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戦士の俺が、魔女に転職します  作者: 炬燵天秤
第1章 魔女に転職します
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第1話 心体一転

炬燵天秤です。


Fate来ましたね。個人的には桜√が好きですが、凛√も面白い。特にgoodエンドが。


アニメもそうなるように期待しています!


この小説とは何の関係もありませんが。


ではどうぞ!



辺りは一面の暗闇。自身の身体の存在を認識することが出来ない。例え五感を失いかけていようと動くことを知っている鍛え上げた身体が。


(ああ、俺は死んだのかーーー)


魔王と戦い、貫き貫かれ灼き尽くし氷漬けにされーーー敗れた。


後は女神様の元に行くだけだろうか?


姫さんの安否も気にかかるが、きっと大丈夫だろう。


(レイ、あなたにはまだやらなくてはいけない事があります)


意識を閉ざしたつもりでいたが、突然の声に意識が覚醒する。


(なんだ?)


(あなたには、真なる勇者を助けて欲しいのです。その特別な力で)


(誰だか知らないけどさ、戦えって言うなら戦うさ。未練は結構残ってるからな)


(ありがとう、レイ。ではあの光を掴んでください。その先にーーー


誰かの言葉が終わらぬ内に手を伸ばし、光を握り込む。


瞬間、視界が白く染まるーーー



小鳥のさえずりが聞こえてくる。まだ頭はぼんやりと靄がかかったようにはっきりとしない。


「………………」


身体に掛かっているのは柔らかい毛布。しっかりとしたベッドで寝ているらしく、少し身動ぎしてもギシギシと不快な音を立てない。どうやらしっかりと建てられた家に居るようだ。


「目が覚めたようね?」


「………フィアナ?」


入ってきたのは勇者パーティーの弓使い、エルフのフィアナだった。ダンジョンにおける盗賊の能力は一級品、矢を放てば百発百中と天才的な技量を誇る。


「やっぱりレイだったのね………」


しかしどこか様子が変だ。何か微妙なものを見るような目つきで俺のことを見つめている。


「どうしたんだ? フィアナ………ってあれ?」


声に違和感を覚え、首を傾げる。少し声が高くなってないか? それになにか………魂を包む肉体が狭く感じるな。


「鏡、見てみる?」


手鏡を放ってくるのでキャッチしてーーーって、腕が、細くなってる………?


「え………?」


手鏡を放って両手を見つめる。鍛え上げていたはずの腕はまるで少女のように細くなってしまっている。


「………っ⁉︎」


ガタッ、と起き上がり身体全体を見渡そうとする。


高く鍛え上げられた肉体は小柄な柔肌に変わり、


手鏡を拾い上げ覗くと、映ったのはーーー美少女の、顔。


「今の状況、理解した?」


「な、な、な………」


あまりのことに口が塞がらない。まさか、まさか、


俺が美少女に………?


「なんじゃこりゃああぁぁぁぁああああ!⁉︎?」



「少しは落ち着いた?」


「ほんの少しはな………」


混乱した俺が落ち着くまで待ってからフィアナがお粥を運んでくれた。久しく食べ物を口に入れていなかったらしくキュるる、と可愛らしく腹の音が鳴ったので遠慮無くかき込んだ。


綺麗な黒髪が特徴的なフィアナは、かぶっていた紺色の帽子を膝の上に置いて興味深そうに俺のことを観察している。


「髪の色は白のまま、瞳は翠に変色。魔力が身体に影響を及ぼしてる」


「呪いの類か?」


食器を机に置き、手鏡を持ち直す。やはり美少女のままか。自分じゃなければ一目惚れしそうな可愛さだ。


「魔法の専門はリリアナだから詳しくは分からないけど、多分魔族の固有魔法だと思う。ーーーサキュバスの《性変質》」


「そういえばサキュバスいたな………」


魔王の隣にいたメイドサキュバスか。殺さないとは悪趣味なやつだな。


「そう、あの国で何が起きたの? 魔物が湧き出てくるしシル王国の王族達と連絡も取れない。あなたはそんな風になっちゃってるし」


「………まだ、情報は広まってないのか?」


「お手上げよ。私達が戦った時以来の大襲撃で周辺各国とシル王国の残存兵は防戦で手一杯。………幸い王侯会議はスムーズに進んでるんだけどね」


あの堅物ジジイどもが話し合ってるとは珍しいな。10年前の魔王襲来が効いたのか。


「っ、姫さんは無事なのか⁉︎」


ようやく思い出した。死の間際まで誰を守っていたのかを。護符の効果を確認する間も無く魔王に戦いを挑んだため結果がわからないのだ。


フィアナは俺の真剣な表情に顔を綻ばせ、安心させるように笑った。


「大丈夫よ。私達《影月》が保護したから。今はシル王国の残存部隊と一緒にカナエリアとの国境付近で待機してる」


「国境だと安全じゃない。姫さんはまだ狙われてるかもしれない」


「………どういうこと?」


流石に頭の回転が速い。深刻な事態であることを理解したフィアナは真剣な表情で身を乗り出してくる。か、顔が近いって。


「ふ、フィアナ………っ!」


「別に女の子同士なんだから驚くことないでしょ? よくある光景なんだし」


「いや、それはツッコミどころがあり過ぎなんだが。………姫さんは、魔王に狙われてる」


「詳しく説明して。悪いけどあなたのことには後回し。今は人間界の存亡の方が重要よ」


「分かってる。………腑には落ちないけどな」




暫くフィアナと情報共有に勤しむ。レイは一週間前にフィアナに助けられ、それまでずっと昏睡状態で眠っていたこと。この小屋は諜報組織《影月》の休憩所であること。魔界と人間界を繋ぐ門の封印が解かれたこと。新しい魔王とその目的。シル王国全体の状況などを話した。


