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戦士の俺が、魔女に転職します  作者: 炬燵天秤
第1章 魔女に転職します
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第3話 村の剣士

炬燵天秤です。話は出来上がっているのに前書き後書きが思いつかないという。


しかし! この拙作にPTを入れてくれる方がおりました! 本当にありがとうございます!


期待に添えるよう頑張っていく所存でございます。


ではどうぞ!



「あの、助けて頂いてありがとうございます。すごく、………お強いのですね」


神官服に身を包んだ少女は、薄緑の髪を靡かせて頭を下げてくる。予想以上に丁寧な仕草に少したじろいでしまうが、なんとか笑顔で頷く。


「そんなことないよ。それより怪我はない?」


「逃げているときに少し擦りむいてしまいましたけど、これくらいなら大丈夫です」


見れば、確かに少女は肘を擦りむき、僅かに血が出ていたのでポーチから水差を取り出そうとしていると、少女が止めてくる。


「あ、大丈夫ですよ。えっと………、泉の癒し手よ、我が痛みを和らげよ《治癒ヒール》」


少女が呪文を唱えると同時に腕が淡い光に包まれる。


そして光が収まると、かすり傷は跡形も無く消え去っていた。


「おー、神官だったんだ」


「まだ見習いなんですけどね。ーーー改めてお礼を言わせてもらいます。私はサーシャ。村の見習い神官をやっています」


「よろしく。私は………」


普通に名乗ろうとしてふと思い直す。このまま『レイ』という名を明かしても良いだろうか。如何せんこの名は有名すぎるのだ。


「? どうかしましたか?」


サーシャはそうに首をかしげる。長くは黙ってもいられないので素早く頭を働かせる。


(レイを女っぽい名前にするには………、ミレイ? フレイ? いっそレイから離れるか? なにか、神様の名前をもじってーーー)


「う、うん。私の名前はーーーネア。魔法使いをやってる」


「ネアさんですか。軍神ネアスタリア様の名を頂いてるのですね」


「うん、うん。親が軍人だったから」


「だった? ………すいません。気を使わずに………」


「いいよ気にしなくて。父親のことはほとんど覚えてないから」


実際は今も現役の将軍やってたりするのだが。


「それで、こんな山奥で何やってたの?」


「山奥ではないですよ? 村の近くですから。薬草を摘みに来ていたんです」


取り敢えず重くなった空気を変えるために話題を逸らす。サーシャもそれに乗ってくれて笑顔が戻った。


「そっか。なら一度その村に行ってみてもいい?」


「勿論ですよ。ーーーそれに、オークのこともお父様達に報告しないといけませんし」


少しだけ真剣な表情になって頷く。年によらず聡明な少女のようだ。


「やっぱりオークは普段ここに現れない?」


「普段どころかここにはいなかったはずです。お父様に連れられて行った辺境伯領の田舎で一度見たきりですから」


突如現れた魔物。それの意味することはーーー


真剣に考えているとキュるるる、とお腹が鳴る。そういえばお粥しか食べてなかった。


「………うん。少し急ごうか。………お腹も減っちゃったし」


「はい。美味しいパイを作りますね!」


互いに異なる笑みを浮かべ、サーシャの案内で村へと歩いていった。


■ シル王国国境、第二防衛線・本営


「ーーー報告は以上です」


シル王国に隣接する三ヶ国によって敷かれた防衛線、その第二防衛線の拠点である砦の一室でフィアナはガナード候に報告していた。


長く伸びた黒髭と彫りの深い厳つい容貌が印象的なガナードは、眉間に皺を寄せて呻くように視線を上げた。


「新しい魔王が誕生したか………。フィアナ君、三ヶ国の兵力でこの戦線を維持することは出来ないであろう。早急に援軍を要請する必要がある」


「皇国にですか?」


伏せていた顔を僅かに上げ、ガナードの表情を窺う。


「いや、ラスマールは如何せん規模が大き過ぎる。援軍の派遣にも時間がかかり過ぎてしまうだろう」


最大規模の領土を誇るラスマール皇国。領土内に聖域を多く保有し精霊魔法も盛んだ。


創造神セラフィアを信仰する教会の本拠地でもあり、象徴ともいえる大聖堂が市街に聳え立っている。


(教会は10年前の戦いから未だに回復しきれていない。皇国での特権を軒並み失っていましたね………)


