第29話 後始末
ネアが魔界に連れ去られた後、トリアスタの街がどうなったかを描写するだけ(普段の文字数より多い)。
ます、ました口調がとても多く使われています。読み難いかもしれませんのでご注意をば。
■トリアスタ、精霊樹の市街地。
「ネア、さん………?」
魔王ベクトレーメスが死に際に残した転移魔法がネアさんを呑み込み消え去った光景に、私達は暫くの間動く事が出来ませんでした。
「嘘だろ………。ネア、何処にいるんだ⁉︎」
「『影王の御手』がどうして顕れるんだぴょん………。なんでネアが………」
突然ネアさんを失った衝撃に私達はその場に座り込んでしまいました。
「馬鹿者‼︎ まだ戦いは終わっておらん! それともこの街が蹂躙されるのを黙って見ているつもりか!!」
まだ戦いの喧騒がここにまで聞こえてくる中、それを掻き消すような怒声が私達に浴びせられました。
振り返ると、ネアさんに紹介され、私の師匠となってくれた聖騎士、ゼオラントさんが私達の目の前で仁王立ちしていました。
「だけどっ、ネアが、ネアが消えちまったんだぞ‼︎ そんな時に………っ!」
15年間ずっと一緒に生きてきたアレンが、今まで見せたことのない怒気を纏ってやり場の無い怒りをゼオラントさんにぶつけてしまいましたが、それを意にも介さず師匠は鼻で笑い返しました。
「はっ、お前たちはあやつがあの程度のことで死ぬような奴だと思っているのか? それはとんでもない間違いだ。あの死に損ないの心配をするくらいなら、この世界が滅びることを心配する方がよっぽど建設的であろう」
酷い言いようですが、かつてネアさんが男の時に仲間だったという師匠は、ネアさんが死んだとは微塵にも思っていないようです。目の前で消えてしまったというのに、どうしてそこまで………
『我も保障しよう。マスターはまだ生きていると』
突然聞いたことのない声が聞こえてきました。けれど周囲には魔物の残骸以外には生きているものは見当たりません。全員が辺りを見回しますが、一体何処からーーー
「まさかスルト……なのか?」
ハッとしたようにアレンが左手に握っていた紅い長剣に話しかけました。ネアさんがスルトと呼んでいた、剣や杖に変化する不思議な武器です。
しかし、我が目(耳?)を疑うことに、それを肯定するかのように刀身が紅く輝き、低い声が聞こえてきました。
『そうだ。我が話している』
「本当か! ネアは生きているのか⁉︎」
『肯定しよう。マスターの生体反応は消えていない。気を失ってはいるが、五体満足だ』
その言葉を聞いて全身を安堵が満たすような感覚になりました。その場で崩れ落ちそうになるのはなんとか気合いで堪えます。
「よかったぴょん………」
ヴィヴィアさんも目に力が戻り、投げナイフを握り直しました。
「そうか。なら、さっさとあいつらを蹴散らしてネアを助けないとな」
師匠に詰め寄っていたアレンは一瞬だけ瞑目すると、今までの荒れていた気配からいつもの必要以上に堂々とした雰囲気に戻っていました。
「ありがとうございます。師匠」
私達の絶望的な空気を吹き飛ばしてしまった師匠に頭を下げます。やはり年の功というのには、若い私達では敵わないのかもしれません。
「なに、構わんさ。可愛い弟子の為でもあり、あやつにも借りが多く有るからな。今のうちに返しておくべきかと思ったのだよ」
師匠はそう言って笑いましたが、すぐに気を引き締めて精霊樹の方角へと向き直ります。
「急ぐぞ。フィアナが食い止めているとはいえ、どうにも数が多すぎる。内外から攻められていることを考えれば、儂らは内側の魔物達を打ち倒すべきだ」
それが一番良いのでしょう。高い防御力を誇る『牛頭人』などが力の無いトリアスタの人々や妖精族の皆さんに襲い掛かっては危険です。
装備が壊れていないか手早く確認していると、嘶き声を上げて二頭の黒馬が駆けてくるのが見えました。あの特徴的な巨体は……私達をバルクヘイムからトリアスタまで運んでくれた剛竜馬の二頭です。その逞しい前脚には原形を留めていない魔物の肉片がこびりついています。もしかしてここまで魔物を蹴散らしてやってきたのでしょうか………?
