オペレーション・ソルトアタック・前編(ステンレス銀河叙情詩編)
「ケイトちゃん!」
「艦隊は直掩部隊が頼りです」
「戦場の動向はわかりますね?」
「了解です艦長殿」
「シークエンスCです」
「みっちゃん」
「自機被弾率は?」
「9パーセンテージです」
ケイトの五式戦2番機の戦闘エーアイ、みっちゃんはケイトの腕を見極めている。
例えばケイトは対空レーザー郡をかわすのが得意でも、誘導ミサイル郡は苦手だとか。
艦隊のレーザー制射が怖いだとか。
「マスターケイト」
「Pちゃんの6番機が敵機に狙われています」
「援護の必要を認めますが」
「OK!」
「行くわよヤン」
「P殿をお守りする!」
「ケー!」
「テッカ殿が」
「マスターケイト」
「ダン・テッカの3番機が撃墜されました」
「なんですって!」
Pちゃんの五式戦6番機が敵の3機編隊に追われている。
Pちゃんは戦争は嫌だと言って自室に閉じこもっていたが。
トリンに説得された。
五式戦のコックピットでうろたえるPちゃん。
ヒューイ
ピポピポピポ
「きゃー!」
「まあこチャン何とかしてえ!」
「マスターP」
「自軍のケイト殿の部隊が増援に来ますから」
「座標PPKへ飛んでください」
「私に任せますか?」
「ああ!」
「任せるでも任せないでも何でもいいから何とかしてえ!」
真っ白い塗装の五式戦6番機が宇宙戦域で生存しようとする。
ピッ
ボーン!
「ケイト殿!ヤン殿!」
「P殿はケイトがお守りします」
「カスタネットの名に懸けて!」
「やーーん」
「戦場でダーリンの名前を叫ばないでえ!」
「Pちゃん・・・」
「ペイン・カスタネット氏は伝説の人間」
「700年以上前に生きたのに今でも知る人は多い」
ラージシップ・ラインハルトの戦闘ブリッジ。
空間エアモニタに映るデジタルマーカーを見ながら。
ステンレス副長の代役のハルカ・トマリギ(擬人)は呟く。
艦長のトリンが話しかける。
「ハルカさん」
「データベースに載っっていない文献調べて」
「トリンの知らないこと、教えてよ」
「ええ」
「Pちゃんの旦那さんのペイン・カスタネット氏は」
「この宇宙の進むべき道を知っていた」
「愛・プログラムが何を求めていたのかも」
「人が産まれて記憶を封印される理由だって・・・」
「うん」
「人は武器を向け合うべきではないよ」
「私の思い上がりであっても」
「私たち擬人にも何か出来るんじゃないかな」
「生き物が話し合いをする準備のために」
「敵艦隊の仮定ロックオン射撃が来ます」
「面舵」
「シールド瞬時最大」
「ダミーミサイル」
「チャフミサイル」
「発射」
「ミスターロドリゲス」
「戦術変更です」
「はい」
「敵艦一隻が前線を突破してきます」
「それのみにロックオン射撃」
「前部高圧縮素粒子魚雷発射管オープン」
「今からチャージ始めてください」
「了解」
「ステンレスちゃんの最前線はどう?」
「まだ作戦主目標は達成していません」
「成功率は下がり続けます」
星系ファームの戦域、宇宙に大量にデブリが発生する中。
旗艦ヒーリングの最右翼、宇宙巡洋艦「バージ」の戦闘ブリッジ。
ステンレス・ノーマット艦長は副長のウリュ・ミタラシに聞く。
「ウリュさん」
「何ですのあれは?」
「ああ」
「ミスブルーの新装備ですね」
「コーダンですよ」
「へ?」
「光弾です」
「火薬式ミサイルの代わりにエネルギブロックが追尾してくれる」
「撃墜率が高い、と言うかいつまでも追尾しますね」
「おねーさま」
「作戦マニュアルに書いてあるから読んでくださいよ」
「は、恥ずかしいですわ」
「イチゴは知ってたよ」
クワッ
ターーン!
