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戦士の俺が、魔女に転職します  作者: 炬燵天秤
第1章 魔女に転職します
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第19話 かつての仲間

ほぼ連日投稿。やったぜ。

「あら久しぶりね。リリィ」


思わぬ再開に驚いたが嬉しいことだ。リリアナと会うのは7年ぶりか? 結構な期間会っていなかった気がする。


無意識でも言葉遣いが女性のそれになっていることに再びショックを受けつつも、パーティー時代の愛称で呼びながら手を振って近づいたのだが、


「あなた、 無登録のくせに魔法街で魔法書を買うなんて喧嘩を売っているのかしら?」


しかし、俺の方は懐かしい気分に浸っていたがリリアナはそう思っていないみたいだ。少し剣呑な雰囲気を放っている。まあ規則にうるさいリリアナらしい。取り敢えず謝って誤魔化しておこう。



完全に今の自分の姿のことを忘れていなかったならば、この後の状況は悪化していなかったかもしれない。



「ごめんごめん。リリィはやっぱ堅苦しくていけないわ。もう少し頭を柔らかくーーー


直後、無詠唱で放たれた《稲妻の散雨(サンダーボルト)》を《淵源の護手(マナ・ガーディアン)》で防ぐ。久々の再開にしてはあたりが強いなぁ、と思いつつ煙が晴れるのを待つ。


「詠唱が終わるまでに私に謝罪しなさい。そうすれば無知で蒙昧な魔女でも許してもいいわ」


(………………あっ)


魔女と言われてようやく今の俺の姿を思い出す。真っ白な長髪に翠色の瞳、そして紫色のゴシックドレス。どこをどう見たってレイだとは夢にも思わないはず。俺だって思いたくない。


「リリィ、ちょっと待ってくれ。俺はーーー


「その身で思い知りなさい。《火焔地獄インフェルノ》」


まさかの先制上級魔法攻撃ですか。しかも無詠唱。流石は魔法使いの長というべきか。かなり腕を上げている。てか警告はどこいったし。


だが俺に対しては悪手でしかない。


「喰らいなさい。スルト」


『久しぶりの獲物だ。美味しく頂かせてもらおう』


石畳や石壁をドロドロに溶かすような熱量が襲い掛かってくる。しかし、翳したスルトに流れるように吸い込まれていき、一瞬で消滅した。


「上級魔法を無効化した? あなた一体………」


ここで話し合いをすれば何とかこの場は収まりそうだが、勇者パーティー同士で戦う機会など滅多にない。


自分でも分かるほど口角を吊り上げ、杖をリリアナに突きつける。


「そっちが来ないならこっちから行くよ。リリィ!」


試しに《氷弾アイスショット》を百発ほど全方位から放ってみたが、全弾リリアナに届くことなく消滅した。うん、やはり《魔力強奪マジックスナッチ》はズルい。中級魔法以下の攻撃を全て無効化にするのは強すぎる。しかもその攻撃分の魔力を盗めるんだから尚更羨ましい。


「やっぱり器用ね。なら、《炎の爆雷(ファイヤーショック)》」


「中級魔法程度じゃ私の防御を突破出来なーーーなにそれ」


ヴィヴィアと戦った時に使った炎の浮遊機雷を周囲に展開する。機雷といってもある程度は自分の意思で操作することが可能で、相手に向かって射出することも出来る。自動攻撃可能な使い捨て砲台と言った方が良いかもしれない。


