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戦士の俺が、魔女に転職します  作者: 炬燵天秤
第1章 魔女に転職します
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第24話 憩いの湖

最近都内は雨の日が多い気がします。蒸し暑いのよりは主人公達のように爽やかな場所で泳いでみたいですね。


ここ数年泳いでないですけどね(´・ω・`)



今回はちょっとしたサービス回です。

■トリアスタ、『妖精たちの泉』広場。


精霊樹の幹の真下は、精霊樹の洞から流れた水が地面の窪みに溜まったことによって大きな湖となっている。トリアスタの住民はそれを利用し、巨大な遊泳場として活用していた。


わざわざ他所から持ち運んで来た大量の砂を、遊泳場の幾つかの区画に撒いている。砂浜に見立てパラソルの刺さっている湖岸の一つで、その歓声、もとい嬌声は響いた。


「ウィア、そのびきに(、、、)似合ってる。とってもエロい‼︎」


「だからって触ろうとするなぴょん⁉︎ 変態親父みたいな笑みを浮かべるなぴょん‼︎」


銀色の長髪をリボンで一つに纏め、セパレートタイプの水着をパレオで隠して着ている人族の少女と、真っ白なウサ耳が特徴的なビキニタイプの水着を着た兎族の少女が水の上に立って(・・・・・・・)じゃれ合っていた。


「ほらほら、もっと魔力を節約しないとすぐに水の底だよ! ただでさえ少ない魔力は無駄遣いすることなんて出来ないんだから」


「こ、この!」


ぴょんぴょんと《浮水フロート》の魔法を使って自在に跳びまわるネアは、掴みかかってくるヴィヴィアを軽くいなしながら湖の深い場所へと進んでいく。それに気づかないままヴィヴィアは躓きそうになりながら追いかけていたが、使える魔力が欠乏してズブズブと沈んでいく。


「わっ! わわっ⁉︎」


「うん。今回は半刻保ったね。獣人族って魔力の扱いはそこまで上手くないことが多いけど、ウィアはかなり上手い方よ」


両腕をジタバタしているヴィヴィアを引き上げながら感心して頷く。


獣人族は狐族など一部の種族を除けば、魔力量は大して多くない。その為僅かな魔力を身体強化魔法に充てて使い切ってしまうことが常識になってしまっている。


つまり魔力を節約して他のことに使おうという試行錯誤が行われなかった=魔力の扱いが下手、が子孫にまで受け継がれてしまっている。なのでヴィヴィアのように短時間で補助魔法を扱えるようになるのは珍しかったりする。


ヴィヴィアを湖岸まで引っ張っていき、パラソルの下で一度小休憩をとる。精霊樹の実を搾って作られたジュースを飲んでいると、ヴィヴィアが心配そうに湖の奥を見つめた。


「……サーシャは大丈夫なんだろうかぴょん。ここ一週間、精霊樹の洞の中に入ったきり一度も出てきてないぴょん」


そう。サーシャは私が紹介した男の特訓の所為で、水着を着るような暇を作れなかった。まいくろびきに、を買って待ち構えていたので非常に残念だ。パーティー内で一番胸が発達しているのに。


「大丈夫よ。ゼオラントお爺様なら自分の鍛える弟子の力量くらい完璧に把握してるだろうし、あのお爺ちゃん、初めて弟子をとったみたいだしね」


勇者パーティーで最高の防御力を誇る聖騎士。元々ラスマール皇国から逃亡した勇者を連れ戻す為に派遣された騎士団団長だったのだが、逆に勇者の仲間となってありとあらゆる害悪から仲間を守る盾となった。


その守りを完全に破ったのは今までで勇者ただ一人。この俺でも破れず、あの時は悔しい思いをしたーーーあ、今からでもリベンジして来ようかな。


「ネア、やっぱここにいたのか」


ヴィヴィアの魔力が回復するまで雑談で時間を潰していると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。若干日焼けしたアレンは空気を入れた円環状の紅い袋? のようなものを片手に3つ持っている。


「アレン。ゼオラントお爺様から合格通知でも受け取りに来たの? というかそれ何?」


「合格通知って………。これは浮き輪だ。『紅袋鮫』の素材が余ったから作ってみたけど、この世界にはないのか?」


浮き輪、勇者も特に何か言っていた記憶がないし、使い道がいまいち判断しかねる。。


「それってどう使うの? クッションにするにはちょっと大きすぎるし、それならわざわざここに持ってくる必要もないだろうし………」


アレンの持っているそれは、人一人ならくぐれそうな穴が開いてる。小巨人族ならちょうど良さそうな敷物になりそうだが、人族が扱うには些か大きすぎる気がする。


「本当に浮き輪って概念がないのか………。これはだな、水の上に浮かんで寛ぐための素敵アイテムだ。これさえあれば魔法を使わなくても水上で気楽に寛げるぞ!」


「へえ、それは凄いわね。使わせてよ」


水上でも魔法を使わずにだらけて過ごせる便利なアイテム。気にならないわけがない。早速せがんで使い方を教えてもらう。といっても袋の中央にある穴に身体を潜らせ、袋の外側を掴んで抱えるだけだったが。