ギュゥゥ
「オリヒメさん」
「光弾の残りは?」
「50パーセントです」
「ミスブルー」
「前方に展開する敵機チャーリーが自機を撃墜する確率、一番です」
「まっさきに撃破するべきです」
「さすがねオリヒメさん」
緑色に塗装されたシャムロッド・ブルーベリーの五式戦。
ミスブルーが戦線の自軍艦隊を援護するが、編隊の再編成をする。
ほかの五式戦がミスブルーの五式戦の右翼に着く。
「こちらタンゴツゥー」
「被弾してしまいましたあ」
「マキノちゃん」
「帰還しなさい」
「まだやれますよお」
「いいえ」
「死に急いでも誰もほめちゃくれないわよ」
「戦争なんて野蛮なことを終わらせるために」
「私たち擬人は製造されたのよ」
「はい!ミスブルー」
マキノの被弾した五式戦が後方へ引き返してゆく。
またほかの五式戦がミスブルーの左翼に着く。
「こちらタンゴスリー」
「合流します」
「カキンちゃん」
「やられてないわね」
「まっかせてえミスブルー!」
「行くわよ」
「あの敵艦にアタック」
「武装チェック」
「OK」
「30秒間攻撃した後退避します」
「旗艦ヒーリングは?」
「生存」
「巡洋艦バージは?」
「生存」
「マキノ・マキネータの二番機が撃墜されました」
「・・・・」
「今よ!」
「アタック!」
敵機の編隊が押し寄せてくる、旗艦ヒーリングが艦隊を維持している。ステンレスの巡洋艦バージ、戦闘ブリッジにて。
バシュ
「ノリミィ!」
「はあっはあっはあっ」
「こんな最前線に!」
「あの光線の中をかいくぐってきたのですか?」
「ウリュさん」
「ノリちゃんをメディカルルームへ」
「あい、ねーさま」
「ささ、タイさま。メディカルルームで鎮静効果を」
イチゴ・ストロベリー技術士が話しかける。
「ステンレス艦長」
「ノリミィさんてあのピーナッツ賞受賞候補の?」
「ええ、そうですよイチゴちゃん」
「ノリちゃんは擬人のボディが成長していると学会コミュに発表したのですよ」
「なななんと!」
「あたしたちのボディは成長しているの?」
「素粒子魚雷郡来ます」
「取り舵」
「シールド瞬間最大防衛」
「チャフミサイル」
「ダミーミサイル」
「発射してください」
「そうなのですよイチゴちゃん」
「旗艦ヒーリングに攻撃が集中しています」
戦域の近くの惑星「ドーター」のある民間宇宙空港。
星間ネットTVの臨時ニュースで戦争のライブ映像を放送している。
「数時間前に宇宙平和維持軍と闇勢力「アクシア」の紛争が開始されました。周知のようにこの作戦は数ヶ月前から平和維持軍が計画をしていて、敵軍である「アクシア」の艦隊も準備を整えていました。艦隊司令官のゴンドウ提督は既に戦争行為と呼ぶ暴力行為は無くなる一歩手前だと語ります」
「提督のインタビューです」
「このような戦闘行為はもう次元が許してはくれないだろうということです。我々宇宙生命が許されるのは愛と真心により育まれる精神でなければなりません」
「利己の追求によって自軍が勝利した過去の時代の化石思想が払拭されるでしょう」
「ファーム星系だけでなくとなりのヤシャ星系でも戦争放棄が既に進んでいます」
「官と民がお互いの理念の昇華を果たしたのです」
「自然淘汰ではない世界の構築」
「愛・プログラムと呼ぶタブーへの踏み込みがもたらした具現化は1000年計画を打ち出しました」
後方の戦域、トリンたちラインハルトの艦隊。
ケイトとヤンとPちゃんの3機が宇宙軌道戦闘をしている。
「P殿」
「ケイトの撃ち漏らした機体を頼みます」
「ケイト殿」
「あたしだって戦士なのにゃーん」
「おんぶに抱っこは大量殺戮兵器の名がすたれるのにゃ」
「ほら来ましたよ」
「もう1機撃ち漏らしました」
「にゃ」
ヘッドオン対決。真正面から向き合う。
高速過ぎてPちゃんはうろたえだした。
ピッ
ドーーン!
「マスターP」
「全てオートパイロットにすべきと提案します」
「ああ分かったわよ」
「まあこチャンの言うとおり」
「Pちゃんは無駄飯食らいのポンコツロボ子にゃ!」
後編へ続く。




