第7話 ガナード侯爵
お久しぶりです。炬燵天秤デース! 今は『黒い砂漠』に浮気してたり。
基本的に純ファンタジー物にしたいのでステータスなどは存在しないことにする予定ですが、一応の目安として後書きに載せようかと思います。
参考程度なので見なくても全く支障が無いように本文を、頑張ります。
ではどうぞ!
■シル王国・ガナード侯爵領国境の山道。
「ネア、あれってどこの軍のやつか分かるか?」
「あれは………うん。お目当てのとこ。ガナード侯爵の所の旗」
「すぐ近くまで来ていたんだ。よかった………」
細い山道から少し外れ、ゴツコツとした岩場から見下ろしている3人の視線の先には、短い草が生えた草原に布陣している軍の駐屯地が見えていた。
「鷲と槍の紋章。間違いなくガナード侯爵領のやつだね。これでひとまずは安心かな」
服に付いた汚れを払い、汗で顔にくっついてしまった髪を除ける。体格だけでなく体力も少女相応となってしまった今では、魔力による身体強化がなくては山道を越えることは到底出来なかった。
「物々しい布陣ですね。あちらも被害を受けたのでしょうか?」
少し的を外したサーシャの予想だったが、魔王誕生の情報を伝えることが出来ないことに歯噛みする。
10年前に世界を災禍で覆い尽くした魔王襲来の教訓を経て、各国の権力者達は民衆に混乱が広がらない程度の情報統制を敷く事を決定し、契約として遵守させる事にした。
例え魔物の軍勢に襲撃された村の住人だとしてもその事を伝える事は出来無いのだ。
勿論この取り決めは明確に襲撃を伝える事が出来無いだけで、それとなく察するように仕向けられるのならば契約には反しない。言わばざる法である。
ネアはそれとなく魔物の大襲撃を示唆し、村長はそれを魔王襲来と勝手に判断した。それだけなのだ。
(国同士を縛る契約が厳しかったら、絶対に通ってなかったものだしな………。取り敢えずあの村は何とかなるかな?)
軍があそこを防衛拠点にするか村人だけ避難させるかは分からないが、流石にすぐに動くだろう。そんな事を思いながらサーシャとアレンの後をついて行った。
■ガナード侯爵軍、駐屯地。
「止まれ。何者だ!」
急造の防柵で囲まれた駐屯地の手前、櫓に挟まれた門の正面で両脇にいる警備兵に道を塞がれた。まあまともな反応か。
「俺たちは山の向こうの村から来ました。ガナード侯爵に会わせてもらえませんか?」
「馬鹿を言うな! 侯爵様は多忙でいらっしゃる。一介の旅人が面会できるような御方ではない‼︎」
アレンが面会を求めるが、当然の様に拒否される。まあ、目的も何も言っていなければそうなるよな。仕方ないのでアレンの前に進み出て身長が2倍近く差のある門番に相対する。
「連れが失礼した。私はネア。国境付近の村から使者としてまいりました。この度は侯爵の知己である神官から依頼を受けて書簡を送り届けに来た。謁見願いたい。こちらの二人はアレン、サーシャだ」
こちらがすらすらと話す事に少したじろいだのか、兵士は兜の下で気圧されたような表情を見せる。が、すぐに持ち直して背筋を伸ばした。
「では先にその手紙を預からせてもらおう。侯爵様との面会はその後にしてもらう」
「わかりました。良い返事を」
ここで賄賂の一つでもあれば良かったのだが、残念ながらレイの時に持っていた財産はシル王国の王城に置いてきてしまった。アクセサリーを除けば素寒貧だったりする。
門番の片方が手紙を持って野営地の中央へと駆けていくのを見届けていると、後ろで黙っていたサーシャがひそひそ声で話しかけてきた。
(ネアってそういう交渉術も出来たんですね)
(いやいや、偉い人を訪ねる時はこちらから名乗る事は当然だからね? あとしっかりと目的を告げる事も。一国の首領に会うには正直になった方が早い時もある………かも)
かつて非常識ばっかり見てきたので自信がない。
(勉強になります)
こそこそとお喋りしていると、割と早く兵士が戻ってきた。些か拍子抜けした様な表情で兵士はネア達を促した。