「まあ、私の魔力の素質みたいだけど、これは色々とどうなのかしら?」


そう、普通の《炎の爆雷》とは異なり、火の玉のサイズが一回りどころかふた回りほど大きくなっている。今の俺と同じくらいの大きさをしている。


「ま、まあ。ーーー行きなさい!」


瞬間、業炎の雨がリリアナへと殺到する。次々とリリアナを覆う幕に激突しては散っていくが、僅かにだがリリアナの守りを突破する炎弾も現れてくる。


「くっ、魔力量だけは、一人前のようね………!」


千年近くかけて磨き上げられてきた魔法を行使した魔法使い同士の戦いだが、片方がゴリ押しすぎて少し申し訳なくなってきた。


といっても魔法自体は勝つための布石でしかないため、リリアナの足が完全に止まるまで撃ち続け、炎弾の陰に隠れて一気に距離を詰める。


「っ! 魔法剣士なの⁉︎」


「はあっ!」


迫り来る炎に対抗するために水の上級魔法を行使しようとしていたリリアナの後ろに回り込み、スルトを変化させた剣を振るう。魔法に対しては滅法強い《魔力強奪マジックスナッチ》だが、物理攻撃に対しては全くの無力だ。リリアナも物理障壁自体は展開していたみたいだが、その程度だけでは魔剣スルトを防ぐことなど到底出来ない。


後は首筋に剣当てれば話を聞いてくれるだろう。


「私の勝ちーーー


「我の連れに仇なそうとは、覚悟は出来ているか」


ギンッ! と高い音を立て、魔剣が素手で掴まれた(・・・・・・・)。まさか、ただの鉄剣程度ならば軽々と両断することが出来る程度には魔剣としての質は高い。だか目の前の男は魔力強化すらしていない素手で掴みとった。


「くっ‼︎」


魔剣の状態を解き、男の腕から抜け出させる。後ろに跳躍して疾風のように現れた男の姿を凝視する。


2メートル近い背丈だが横幅は広くないため圧迫感はそれほど無い。代わりに底知れない威圧感を放っているが。


頭に生えた黒く捩れた角に、闇すら吸い込んでしまいそうな漆黒の瞳と髪。そして左手にうっすらと見える竜鱗と鋭い爪。


『マスター、あれは竜人族ではない。警戒しろ』


「ええ、竜の化身。それも上級ランクみたいね。全く、どうして人の街に竜がいるんだか………」


スルトの警告を聞きながら思わずぼやく。レイの鍛え上げられた肉体なら兎も角、ネアである少女の体で白兵戦を挑みたくないなぁ………。ドラゴン相手にとか無謀過ぎる。


殺気を放つ竜人族の姿をした竜は、憤怒の表情を浮かべて俺のことを睨みつけてくる。ほんと怖い。


「小娘よ。我が友に剣を向けた報い、その身体で支払わせてやる」


そういえば竜って光り物の他に美女も好きだっけ。いくら美少女とはいえこんな未成熟な身体を奪おうとするとはとんだ幼女趣味ロリコンだなぁ。スルトと話が合いそうだ。


そんな現実逃避をしていたら竜人は一瞬で距離を詰めて迫ってくる。慌てて剣を翳して左手の凶爪を防ぐが、想像以上の膂力で思いっきり吹き飛ばされて住宅の壁に思いっきり叩きつけられた。


「っ! 〜〜〜痛ぅっ⁉︎」


魔力強化で軽減したとはいえ強かに叩きつけられた所為で一瞬呼吸が止まった。くそ、この少女の身体だと中身を守ってくれる筋肉がほとんどない所為でかなり痛い。既に涙目だ。


そんな俺にも容赦なく爪を振るってきた竜人から逃れるために横に転げるようにして逃れる。避けきれなかった右肩辺りのドレスが裂けてしまうがそんな事を気にしている暇はない。


鋼鉄巨兵(アイアンゴーレム)の一撃のような蹴りをスルトで何とか受け流し、右手で掴み上げようとする突進を斜め前に飛び込むようにして避ける。が、それで限界だった。


振り向いた時には既に手遅れだった。本能に従って後ろに跳躍するが、勢いのついた爪での一撃で右肩から左脇腹までを深々と切り裂かれた。


「ーーーあ」


吹き出す鮮血をどこか遠い目で見た直後、想像を絶する痛みに襲われ、視界が暗転しかける。


元戦士としての矜持からか必死に片膝立ちで持ち堪えたものの、握ったままの剣で防ぐ事も出来そうにない。仮に防御できたとしても、その上から打ち砕かれそうだが。


「終わりだ」


竜人は左腕をゆっくり上げ、振り下ろーーー



「ざけんなてめぇ‼︎!」



稲妻のように割って入った影が竜人を蹴り飛ばした。


二人目の乱入者の姿を気を失いそうな意識で見上げる。まだ出会ってから一週間程度しか経っていないはずなのに、何故か昔から見慣れた後姿のような気がした。


「アレ、ン………?」


「ネアさん⁉︎ いますぐ治癒を‼︎」


倒れ込みそうになる身体を誰かに抱えられる。声からして多分サーシャだろうか?