ブルゥッ!
剛竜馬の二頭は身体を振って肉片を落とし、それぞれが私達の側面で歩みを止めます。
「乗れと?」
言葉が分かるのか、剛竜馬は頷いて背中に顔を向けます。アレンやヴィヴィアさんと顔を見合わせて、頷きます。
「師匠! 先に向かっています!」
「うむ。儂もこの辺りに逃げ遅れた者がいないか確認してからそちらに向かう! やられるなよ?」
「はいっ!」
馬首を巡らして師匠に背を向け、火の手がすぐ側まで迫っている精霊樹へと走らせました。私が見たかった景色が消えていく光景に心が締め付けられるような気分になりましたが、今は一刻も早く………!
■精霊樹の根元。
ヒイィィン!
私とヴィヴィアさんの乗っている剛竜馬さんが嘶き声を上げ、民家の陰から飛び出してきたゴブリンを轢き殺しました。そう例えるのが相応しいと思えるほど、何の抵抗もなくゴブリンの肉片が飛び散っていきます。
「あと少しで防衛線に到達。………多いのはオーガとミノタウルスぴょん。アレン! ミノタウルスは任せるぴょん‼︎」
「分かった。サーシャ! フィアナさんと合流したらサハギン族に専念するように伝えてくれ」
「わかった! アレンも怪我しないでね」
トリアスタの皆さんが急造したバリケードの手前で別れ、アレンはバリケードを乗り越えようとするミノタウルスの集団へ、私達はサハギンが攻めてきていると思われる川沿いへと向かいます。
飛ぶように駆ける剛竜馬さんの手綱を握りしめ、魔物の包囲が薄い場所を探し続けましたが、何処も分厚く勢いだけで抜けられそうな場所は見つかりません。しかし、後ろでナイフを投げていたヴィヴィアさんがある一方のバリケードを指差し、
「サーシャ、一か八かであそこを突破するぴょん。強いのが暴れている分、魔物も分散しているぴょん」
そんなとんでもないことを言ってきました。どれくらいとんでもないかというと、他よりもひと回り大きなミノタウルスが、血走った目で敵味方関係なく殺し回っているとんでもない場所を指差しています。
『RAAAAaaaAAAA‼︎!』
ドワーフの構えた鋼鉄の盾を軽々と吹き飛ばし、側を抜けようとしたオーガを鉄の棍棒で粉々に叩き潰して雄叫びを上げる黒いミノタウルス。
あの光景は前にも見たことがあります。剣闘会予選でネアさんが初戦に戦った小巨人族、エラブリアートさんが使っていた『狂化』と同じものです。エラブリアートさんと違い、全く制御出来ていないようですが………
「本気ですか?」
「もちろんだぴょん。わたしとサーシャが力を合わせれば楽勝ぴょん」
ヴィヴィアさんの自信満々な声を聞いては、迷う時間も勿体無いです。オーガの集団の中を強引に駆け抜け、戦場の空白地帯となった黒いミノタウルスの目の前へと飛び出します。
『RAAAAaaaAAAA‼︎!』
剛竜馬に乗っている私達に気が付いた黒ミノタウルスは、雄叫びと共に鉄棍棒を振り下ろしてきます!
「はぁっ! 《防御壁》!!」
師匠のように盾と筋力だけで敵の攻撃を食い止めるほどの膂力は持ち合わせていません。ですが私は神官騎士です。神聖魔法の力を使い、可能な限り威力を抑えて一撃を受け止めてみせる!
