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コードLP  作者: ノーリターン新
コードLP・第一章
26/76

情熱の涙


「おねーさま!」

「おねーさま!」



ビッ!


バクン


ブシュゥ


コールド・スリープ装置がベイ・オープン、ルーム内に白い蒸気が充満する。


「う・・・」

「・・・・」


「早く起きておねーさま、もうみんな起きたわよ」


「?」

「涙が・・・」


「ねえ?マニュアル通りでしょ?」

「みんな、そうなのよ」


「・・・・」

「・・・わからないけど」

「何か、大切なことを知っていた気が・・・」


グシュグシュ・・・


確かに脳回路の暦のカウンターは・・・

設定通り50年経過している。


「もうじき惑星チーズの周期機動に近づくわよ」


「ケイトちゃんは?」


「ああ、あの娘なら。船内レストランに居たわね」


「・・・・・」



船内レストランの入り口に来た。

ケイトが一人で窓際のカウンターに座っている。

私服を着てる彼女は、ホントに少女に見える。

伸びた赤毛の髪の毛をキレイにカットしたのね。

無料ドリンク販売機のオレンジジュースを飲んでる。

装甲強化ガラス越しに見える宇宙を無言で見つめている。


ケイトの後ろ姿って小さいのね・・・



「ケイトちゃん?」


「はっ!?」


ケイトが驚いてコッチに振り向いた。

びっくりした彼女の顔は。

涙でグチャグチャになっている・・・


即座に彼女は黙って何処かへ走り去っていった。


・・・・・


「ケイトちゃん・・・」


あの娘も女の子なのね・・・

あの歳で天涯孤独なの?

私も涙が出てきちゃった・・・


ウラシマ効果って、なんて残酷なの。




「おねーさま!」

「惑星チーズに近づいたわ、大気圏突入するわよ」


「ええ、ポセイドンお願いします」


「了解しました」



ビリビリビリ・・・


ガタガタガタガタ


船体が大気圏突入時の振動を発生する。

青く美しい星。

何かしら・・・

宇宙の旅って、赤ん坊に戻るみたいな錯覚がする。


有り得ない・・・

私には赤ん坊時代なんて無いのに。


「キャプテン、ストールしています」


「え、何で失速するの?」


「原因が判りません、南極の上空でシステムがダウンしました」

「航行不能です」


「あわわわわ」


「墜落します!」


「みんな!今すぐ固定エアベルトを装着して!」

「衝撃に備えて!!」



ゴオオオオオッ・・



強烈なGがかかる・・・誰も喋らなくなった。

これで私たちは終わりなの?


「!」


前方から光が光速で来る。

光がシップを包み込む。


パアァァァ・・・


私は意識を失った。




「う・・・」


「おねーさま!」

「起きて、おねーさま」


「シャムロッド、ここは天国なの?」


「はあ?おねーさま。まだ生きてるわよ、あたし達は」

「サクラもケイトも無事よ」


「あれは何だったの?」


「あの光のこと?」

「新造ベースからの誘導だったのよ・・・」

「ヤミに気づかれないためのね?」


「・・・はあ」




私たちは全員でマザーのもとへ向かった。



自動通路に乗ってる。



「艦長殿、マザーとは人型ではないのですか?」


「ええ、そうよケイトちゃん」

「ボディは部屋を多く占領してるけど」

「その分」

「遥かに多くの知識・技術・感性・知性・叡智を持ってる」

「まさしく大賢者ね」




「シスター・トリン、待っていましたよ」


「お久しぶりです、マザー・レイン」


「マザー・レイン、シャムロッドです。お久しぶりです」


「サクラです、お久しぶりです」


「・・・初めまして!ケイトケ・チャップマンです」

「人間です」


「はい、あなたのことは良く知っていますよ?」

「シスター・ケイト」


「・・・・」


ケイトの顔がマッカになった。


「マザー、色々話さなければならないことが・・・」


「はい」


「シスター・サクラのことが・・・」


「ええ、疑問だらけですね?」


「はい」


「まず、姓名とコードについて、ですね?」


「は、はい」


「あなたにも姓名を授けますよ?トリン」


「え、うそ!」


「私が名付け親になりましょう」

「そうですねえ・・・」

「LP300TTだから・・・」

「イニシャルはTが良いですね」

「うーん・・・」

「トリン・トーマス」


「チョットそれは・・・」


「トリン・トーバンジャン」


「そ、それもチョット・・・」


「では、トリン・トッチャンボーヤ」


「ぷっ!」「それもどうかと・・・」


「それでは・・・」


「トリン・トリニティ」


「あ、それイタダキ」

「メモメモ・・・」


「トリン・トリミィ・・・」


「え、そっち方が良いかも・・・」



私たちは、少し休養するんですって。

ボディと装備を大掛かりな改造手術を施す。

ケイトは人間だからデリケートな処置をしてくれるみたい。


まだ旅は終わらないみたいね・・・



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