宇宙人タイタンの手記・2ページ目(ステンレス銀河叙情詩編)
「あのう」
「Pちゃん?」
「ちょっとまっててタイ殿」
「今このダンジョンがギャグ連発でうるさいのよ」
「・・・・」
「タイタンですから」
「ノリミィと呼んでくださいよ」
「なんで皆ヘンな呼称するんだろ」
私は宇宙人のノリミィ・タイタン。
職業は銀河ジャーナリスト。
もう少しで作戦が始まるが、私は現場の部隊を蹴ってこっちへ来た。
何故かって言うと、順番なんだけど。
遊んでたの・・・って言うか。擬人の設計会社へ取材でね。
私はこのファースト擬人の・・・Pちゃんに用がある。
この子はど~見ても臭い。何か隠してるわ。
PDF片手に会話中取材中だが。コイツ私の手に負えない。
惑星チーズの衛星軌道を周回しているラインハルトに乗船。
荷物チェックが厳しいから臨戦態勢だな。
ステンの現場部隊は全く違う宇宙域。
ステンと出会った時は私はまだ中学生だった。
初めて彼女を見た時、凄い衝撃だった。擬人と知らなかったから。
あ、それはまた次の機会ね。
とにかく暇で遊んでるこの戦闘服を着てPCで遊んでるPに取材中。
「だから何回も言ってるにゃん」
「私は何も知らないにょ!」
「そこをナントカ」
「トリン艦長もPちゃんしかヒマ人は居ないって言うのよ」
「うんまあ!」
「それじゃ私が無駄飯ぐらいのポンコツロボ子みたいじゃないのよ!」
「にゃにサマ?」
「プンプン!」
ブン
LP45Wは怒ってハサミを取り出した。
え、切られる?
チョキチョキ
チョキチョキ
「プンプン」
「ぴ、Pちゃん?」
「なによタイタイ」
「鏡の前に立たないでよ」
「私より若いからってボディはPちゃんの方が子供なのよ?」
「そうじゃなくて」
「あなた何してるの?」
「ふんぎゃ!」
「見てわかんなに?」
「髪の毛切ってんのよ、タイちゃんも伸びてるからついでに」
「スキンヘッドにしてやんにゃ」
「ぶっ」
「そうじゃなくて」
「擬人が何で髪の毛伸びるの?」
「あにゃたバキャ?」
「伸びるから切るのよ」
チョキチョキチョキ
「あ~忙しいわあ」
「!!!」
ああああ、なななんと!!
擬人のボディが成長しているのか!?
「Pちゃん」
「うにゃ!」
「臭い口臭を近づけるんにゃにゃい」
「擬人の嗅覚は人間より感度が良いのよ!」
「!」
がば!
今朝、お口グチョグチョ無臭ちゃん使ってきたのに!
「Pちゃん!」
「話を聞いてください!」
「擬人のカラダは成長するんですね?」
「ひゃへ?」
「私はそんなこと知らないわよ」
「造った人に聴いてよ」
「もうみんな死んでから1000年くらい経ったのかにゃ?」
「にゃははは」
チョキチョキ
間違いない。
この真っ黒い髪の毛は伸びている、成長しているんだ。
「失敬!」
むんず
「きゃあ!!」
「なにすんだあ!このガキ!」
ホントに宇宙人の髪の毛と変わらないわ。
「そんなアホな!」
「あ~!!」
「いまアホって言ったなあ!」
「失礼!」
バシュ
ダッダッダッ
あ、空間飛翔通路があるんだ。
シューーン
飛翔区画は私の脳波を読み取って行きたい所まで飛ばせてくれる。
床に落ちたPの髪の毛の束を掴んで急ぐ。
トリンが居る先頭ブリッジへ。
胸がドキドキして爆発しそう。
本当ならこれは世紀の大発見だ。
擬人のボディが成長しているなんて!
あのデカチチ女に・・・じゃなかったトリン艦長に確かめねば。
とんでもない大スクープだわ!
シュンシュンシュン!
「!」
飛翔の感覚が速過ぎて身体がつていけない。
ターンする度に脳に来るが、Gは全て消されている。
真っ白な空間通路に慣れてないし、私は宇宙世代ではないから。
脳と身体と魂が洗われるような無機質な感覚が、ある意味。
自分も宇宙に加わってゆくような感覚。
目を開けていられなくても脳内へイメージが投影されてくる。
大丈夫、たどり着けるわ。
バシュ
「ノリミィちゃんどしたの?」
「血相変えて」
「まだ戦闘は始まってないわよ?」
「あなたはそこの席でおとなしく・・・」
「そうじゃないんですよ艦長殿!!」
「きゃあ!!」
「の、ノリちゃん」
「トリンいま爪切ってるからあとにしてね」
「へ?」
パチン
な、なにコイツ。原始時代のツメキリで爪切ってるぞ。
「じゃないですよキャプテン!」
「あなたの爪は人工じゃないんですか?」
「なんで伸びるの!?」
「だって伸びるからしょうがないじゃん」
「女は身だしなみが大変なの、知ってるでしょ?」
パチン
「そ~じゃなくて!」
「擬人のボディが成長してるんですよ!」
「え、そ~なの?」「初耳だわ」
「ノリちゃんよく気がついたわね」
「トリンがバストアップの方法教えてあげるよ?」
「ああああ」
「アホだこいつら」
「失礼!」
バシュ
お客人用個室へ戻る。飛翔区画が空いてて良かった。
「は、早く報道事務所へ」
「アホか私は、携帯端末持ってるじゃん!」
ピピピ
ピガ
「はーい」
「ああ!」
「A子さん!」
「今から記事書いて送るから、全部アップして!」
「チーフに検閲と許可取ってもらって!」
「とくダネよ!」
「宇宙が変わっちゃうわよ!!」
「はあ?」
「のっちゃん」
「A子がとくダネを書くの?」
「アホかお前わあ!!」
ケース1終了。