深い傷は血とともに溢れ出す魔力が勝手に自己治癒を始めているため、死に至りはしないと思う。サーシャとスルトの治癒魔法が効き始めているから出血も収まってきている。


「………貴様」


「動くなぴょん。お前が一歩でも動けば、この女の首を掻き切るぴょん」


ヴィヴィアの普段とは違う、氷のような声音も聞こえてくる。リリアナを害されても困った事になるが、その声を最後に俺の意識は途絶えたーーー



アレンと頭から角が生えている男性は敵意をむき出しにして互いに睨み合っていて、ヴィヴィアさんも普段のほんわかとした表情とは対照的な、氷のように冷たい表情で女性の首にナイフを当てています。


今まで感じた事のない殺気が集中している空間で、私は必死に血塗れのネアさんに治癒魔法を掛けています。気を失ったネアさんが握っている魔剣から流れてくる魔力のお陰で、いつもよりも治癒魔法が上手く身体に効いているみたい。ネアさん自身の自己治癒能力も相まって一命は取り留めたようで、けほけほっ、と咳をしてから呼吸が安定しました。


身体は角の生えた男性に向けたまま、アレンが目だけでこちらを見てきたので頷きます。生まれた時からずっと一緒にいるアレンとなら目を合わせるだけで言いたい事が伝わるのですが、偶に訳のわからない事を言って困ったりもするのですけどね。


アレンはネアさんと私を守る為に離れる事は出来ませんし、男性も女性を人質に取られて動くに動けないみたいです。


じりじりと相手に隙ができる瞬間をお互いに狙って時間が過ぎ、先程の音を聞いた人達の喧騒で辺りが騒がしくなってきました。


騎士団が駆けつけてきたのか馬蹄の音が聞こえきますが、その一瞬を狙った魔法の矢が上から飛んできました。


「ぴょん‼︎」


「くっ!」


「なにっ⁉︎」


飛んできたのは、ヴィヴィアさんと女性の間を裂くようにして刺さったものと、踏み出そうとしたアレンと男性の目の前に落ちてきた魔法の矢でした。ネアさんを庇った私の上には飛んでこなかったようです。


「アグリール、リリアナ、それにそこの君も剣を納めて。そこの少女と私は知り合いなの」


屋根の上から飛び降りてきたのは紺色の帽子を被った綺麗な黒髪の女性でした。髪の間から見える尖った耳が見えますし、絵本で出てくるようなエルフなのかもしれません。


「ネアさんと、ですか?」


「そう。だから治療の手は休めないでくれると嬉しいのだけど」


「姫、一体どういうことだ。そこの小娘は敵だろう!」


「フィアナ。その少女と面識があったの?」


アグリールと呼ばれていた男性が少し不機嫌そうに女性に問いただしています。姫やフィアナと呼ばれた女性が口を開くよりも早く、場を圧するような怒声が響きます。


「双方剣を引け‼︎ これ以上の戦闘行為はこのヴィルギード・アグニスが許さん‼︎!」


アグニス将軍の大声がその場所の雰囲気を抑え込みました。将軍はネアさんの師匠のお父様だと聞いています。この状態を助けてくれると良いのですが………


「む? フィアナにリリアナ殿まで。何故勇者パーティーの面々がレイの弟子とその仲間と戦っているのだ?」


(え?)


「「「は?」」」


辺りを見回したアグニス将軍が驚いていますが、一番驚いているのは私たちだと思います………。

最初はネアが適当に覚醒してアグリールを圧倒しても良いかと思いましたが、街が廃墟になりそうだったのでやめました。貴族街だし別に良かったかな(´・ω・`)


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