ギンッ‼︎
「くっ!」
《防御壁》によって威力が若干減衰した鉄棍棒と金剛鉄製の盾が火花を散らし、両肩に重い衝撃を伝えてきます。私の足場となってくれている剛竜馬さんよりも、鐙の方が壊れてしまいそうな重みに耐えているとーーー唐突にその圧力が消えました。
『RAAAAaaaAAAA!‼︎?』
黒ミノタウルスが悲鳴にも聞こえる雄叫びを上げーーーいえ、悲鳴だったのでしょう。何故なら、鉄棍棒を握っていた腕がズズッと身体から離れて地面に落ちたのですから。
「目の前の的に気を取られすぎだぴょん」
幾本ものナイフを突き刺してミノタウルスの手首を切り落としたヴィヴィアが、舞うようにしてミノタウルスの右目を潰す。その勢いを殺さずに後頭部に切りかかりますが、それは目の痛みで暴れ回るミノタウルスの腕を避けるために失敗してしまいました。
けれど、この隙があれば!
「禍をもたらす外敵に裁きを! 《聖なる審判》!!」
開いた脇に向かって神聖魔法を付与したメイスを叩きつけます。骨が砕け散る感触とともにミノタウルスの絶叫が聞こえてきましたが、手を緩めることなく怯んだミノタウルスの頭上へと叩き落とします!
「はあああっ!」
『RAAAAaaaAAAAAAA!!⁉︎』
確かな手応えとともにミノタウルスが膝をつき、辺りに大量の血が撒き散らされます。しかし、まだ息の音が残っているようですね………
『GUAAA………』
頭を砕かれ、その醜悪な中身が溢れ出して尚、左腕に取り落とした筈の鉄棍棒を握り、片目だけで睨みつけきます。それに負けじと睨み返して、メイスを引き戻し、
「やあっ!」
『RAAAA!』
ビキィッ‼︎
振るった一撃はお互いの中心でぶつかり合い、明白な結果を生み出しました。すなわち私のメイスが黒ミノタウルスの鉄棍棒を打ち砕くという結果を。
「魔族だとしても、天界でその魂は浄化されることを願いましょう。………そうでなければ、救われませんから」
このミノタウルスは自分で『狂化』したわけではない気がします。呪い、もしくは何かに操られているような………。そんな漠然とした印象が頭の中に浮かび、盾を背負ってメイスを両手で持ち直します。
『RAAAAaaaAAAA‼︎!』
ミノタウルスの最後の突撃に合わせ、メイスを思いきり振り下ろしました。
■
オオオォォォオオオ‼︎!
暴力の嵐と化していた黒いミノタウルスが、頭部を失い、ドサリと崩れ落ちる。自らが作り上げた血だまりに身体を横たえたミノタウルスを見て、街の防衛に当たっていた兵士達が天を衝くような雄叫びを上げた。
「皆さん、私達はサハギンたちが攻めている川沿いの城門へと向かいます! この辺りの魔物の撃退は任せます!!」
「おう! 後は俺たちに任せて他の場所を助けてやってくれ。あの黒いミノタウルスさえいなければ!」
ドワーフさん達の斧槍部隊の方達が横一直線に並び、物凄い勢いで魔物達に向かって突撃していきます。暴走していたとはいえ、強力な魔族が打ち倒されたことで及び腰になった魔物達は次々と吹き飛ばされていきます。ハルバードはあのような扱い方をするのでしたっけ?