「侯爵様は快く快諾された。3人とも付いてくるといい。粗相のない様にな」
兵士の言葉に3人は顔を見合わせ、笑顔を浮かべて頷く。背を向けて黙然と歩く兵士の後ろに並んで歩いていく。
「連れのおのぼりさんみたいな態度を見れば、お前達が密偵とかではないのはよく分かるな。魔女」
無愛想な態度の兵士が話しかけてきたことを意外に思いながらネアはちらりと後ろを振り返る。野営地が珍しいのか、アレンとサーシャはキョロキョロと辺りを見回して落ち着きがない。
「まあ………二人ともほとんど村から出てなかった様だから。けど、ここの兵はよく訓練されてる。噂通りの方ね」
「そいつはどんな?」
「政治手腕はさることながら、国家の大事があれば先頭に立って立ち向かう立派な方、だったかな?」
「伝聞かよ。………あの方はただ戦いが好きなだけだよ。戦争だけじゃなくて政争から屋台の値切りまで人との闘いならどんなものでも好きなんだよ」
屋台の値切りって、侯爵様何やってんだ。フィアナから聞いた武勇伝とのギャップがあり過ぎて違和感が。
「というか、そんな主観まで話して良いの? 2人を囮にした密偵かも知れないのに?」
「そういうことを自分から言うやつはそうじゃないってやつだ。………ガナード様、使者を連れてきました!」
ぶっきらぼうに言い放ってから一つの大きな天幕の前で立ち止まる。背筋を伸ばした兵士はよく通る声で報告する。
「入れ」
少しして、天幕の奥から低く渋い声が聞こえてきた。威厳のある声というべきか、少しながら威圧感も混じっている。
「入れ。侯爵様は奥にいる」
道を開けた兵士に一礼してから羊毛の布で出来た簡易的な入り口をくぐる。
「………………」
中は魔法使いが呼び出したと思われる光精霊で明るく照らされていた。毛の深い絨毯が床に敷かれ、高級そうな執務机が鎮座している。持ってきたとすればなかなかの労力だろう。
そして、その机の上で事務作業をこなしている40代前後の男がーーー
「剣士に神官見習い、そして魔法使い。悪くない編成です。特に魔法使いは相当な修練を積んでいるかと」
「そのようだな。ーーーそれで、むさ苦しい駐屯地に何用かな? 魔女殿」
男のすぐ側に控えていた眼鏡の女騎士がこちらの戦力を分析してくる。隙のない立ち姿からして相当なやり手のようだな。
背筋を伸ばし、気を引き締める。そうでもしないととって食われそうな威圧感を目の前の侯爵は持っているのだ。
「さる依頼でここを訪れましたネアと申します。こちらの二人の名ははアレン、そしてサーシャです。シル王国国境の村に手紙を託されて訪れました」
そう言ってからサーシャに目配せし、手紙を侯爵の側付きに受け取ってもらう。手紙を検分した女騎士は頷いてから改めて侯爵本人に手渡した。
「サーシャ………、かの村の神官のご息女かな?」
「父を知っているのですか?」
差出人の名を確かめ、ナイフで封を切った侯爵が呟く。父親と旧知の仲と思われる言葉にサーシャは少し驚いたように尋ね返す。
………あれ、サーシャの父親がそんな話をしていなかったか? 案外抜けているのかもしれない。
うむ。彼とは学園での同期でな、互いの実力を競い合っていた仲だ。………立派な娘を育てたと見える」
「あ、ありがとうございます」
その強面からは似つかわしくない微笑みが漏れる。サーシャは少し戸惑いながらも嬉しそうに頭を下げた。
「それで、わざわざ侯爵領にどういった要件が有るのかね? あの村はシル王国の領地だろう?」
鋭い視線をこちらに向ける。フィアナの報告を聞いているはずなので、おそらくわざと試すようなことを言っているのだろうか。
「王都には何人かに様子を見に行きましたが、誰も帰ってきていません。村長と神官殿が判断してこの駐屯地に援軍を求めています」
だが、相手の品定めに付き合うのも面倒なので、事実をありのままに伝える。下手をうって自分がレイだと勘付かれても厄介なことになるだけだし。
「………そうか」
