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2話 準備

模擬店を出すクラスから続々と予算申請書が提出され、その金額をExcelに打ち込んでいく。

なぜ、こんな面倒くさいことをしているのだろうか。

というか、お金の管理を一学生に任せていいのか、学校よ。


文化祭運営委員長に就任して一週間。

先週までとは打って変わって、放課後がやけに忙しい。


「はぁー、できたー」

椅子にもたれかかった。

「お疲れ」

横で同じく作業をしていた牧島が軽く伸びをしながら声をかけてきた。


今日は二人で作業をしていた。黒崎と他の二人は部活らしい。黒崎は「後で来る」って言ってたけど、まだ来る気配がない。


待ってる余裕はない。まだ仕事は山ほどある。

「次は何するか」

どれから片付けるか考える。

「そういや、立て看板を作らないといけないんだよな」

文化祭当日に校門に立てかける、あの巨大な立て看板だ。

去年のを思い出す、凄く凝ってた気がする。


「なあ、牧島。絵って得意か?」


牧島が胸を張って言った。

「一年の選択科目で美術取ってな。評価は二!つまり壊滅的!」

五段階評価の二なので相当低い。なんでそんな誇らしげなんだよ。

天は四物までは与えなかったらしい。


「そういうお前はどうなんだ」

「自信がないから聞いたんだろう。俺も絵のセンスは壊滅的だ」


二人揃って、芸術センスゼロ。

このままだと悲惨な結果しか見えない。


そこへ黒崎が現われた。

「ごめん、遅くなっちゃって。今何やってるの?」

小走りで教室に入ってきて、息を整えながらこちらを見る。


「今、立て看板のイラストをどうするかって話をしていたんだ」

「あー、それね、作らなきゃいけないやつ」

「俺たち二人は絵の才能が壊滅的でさ。そうだ、黒崎は描けたりしないか?」

軽い気持ちで聞いたつもりだった。

が、黒崎はその言葉にピタリと動きを止めた。

次の瞬間、持っていた鞄に手を突っ込み、ゴソゴソと中を探り始める。


「え、何してるんだ?」

思わず声が漏れる。


黒崎は返事もせずに、ペンと紙を取り出した。

そして、机に置くと同時に、迷いのない手つきで何かを書き始めた。


「まさか、、、立て看板のイラスト!?」

俺と牧島は顔を見合わせる。


救世主、降臨か。


二人は、息を飲んで黒崎の手元を見つめる。

黒崎がペンを走らせる音だけが、静かな教室に響いた。

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