「サーシャ、そろそろ行くぴょん」
「はい。………と、あの騎士団の方達は」
馬首を巡らして防柵を一気に飛び越えると、他の部隊とは一線を画す装備を身に付けた40程の騎馬部隊がこちらに向かってきたところでした。あの騎士団には見覚えがあります。フィアナさんの故郷であるエルフの国の騎士団だった筈。
目の前で立ち止まった騎馬兵の方が兜の面頬を上げて、その格好良い顔を見せてくれます。確か隊長のファンスさんでしたか。
「君たちは姫様と一緒にここへ来た者たちだな? 先程の戦いは見ていた。トリアスタの防衛に参加してくれたこと、感謝する!!」
ああ、エルフのイケメン騎士様が私に頭を下げるなんてーーー
「サーシャ?」
「あ、いえ。なんでもありません。………これから私達はサハギンが攻めている城門に行きます。この防衛戦はお願いします」
いけません。お伽話でしか聞いたことのないエルフという種族の方が目の前にいると思うと、つい鼻血が出そうになります。憧れのエルフさんが沢山いると思うと、どうしても気持ちが高ぶってしまいます………。
「助力、感謝する! ………姫様を頼みます」
「分かりました!」
最後に小さく呟いた頼みに頷き返し、市街地を駆け抜けていきます。一時は街中まで溢れていた魔物たちもその殆どが討伐されたようで、守備隊の皆さんに任せておけば問題なさそうです。
「サーシャ! あそこにフィアナがいるぴょん!」
「いますね………って、あれ全部《魔法の矢》なんですか⁉︎」
城壁に立つフィアナさんを発見しましたが、彼女の周囲に展開された魔法陣の数に思わず驚きの声を上げてしまいました。無数の魔法陣から《魔法の矢》が撃ち出され、雨のように城壁の外へと降り注いでいきます。《殺人蜂》に襲われた時は操馬に注意を払うのに必死で見ることが出来なかったので、これが初めて見るフィアナさんの戦う姿ーーー10年前に世界を救った勇者パーティーの弓使い。百発百中の魔弾の遣い手。
「凄いぴょん………!」
「あら、そちらは終わったの? 少し待って。そろそろ終わるから」
騎乗したまま城壁へと駆け上がり、フィアナさんの元に辿り着くと、魔法を放つ手を緩めずに顔だけこちらに向けてきた。特に疲れた様子も見せない辺り、流石としか言いようがありません。
まるで地面が爆発しているかのような範囲攻撃に、魚の胴体に人間の四肢が付いた種族ーーーサハギン族達は雲霞のごとく蹴散らされています。彼らは既に敗走を始めていて、私達がここに来たのは少し遅かったようですね。………私達は要らなかったのでは?
潰走状態のサハギン族が次々と大河へと逃げ込むのを尻目に、フィアナさんは紺色の帽子を被り直します。
「それで、レイとアレンくんは?」
レイーーーネアさんのことを聞かれ、胸が苦しくなります。バルクヘイムからここまでの旅の様子からしてもかなり親しい間柄だったのはよく分かることでした。ネアさんが行方不明と聞いたらどれだけ心配するかーーー
魔王との戦いで起きた事を簡単に説明すると、フィアナさんの反応もまた素っ気ないものでした。
「行方不明………。ならレイのことだし大丈夫でしょう。呑気にドラゴン狩りをしていてもおかしくないわ」
………本当にネアさんはかつての仲間達にどの様に思われているのでしょうか?
行方不明の友人の安否を気遣っていると、鳥人族の男の兵士さんが城壁の上まで飛んできました。ひたすら飛び回っていたようで、息を切らせて暫く噎せていましたが、すぐに息を整えるとフィアナさんに向かって報告を始めます。
「伝令ーーーっ! 市街地内に入り込んだ魔物が‼︎」
「………まさか最終防衛線を突破されたの?」
フィアナさんの表情が険しいものに変わりますが、伝令に来た兵士の方はそれを否定しました。
「い、いいえ! 全滅です。魔物の軍勢は既に全滅しております‼︎」
………全滅? まだ別れてからほんの少ししか経ってないのだけど。
「………もう? 魔王によってかなりの数を送り込まれていたはずだけど………」
こちらの城壁で防衛戦の指揮兼殲滅役を担っていたフィアナさんも眉を寄せて首を傾げていましたが、何かを思いついた様に兵士さんに視線を向けます。
「………まさか、勇者でも現れたのかしら?」
勇者。魔王を倒すことの出来る人類の希望にして、ラスマール皇国だけが呼び出せる最終兵器。お父様の話では今代の勇者様は私達よりも若いという話でした。
しかしフィアナさんの推測にも兵士さんは首を振ります。