「主要な街はほとんどやられたのか………」


「ええ。指揮系統の存在しないシル王国では到底持ちこたえられない。幸い民衆の避難はなんとか進んでるから被害は最小限に………


「くそっ、俺が居たっていうのに………」


まだ何か最善を尽くせたはずだった。魔界へと続く門の封印を解かれることも、エスカーテ王が殺されることもなかった。


「あなたは姫様を助け出した。お陰で希望はまだ残ったわ」


「希望………?」


俺が首をかしげると、フィアナは帽子を被り直して立ち上がる。ポーチを腰に巻いたところを見るに何処かに行くらしい。


「どこ行くんだ?」


「さっき言った王侯会議の所。今はガナード侯爵の手伝いをしてるの」


「あー、そういやお前ダンディーなお方が好きだったよなぁ。あの人は確かに渋いよな」


初老のガナード侯爵の顔を思い出してうんうんと頷くと、フィアナは顔を真っ赤にしてポーチを投げつけてきた。


「五月蝿いっ! ………それと、その口調直しといた方が良いわよ? 外見とのギャップがあり過ぎ」


「い、嫌だよ。何故好き好んで女の口調にしなくちゃいけないんだ………」


僅かに冷や汗をかきつつ、受け止めたポーチを投げ返す。が、思った以上に筋力がないらしく、ポーチはフィアナの手前で落ちそうになる。


しかしポーチは落ちることなく魔力の糸によってフィアナの手元へと吸い込まれていく。


「まだ戦えるかもしれないんだから、怪しまれないようにした方がいいかも。どんな状況かは分からないけど、レイが生きてるってことは隠しておく。行方不明ってことで」


「わかった。これを解除する目処が立つかわからないしな。それで頼む」


「ええ。………あ、着替えの服は奥の部屋に仕舞ってあるから、それを使って」


意味あり気な笑みを浮かべて部屋から出て行った。僅かな魔力反応を感じたことから、転移用の魔方陣を使ったらしい。


「嫌な予感しかしないなぁ………スルト、起きてるか?」


今までとの体格差に苦労しながらベッドから降りて、誰もいないはずの室内に声をかける。すると暫くしてから低い声が聞こえてくる。


『随分と可愛らしい姿になったな。マスター』


虚空から突然赤黒い鞘に納められた剣が現れる。己の手元に落ちてきたそれをキャッチしようとして、あまりの重さによろめいてしまう。


「お、重っ⁉︎」


『おなごになって力を失っている。魔力は変らず大量に有る。それを使え』


「く………、この身体で戦うのは厳しいんじゃないか?」


魔力を身体に注ぎ込んで神経系を強化させる。魔力消費の少ないお手軽身体強化術は、今では魔法学園の学生が最初に習うとか。


軽々丸太を持てていた己の肉体が恋しくなりつつも、剣を再び抱え直す。


「スルト、俺の身体はどうなってるんだ?」


この剣が魔人スルトを封印したものであることは、勇者パーティーの仲間にも教えていない。何事も奥の手は潜めておくものなのだ。他の仲間もなんだかんだで必殺技を隠し持っているはずだし。


『あの夢魔の魔法によって肉体を変化させられている。彼奴を倒さなければ解除されない厄介なものだ』


「面倒な呪いを掛けてくれたもんだぜ………あたっ!」


溜息をつき、歩こうとして思わず蹴躓く。想像以上に精神が覚えている体格と今の肉体との違和感が激しい。


『その様子では再び剣を振れるようになるにはかなり時間が必要だな。確かに新しき魔王の目論見はなったようだ』


「………なんか言ってたのか?」


転んだ体勢のまま転がっている剣に視線を向けると肯定するかのようにカタカタと振動する。


『然り。貴様の最後の一撃、手抜きはバレていた。魔王はそれに激怒して『貴様が女に手を出せないというなら貴様も女にしてやる‼︎』と言って従者に命令していた』


「………なるほど」


どうやらそれのお陰で生き延びたようだ。代償はこれ(性転換)だが。


「やれやれ、剣を振れるようになるまで人間界は大丈夫なんだろうかなぁ………」


焦って突っ込んでもこの体では軽く消し飛ぶだろう。新たな勇者が誕生するまでこの身体なのかと気落ちしていると、スルトが奇妙な提案をしてきた。


『ならば、魔法使いになれば良いのでは?』


「魔法使い? なんで?」


スルトの提案に思わず尋ね返す。すると剣はその形状を溶かし、赤黒い色をした杖に変化した。心なしか重さも少し軽くなった気がする。


『マスターの魔力は減っていない。それにおなごは魔力との親和性も高い。十分戦えるはずだ』


「魔法使い、魔女かぁ………」


箒に乗って空を飛ぶ姿を思い浮かべ、思わず笑ってしまう。何となく似合わない気がしていたのだが。


「あの時に人生の一区切りはついていたしな。戦士を辞めて新しく魔女でもやってみるか」


肩を軽く回して身体の感触を確かめる。まだ微妙な違和感を感じるが、動けないほどではない。


「行くぞ、スルト。お礼参りに行く」


『承知した。マスター』


扉を開ける。新しい人生を楽しむことにするか。魔法使いとして魔王討伐。丁度良い目標だ。


外に出ようとして、ふと気づく。


「………まずは服を着るか」


実に幸先が悪かった。

というわけで、主人公は美少女(元男)です。


筆者としては少女視点として書くのは大変な気もしますが、頑張ります。


拙作、よろしくお願いします。


感想を頂ければ幸いです。

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