「とうっ!」


バッシャーン‼︎


浮水フロート》の魔法を解いて勢いよく湖の中に飛び込む。ちょっとした抵抗の後に『浮き輪』が勝手に水上へと上がっていき、身体を水上と水中の境目で留まらせた。


あまり感じたことのない不思議な感覚に思わず歓声を上げ、岸で心配そうに見つめてくるヴィヴィアも誘う。


「おー、魔法を使わなくてものんびりできる。すぐに沈むものだと思ってたけど、これ良いね。ウィアもこれ使ってみなよ」


「ほ、本当ぴょん? 突然爆発して白い液体が身体に付いたり、その袋に身体を舐めまわされながら食べられたりしないぴょん?」


流石にその発想はなかった。


びくびくとしながらも俺と同じように浮き輪を抱えたヴィヴィアは、慎重に足を水面に着け、水の中に入ってくる。


「ーー凄い! 凄いぴょん‼︎ 魔法もなしに水に浮いてるぴょん⁉︎ 一体どうなってるぴょん!」


身体が沈むことなく浮かび続けるのを確認したヴィヴィアは、凄いテンションではしゃぎながら足をバタバタさせて泳いでいる。


(アレン、よくやった‼︎)


前傾姿勢で身体を浮き輪に預けているお陰で、少女の大きな双丘が浮き輪に乗せられて強調されているのだ。まさに眼福!


「ふー、本当に良いわねこれ」


背中とほっそりとした脚を浮き輪に乗せ、仰向けの体勢でだらける。臀部の冷たい水の感触と身体に照りつける太陽の光とのギャップが心地良い。


「だろ? むしろどうして誰も思いつかなかったのか不思議なくらいだ」


不思議で仕方がないといった風に首を傾げるアレン。だがその理由は実に簡単なものだ。


「ああ。それはねーーー


おもむろにアレンの背中に掛かっていたスルトを呼び戻し、浮き輪にもたれかかったまま、後ろに向かって斬り払った。


『GYAaaaaAAAAAA!⁉︎』


「ぴょん⁉︎」


「お?」


水中から直接呑み込もうとした巨大な魚が、真っ二つに斬り裂かれながら天に向かって飛び上がっていく。


綺麗に両断された魚は、ビチビチと僅かにのたうち回りながら空中で絶命し、盛大に湖に落下した。


盛大に水飛沫と血の雨を浴びた俺は苦笑いを浮かべてアレンに言う。


「水辺で安全な場所なんて、それこそ井戸くらいしかないから。水上でくつろぐような人なんてほとんどいないのよ」


「お、おう………」


アレンは若干呆れたように頷いていた。



俺が獲った巨大魚ーーー暴食鮭は近くの漁師小屋で捌いて貰い、近所の人達にもタダで振る舞った。水路を遡り、湖まで戻ることの出来る暴食鮭は限られているらしく、貴重で美味な食材だ。今も軽く火で炙って食べているが飽きる事もなく食べられる。


アレンも懐かしそうに食べていたが、悔しそうに鮭を見つめてぶつくさと呟いている。


「あー、鮭食ってると米が食いたくなってきた。バルクヘイムの食堂で分けてもらえば良かったかな………。けど作れないんだよな………」


米。かつて勇者も旅の始めの頃から求めてたな。それほどニホンジンにとって米料理というのは心に響くのだろうか?


「米料理なら勇者に教えてもらったからある程度は作れるーーー


「本当か‼︎⁉︎」


「わっ! わわっ⁉︎」


ガバッと勢い良く肩を掴まれバランスを崩してしまう。炙り鮭を落とすまいと手を使えなかったのも拙かった。ギリギリで鮭はヴィヴィアの皿に投げて無事だったものの、自分は盛大に砂浜に転んでしまった。くっ、元の姿だったらこの程度3回転くらいしながら余裕で持ち直せたというのに、やはりあの身体は惜しまれる。


「す、すまん。ネア、大丈夫ーーーっ⁉︎」


「いてて、米料理でそんな剣幕にならないで、よ………?」


砂浜に手をついて起き上がろうとした際、アレンが突然硬直して息を呑んだ。助け起こそうとするアレンの視線が不自然に固定されてことに首を傾げ、妙に胸元が涼しいことに気づく。