「ち、違います! 金髪の少年が剣を振るうのと同時に、一瞬で市街地にいた魔物たちを掃討しました‼︎」
金髪の少年………。それを行った者に、1人だけ心当たりが有ります。というかそんな事が出来る人が沢山いたら驚きです。
「その少年って不思議な光を放つ長剣と紅色の長剣の双剣使いじゃありませんでしたか?」
「そ、そうです。その少年が通り過ぎた後にはぺんぺん草すら残らず………」
一体あの幼馴染みは何をやってるの? 攻撃魔法はノーコンだからネアさんに禁止されていた筈なのに。
「ここの警戒は守備隊に任せて私達はそちらの様子を見に行きましょうか。………って、ヴィヴィアはどうしたの?」
「あ、あれ?」
フィアナさんの言葉に慌てて振り返ると、つい先程まで後ろに乗っていた筈のヴィヴィアさんが見当たりません。ヴィヴィアさんが気配を遮断すると本当にどこにいるのか分からなくなりますね………。
「まあ彼女なら大丈夫でしょう。ーーー無事、精霊の故郷も守れたようですしね」
城壁の内側から歓声が聞こえたので振り向くと、様々な種族が互いに健闘を讃え合う光景が見えます。精霊樹の中に隠れていた妖精さんたちも、次々と飛び出してきては癒しの光を戦士たちへと振りまいて怪我を治していました。
「………綺麗」
エルフが、ドワーフが、妖精が笑顔で歓声を上げている光景に、一瞬見惚れてしまいました。
ここを訪れた時に見た、物珍しい並みが美しいと思っていましたが、どうしてか今の光景の方が美しいものに思えます。街がボロボロになっても種族に関係なく皆が笑い合っているのがこの街で最も美しいものだったのかもしれません。
■精霊樹第4階層、宿泊所。
魔物の残党処理も終わった夜、戦の熱気も冷めやらぬうちに街全体を巻き込んだ宴が開かれました。今もエルフが弾くリュートやドワーフの叩く太鼓の音が精霊樹の部屋にまで届いてきます。
けれど私達にはまだやる事があります。今はアレン、ヴィヴィアさん、フィアナさん、そして師匠とこれからの事について話し合っています。
早速アレンが手に持っているスルトという魔剣にネアさんの居場所を辿ってもらっていたのでしたが、いきなり暗雲が立ちこめています。
「つまり、人間界にはネアの生体反応が無いというのは、別の世界に飛ばされているから。って事か?」
『然り。この人間界は3つ程の世界に繋がっているが、魔王の転移魔法で飛ばされるとなれば自ずと転移先に見当はつくだろう』
「天界に繋げられたら大事故でしょうし、妖精郷は魔王が現れる時期には出入りを厳重に管理するから………、結論は一つね」
「魔界、だぴょん………」
魔界。魔族や魔物の跋扈する地にして魔王が生まれる世界。人間界とは大きく異なる環境は、人族を大きく苦しめる。危険なものとして長らく封印されていた唯一二つの世界を繋げる境界門は、つい最近破られたとネアさんに教えてもらいました。
「魔界も人間界と同じくらい広い世界よ。10年前に入った時も全ての領地には向かう事が出来なかった。しかも今、境界門は魔王軍に占領されたままだし」
「そんな………。どうやって魔界に向かえば………」
幾らアレンやフィアナさん、師匠がいたとしても魔王軍を真正面から突破する事なんて不可能でしょう。潜入して境界門を利用しようにも、気付かれる可能性は多分にあります。
場を重い空気が満たす中、不意にアレンが持っていた紅蓮の長剣、スルトが輝きを強めていきます。それと同時に剣から魔力が溢れ出してきます。
『これは………、まさか』
「この魔力は………?」
アレンとスルトも戸惑った表情を浮かべていましたが、突然目を灼くような光を発したと同時に、剣の姿が消えて無くなりました。
代わりに残ったのは、アレンの腕に刻まれた緋色の紋章。つい先程までは無かったものです。
いきなりの事に私達は戸惑っていましたが、その紋章から声が、とても良く知っている声が聞こえてきます。
『…ア……、……レン…、…アレン、聞こえる? 私だけど』
元気そうな、綺麗で透き通るようなネアさんの声が。
スルトがどうやって困惑した表情を浮かべたのかは、作者も知りません(´・ω・`)
サーシャはおとぎ話に出て来るような種族(エルフや妖精族)やシチュエーションに遭遇すると恍惚としてしまいます。幼い頃、教会に死蔵されていた絵本が原因だったり。
アレンパーティー視点はネア視点の何話かに一話入れる予定です。サーシャ視点はとっても書き難いので。
その際にヴィヴィア視点も書きますが、アレン視点は全く書くつもりは無かったりします。