冷たい、冷たい方程式
今回はゴドウィンの『冷たい方程式』というsf短編をある程度しってる前提になります。いわゆるパロディ作品です。
そこで話の筋をシンプルにまとめます【ネタバレ注意】。
少女は兄に会うために疫病が流行っている惑星に血清を届ける船に密航する。
しかし最小限の酸素と燃料しか積んでいない船は難破してしまう恐れがあった。
そこで少女(というより船長)のとった手段とは・・ラストはぜひ読んでみて欲しいです。
時はすこし未来。人類はついに宇宙進出を果たし、惑星Γのテラフォーミングも順調に進められていた。しかしまだ渡航料が安くなく子供だけでの宇宙旅行は難しい。
私は今、惑星Γにワクチンを運ぶ宇宙船に乗り込もうとしている。もちろん密航だ。愛するお兄さまに弁当をとどけるんだ。
「よし今ね」人がいない時を見計らって私は宇宙船に飛び乗った。
〈ブーブーブーブー。規定量オーバーです。船員は直ちに確認して下さい!〉
「えっ何!?どうしたの?」
私はあえなく連れだされてしまった。考えてみれば重量オーバーならエレベーターでも止まる。
Take2
今度こそ完璧だ。私はあれからダイエットに励み。20kgの減量に成功した。今回の計測員がガバガバ重量設定をしてるのも調べがついている。
「今度こそイケる!」私は宇宙船に飛び乗った。
「・・・・・・」
よし警報はならない。このまま潜入ね。
しかし数分後、船内クローリングであえなく発見されてしまった。
Take3
今度こそ完璧だ。私はあれからハッキング技術を学び、船内にトロイの木馬を仕掛けることに成功した。これで重量オーバーも問題ないわね。私は勉強のストレスでリバウンドしていた。
「今度こそイケる!」私は宇宙船に飛び乗った。
「・・・・・・」
「よし!!問題ないわね」
私の心は達成感に満たされていく。ついに宇宙船が飛び立った。
10分後
「おい、燃料のヘリが早いぞ、重量超過じゃないか?ちょっと調べるか」
船長が異変に気づき、あえなく見つかってしまった。ちょっと太りすぎたようだ。
「おい、密航者。燃料どうしてくれるんだ?」
「ええ、燃料や酸素が足りなくなって誰か降りるしかないんですか!?」
「・・・・」
「わ、わたしは死にたくありません。宇宙空間に生身で出ると破裂するっていうじゃないですか・・」
「・・・・」
「で、でもそれしか方法がないなら・・」
「何言ってるんだ小娘?誰も外に放逐するなんて言っとらんわ。それに燃料や酸素は多めに積むのが当然だろ?余裕で足りるわ」
「た、たりるんですか?」
「たりる」
「たりちゃうんですか?」
「たりちゃう。だが念のためタンカー(燃料輸送船)を呼ぶ。お前はそれに乗って帰れ」
「・・・・」
Take4
私はさいど減量をした。それに今回のウィルスは完璧だ。あらゆる検査を完全にかいくぐれるだろう。
私は宇宙船に飛び乗った。
「よし!!今度こそイケる」
30分後
「どういうこと!?誰も見つけに来ないなんて!!」
これでは惑星Γについてしまう。せっかく遺書まで用意したのにこれではカッコがつかない。
「やるしかない・・」
覚悟を決めた少女は燃料タンクに向かった。
「これで運航停止まったなしね」
彼女はタンクから燃料を抜いて宇宙空間に捨ててしまったのだ。
そこにいつもの船長が現れた。
「なんだ、おとなしくしていれば今回は連れて行ってやろうと思ってたのによ」
「どいうことよ!?」
少女は尋ねる。
「おまえの書いたプログラムよかったぜ。本来のクソ仕様からインターフェイスが段違いだ」
どうやら船長は少女の書いたウィルスプログラムをいたく気に入ったようだ。
「でもそれもおしまいよ。今回は助からないんだわ!」
少女は悲嘆した声を上げる。
「それについては色々方法があるんだが・・」
「あるの!?」
「・・助け呼ぶとか予備電源使うとか・・ここらへんならスウィングバイもできるかもしれん」
「・・・いつか死んでやるわ」
「何がおたくをそうさせるのかしらんが命を粗末にするんじゃねえよ」
3時間の船長の説教によりすっかり意気消沈した少女は家に帰った。
家では前日に惑星Γから帰ってきた兄が迎えてくれた。兄の優しい笑顔をみて少女は毒気が抜かれてしまった。
愛しのお兄様の笑顔を見ると力がふつふつと湧いてきたわ。
「今度はお兄様と二人で挑戦ね!!」
少女の無理心中が成功するかどうかは未来の安全技術にかかっている。
方程式ものはやはり難しいです。ある方に影響されて書いてみたもののしょうもない出来になってしまいました。いつかしっかりしたものがけるように習作としてあげておきます。
ちなみに宇宙空間に生身で出ても破裂はしないそうです。
つまりトータル・リコールの描写も嘘ですね。