「………………あ」


目線の先には、先ほどの衝撃ではだけ、大胆に素肌を晒した胸元が。あのサキュバスの趣味なのか、そこまで豊かではないそれが丸見えになってしまっていた。


「うっ、………っ⁉︎」


瞬間、羞恥のような、恥辱のようなこれまでに体感したことのない感情が顔を真っ赤に染めてしまう。上半身を晒すことなど、男だった時は幾らでもしていたはず。なのにどうしようもなく恥ずかしくなったのだ。


「わ、悪い⁉︎」


「……………うん」


アレンの謝罪に胸元を隠し、動悸を抑えながら頷く。


幸いトリアスタの住民達からは丁度見えない角度で転んだので、慌てて水着を着直して被害は最小限に済ーーー


「アレン、何してるんだぴょん」


「アレン、まさかネアさんにまでそんな事をしようとしてたの………?」


済まなかったよ! しかもサーシャはいつの間に来てたの⁉︎


まるで暗殺者アサシンのような殺気を放つヴィヴィアと、目から光の消えたサーシャ。この死地から単身逃れる事はアレンでも不可能だろう。


ジリジリと詰め寄られているアレンに密かに合掌していると、サーシャの背後から救いの声が掛かる。


「ふむ。中々生きのいい鮭だな。塩味は薄いが老体にとっては良い味だ」


これまたいつの間に現れたのか、ゼオラントが炙り鮭を皿に乗せて立っていた。訓練から直行して来たのか、背中には2つの巨大な盾を背負ったままだ。


「師匠」


ゼオラント翁のが現れた事に気がついたサーシャの瞳に光が戻った。ありがとう………、ゼオラント爺は勇者パーティーでも男女関係のもつれをとりなすほど喧嘩の仲裁が上手かった。彼曰く、「ドラゴンと相対した時よりも恐ろしい戦いだった」ようだが。


「アレン君。ガレインが呼んでいたぞ。剣がもうすぐ出来ると言っていた」


「そ、そうなんですか! では早速行ってきます‼︎」


「「行かせません(ないぴょん)」」


「あだだだだた、痛い痛い⁉︎」


ガシリと両腕を掴まれ、ギリギリギリと関節を極められていくアレン。すでにおかしな異音を立て始めているが、アレンだしきっと大丈夫だろう。


「ん? 聖剣の素材集めはもう終わったの? 結構な種類の材料が必要じゃなかった?」


確か金剛鉄アダマンティウムに妖精石、退魔の聖水はかなり遠出しなければ手に入らなかった筈だが。


「いや、なんか聖剣の素材になる材料は精霊樹の倉庫に備蓄がまだ残ってたらしくてさ。精錬用の獄炎炭と鞘にする為の『紅袋鮫』の素材を集めるだけで良かったんだよ」


なんと。金剛鉄とかは既に武具として使い切ってそうだったが、まだ残っていたのか。いや、獄炎炭とか『紅袋鮫』も滅多に手に入らないものなんだが。


「というわけで、ドワーフの頭領を待たせるわけにもいかないから行ってくるよ」


あらぬ方向に曲げられた腕で器用に手を振って市街地へと逃げていくアレン。どう見たって不審者以外の何者でもないな。


「さて、サーシャ君、一旦休憩すると良い。君なら我が秘奥の技も今日中にものにするだろう。午後はより厳しくするから一度羽根を休めると良い」


ゼオラントの休息許可にサーシャの顔がパッと明るくなる。年頃の娘だから勿論遊びたいだろうし、何よりサーシャが行ってみたかった場所だからな。


「本当ですか⁉︎ ありがとうございます! ネアさん、ヴィヴィアさん、行きましょう‼︎」


早速俺とヴィヴィアの手を引いて走り出そうとしたが、ゼオラントがそれを止める。


「ああ、待ってくれ。先にネア君と話がしたい。シル王国についての事で少し聞きたい事があるんだ」


「私に? 別に構わないけど………、先に行ってて。すぐに追いつくから」


「はい! 絶対ですよー!」


ヴィヴィアの手を引いて駆け出すサーシャを見送る。隣でゼオラント翁もニコニコと手を振っていたが、サーシャ達が人混みに消えると鋭い視線を俺に向けてきた。


「精霊樹の第2階層にある四阿なら誰かに聞かれる事は無いだろう。秘密の話にはうってつけの場所だ。来てくれるな? レイよ」


………俺がレイだってこと、まだ言ってなかったんだけどなぁ。

え? 中身は男だって?


水着がはだけて恥ずかしがる美少女が目の前にいれば、きっとそんな些細なことは気になりませんよ(キリッ



ココ数年泳イデイマセンケドネ(●ω●)





・次回予告


短い。


ちょっとしたお茶会。主人公達がいる世界の情勢を少しだけ説明する回になりそうです。

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