その気配が伝わってしまったのかガナード侯爵は少し眉を寄せる。が、特に何か言うこともなく相槌をうって配下の女騎士に目配せした。
「あい分かった。辺境の村ならばそこまで大きな襲撃はこれ以上は来ないであろう。50程度寄越せば村を守ることは可能なはず。その間に避難するか防壁を強化するかはその村の判断だ。若き冒険者よ、ご苦労だった」
「ぼう、けんしゃ………」
アレンが少し戸惑うような困惑したように呟く。その声には喜色も混じっているので感極まったと言った方が良いのかもしれないが。
(となると私は勇者パーティーから普通の冒険者に降格することになるけどね………)
別に昇格制度があるわけではないが。
「君達は冒険者ギルドには参加していないのか?」
少し意外そうな表情で侯爵は腕を組んだ。どう答えようか迷っている内にサーシャが先に答えてくれた。
「はい。私とアレンは村からほとんど出たことはありませんから」
「魔女殿も?」
「ええ。普段は森の奥で隠れ住んでいたので」
「なるほど」
当たり障りのない台詞を返す。侯爵は一つ頷き、近くにあった紙に羽ペンで何かを書き込み、封筒に入れて手渡してくる。
「これは?」
「ギルドへの紹介状だよ。別に登録するのには必要無いが何かあった時にこれを出せば何かと便利なはずだ。宿などに出せば優先的に部屋を開けてくれるかもしれないしな」
いや、侯爵の書簡とか新米冒険者には破格すぎるアイテムだろ。大抵の交渉ごとがそれ一つで済んでしまう。
「特に村に戻るよう言われていないのなら、村長達にはこちらで言っておくから是非アセリアートに来ると良い。我が領地の中で2番目に大きな都市だ。歓迎しよう」
「あ、ありがとうございます」
偉い人の書簡を貰っていたのはいつも勇者かフィアナだったので(俺とリリアナは忘れ物が多かった)少し緊張して受け取ろうとする。が、侯爵は少し茶目っ気のある表情でその手を止めた。
「その前に、私直々の書簡を渡す者の実力を測るくらいなら構わないだろう?」
「はい? ………っ⁉︎」
突然体に怖気が走り、本能のまま体を仰け反らせる。
直後、いつのまにか女騎士が抜いていた細剣が首のあった場所………の少し手前を通り過ぎる。あれならば僅かに首を掠めるだけで済んでいた………のか?
「うむ。合格だ。これならば書簡を持っていても問題ない実力だ。ネア、と言ったね?これは君が持っておくと良い」
「う、承りました………」
「ああ、後今日はもう暗くなるからこの駐屯地に泊まっていけ。宿泊用の陣幕は用意させる。明日の朝早くに出れば、昼過ぎには我が領地のアセリアートには辿り着けるはずだ」
楽しそうに笑うガナードと何事もなかったように細剣を納めた女騎士を見て、がくりと肩を落として頷いた。
(フィアナはなんでこんなやつが良いんだか………)
思わず天………天井を見上げながらヒヤヒヤした表情で見守っていた2人の元に戻っていった。
カタカナ外来語の使用に悩む。ファンタジーをぶち壊すようなそうで無いような………。
と、取り敢えず前書きで言っていたようにキャラステータスをば。
(☆がその種族と性別の成人に於いて平均ということで。★がオーバー。魔力強化などはしていない状態。
例えば★★☆ならば平均より低い能力値、☆☆★★★なら平均より高い)
ネア(レイ) 女 年齢不詳 人間
体格★★☆
体力★★☆☆
魔力☆☆★★★★★★★
知力☆☆☆★★★★★
筋力★☆☆
敏捷☆☆★★
アレン 男 15歳 人間
体格☆☆☆(平均と同じ)
体力☆☆☆☆★★
魔力☆☆★
知力☆☆☆★
筋力☆☆☆★★
敏捷☆☆☆★★★
サーシャ 女 15歳 人間
体格★★☆
体力★★★☆
魔力☆☆★★★
知力☆☆☆★★
筋力★★☆
敏捷☆☆★
この様な風にステータスは紹介します。
あくまで参考程度ですし成長しますし魔力で軽く底上げしますのであまり当てにならないと思って頂いて結構です。
では、次の話で会いましょう。
感想を頂ければ幸いです。