強力なカリスマを誇った神官長と大司祭を失い、組織が崩壊しかけていたのだ。むしろよく瓦解しなかったと感心するところだ。


「ーーー魔法街と傭兵ギルドに依頼しようと考えている」


「ギルドと………、魔法街にですか⁉︎」


思わず声を上げてしまい、慌てて口を閉ざす。


しかしガナード候の発言はそれだけ驚くことだったのだ。そしてどちらも旧知の仲が所属している組織でもある。


「そうだ。どちらの長も堅物ではあるが………フィアナ君はどちらも面識があるはずだ。それでこの書簡を届けてもらう」


執務机から二通の書簡を取り出し、渡してくる。


「10年前に最前線で戦った二人だ。新たな魔王が襲撃してきたとなれば再び立ち上がってくれるはずだ」


確かにそうだが、魔法街の長はどうだろう? あの時は街が脅威に晒されているし、尚且つ送った人員は一人だけだったのだ。


「………善処します」


しかし命令に逆らうわけにもいかないまて、頷いて書簡を受け取った。


執務室から退出し、武骨な石造りの天井を見上げながらふと思う。


(レイ、生きてるかしら? あの小屋の近くの洞窟には主がいた筈だけど………)


まああの死に損ないなら大丈夫かと思い直し、執務室を後にした。


■ シル王国国境付近の村


既に収穫を終えた小麦畑の中心にその村はあった。村に近付くにつれ、村の門が騒がしい事に気がつく。


「なんで助けに行かせてくれねぇんだよ‼︎? このバカ親父‼︎」


「黙れ。ガキが一人行ったところで何の意味もねぇんだ」


どうやら親子喧嘩らしい。わざわざ村の門でやらなくてもと呆れるが、サーシャは少し気まずそうに顔を逸らした。


「あの親子と知り合い?」


「お恥ずかしながら………、幼馴染のアレンとその父親のダンクさんです」


「あ。サーシャ‼︎ どこ行ってたんだよお前!」


サーシャに名前を教えてもらっていると、こっちの姿に気がついた長剣を背負った金髪の少年が駆け寄ってくる。彼がきっとアレンなのだろう。


サーシャは少年の詰問にも動じず、毅然とした態度で言い返す。


「いつも通り薬草摘みよ。あなたこそ教会の勉強サボってどこ行ってたの?」


「ぐっ………っ! そ、それはその………」


痛いところを突かれたのか目を泳がせるアレン。すると、当然と言うべきか俺に視線を向けた。


「そ、そんなことより! そっちの子は誰なんだ? 絶対村の人じゃないだろ」


「この子はネアさんよ。森の中で会ったの」


「ほう。こんな辺鄙な所によく来たね。私はダンク。この馬鹿ガキの父親だよ」


「誰が馬鹿ガキだぁ‼︎」


「ダンクさんですか。私はネア、魔法使いをしております。ーーーあなたはアレンさんですよね?」


この二人では話が進みそうにないので少し強引に割って入る。オークの件もあるのでここで時間を食うわけにはいかないのだ。


「あ、ああ。そうだけど」


絶妙な割り込みに唖然としながらも頷くアレン。その様子はどこかぎこちない。


「? どうしました? ………」


口調が意識せずともと女性のそれになっていることに気づき戦慄が走る。このまま少女のままだと男だった頃の面影を忘れかねない。


「い、いやなんでもない! で、サーシャはなんでこんな遅かったんだよ⁉︎」


指摘すると可哀想な気がするので露骨な話題逸らしには誰も触れなかった。そしてサーシャは思い出したように手を叩いた。


「忘れるところだった。私はお父様の所に報告しなければいけないの。ネアさん、ついてきてくれる?」


「勿論。この村の教会はあの建物?」


円形に造られた村の中央にそこそこしっかりとした教会が建っている。サーシャはにこやかに頷いて手を引いてくる。


「あ、お、おい」


「アレンは教会の外で待ってて。時間は掛かると思うけど訓練には間に合うと思うから」


サーシャとネアはアレンの返事を待たずに少し小走りで教会へと向かった。

後書きで物語の補足説明をしたいと思います。本文と内容が被るかもしれないのであしからず。


勇者、レイ、フィアナ、リリアナあと2人のパーティーが先代の勇者パーティー。10年前の魔王軍襲撃の時に魔王を倒す活躍を見せた。


ちなみに全員存命(レイは性転換してるけど)しているので、勇者以外は物語に絡めたいなぁ。


というわけでかつての英雄たちとの絡みもお楽しみください。


それではまた今度に。


感想を頂ければ幸いです。

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