲で、機械化兵を半分以上破壊してしまった。


「すごい・・・」


「ミサキさん」

「わたくしが破壊されたらあなたがこれを使うのですよ!」



次の日の朝、ブルーディンゴ・シティに到着した。

ここも廃墟だ、青色のゴーストタウン。

至る街並みが破壊されて景観は見苦しいものとなっている。

最初に漁港を目指す、救助の船が居るかもしれないから。

風が紙切れを巻き上げて舞い上がる。

なぜか胸騒ぎがする。


ドン!


最後のトラックが破壊された。

敵の重戦車のレーザー主砲の直撃!まだ乗客が居る。

今トラックを降りていたのは昨日破壊された方のトラックに乗っていた人数だけ。

一瞬にして十人の人間と3人の擬人姉妹が死んだ。

トラックが赤黒い炎に包まれて燃える。


「あ・・・あ」


「イネさん」

「早く戦闘態勢に入ってください!」

「皆さんは後ろの小屋に隠れて」


敵の地上部隊と空の兵器の連携だ。今度は激しい。

ミサキがレーザー射撃をしている間、ツトムはレーザーライフルで援護射撃をしている。

人間のツトム達はエネルギーシールド防壁を装備しないから、ミサキが自分から身を乗り出して敵の攻撃を浴びに行く。

と言っても耐衝撃エネルギーフィールドも万能ではないから、自らの命の保証はない。

敵戦車は一両、最初の不意打ちの直後にオトハが破壊した。


港に停泊していた船はことごとく破壊されてしまった。


「もうだめですの?」

「何の為にわたくしたちはこんなに!」


「!」

「まってください」

「レーダーに反応!」

「すぐに私たちの頭上に表れます、これは」


ブワサアア・・・


バシュウウウウ


シップだ。大気圏突入が可能な小型のシップ。

海じゃなくて空からお助けが来た!


「空軍だわ!」


人間の軍の空軍が護衛についている。

空対地攻撃で敵の機械化師団は壊滅した。

あちらこちらでオレンジ色の爆炎が上がっている。


「オトハさん」

「私たち生きてますよ!」


オトハはもう爆発して残骸になっている味方のトラックを見つめている。


「ええ」

「犠牲は大きいですけれどね」



シップは生活安全圏まで私たちを運んでくれた。

ツトムさんがマザーカインドに会いたいと言う。

イネさんとオトハさんと4人で、悠久ベースに向かう。

隣の大陸のベースでは、シスタートリンが眠っている。

彼女の留守を我々が守らなければならない。

愛・プログラムがせっかく発見されたのだから。


ツトムさんが言う。


「じゃあマザーカインドはボディを失っても生きていけるの?」


「はい、そうですミスターワンダ」

「本来ならば私たち擬人も目に見えない輪廻がありますわ」

「そもそも」


「ちょっとオトハさん」

「何の話ですかそれ」

「そんな話どこの文献にもデータベースにもありませんよ」


バシュッ


「おかえりさい」


「ただいま、マザーカインド」


「ただいま帰りましたわ、マザー」


「ただいまです」


「はじめまして、ツトムです」


「ええ、はじめましてツトム」


それからマザーは私たちの知らない話をしてくれた。

知らない時代のこと、知らない擬人姉妹の歴史について。


ミサキは今は白色の作業ツナギを着ている。

おさげ頭で相変わらず、ソバカス顔。

製造されて目覚めたときからこの服がお気に入りらしい。

一人用トランス空間ルームで、携帯オーディオを聴きながら宇宙の風を感じている。



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