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エピローグ

 6月29日、某県某市の中学校は朝から緊急の全校集会が開かれ

た。生徒たちは、眠いとかだるいとか口々に文句を言いながら、体

育館に集まった。教員たちの顔は皆一様に渋かった。生徒たちを迎

える体育館は、ピリピリしたムードが充満していた。

 集まった生徒たちは、無邪気で明るく、これから始まる説教の理

由は一つも了解していなかった。体育館の檀上に立った生徒指導担

当教員は、生徒たちを見下ろしながら、開口一番にこういった。

「神戸で起こった殺人事件の犯人が逮捕されました。皆さんと同じ

 中学生です」

 生徒たちの上には、ざわざわと動揺が走った。それぞれ口々に、

「知ってる?」「ニュースで見た」「お前だろ」等々、勝手なこと

をしゃべり出した。檀上の教師は静粛を求めると続けた。

「私は本当に悲しい。恐ろしい。君たちと同じ中学生が小さな男の

 子を殺すなんて本当に恐ろしい話です。君たちの中には、『キレ

 た』『ムカつく』と言って友達に暴力を振るう子たちもいます。

 第二、第三の八酒鬼薔薇聖斗がこの中にはいるのです」

 ざわめいていた体育館は、しんと静まり返った。生徒たちには、

この説示の意図はわからなかった。ただわかるのは、自分たちが八

酒鬼薔薇と同じだと断じられたことだった。

「私は君たちにいいたい。キレた、と暴力を振るう前に、そうして

 亡くなった子どもがいるということを思い出してほしい。キレる

 前に自分の行動を見つめなおしてほしい」


 大人たちはこうして子どもたちを断罪した。罪なき子どもに、さ

も罪があるかのように思わせ、濡れ衣を着せた。真実は常に一つ。

しかし彼らにとっては何が真実であるかはどうでもいいのだ。子ど

もを意のままに操るために、嘘を吐き、だまし、罪を着せる。暴力

を振るう少年たちが大人しくなればそれでいいとさえ思っていた

のだ。

 大人が嘘によって子どもを支配する、悲しみの構造がいったいい

つまで続くかはわからない。大人に騙されたと知った子どもたちは、

心に深い傷を負い、悲しみを背負って生きていかなければならない。


 僕たちは人殺しじゃない、悲痛な叫びをあげて。


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