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10話 お楽しみ

「明日空いてますか?」

 あやせから送られてきた一行のメッセージ。

 俺はデートのお誘いかと期待してしまい、間髪入れずに返信した。

「空いてるよ」

 すぐに返信がきた。

「じゃあ、勉強教えてほしいんですけど、いいですか」

 そういえばそんな約束もしたな。

 デートじゃないのか、と少し落ち込む。

 しかし。

 デートじゃなくても、二人きりで勉強会。

 これは一気に距離を縮めるチャンスじゃないのか。

「もちろんいいとも」

「ありがとうございます。じゃあ、明日10時に学校近くのコメダでお願いします」

「了解」

 敬礼しているスタンプを送って、チャットは終了した。

 10時からか。

 勉強したって、せいぜい15時までだろう。

 そこから近くのショッピングモールに行って、デートなんて展開もありだよな。

 スマホを握りしめたまま、そんな妄想を膨らませてニヤけてしまった。

 明日のために早く寝るか。

 そう思って、22時には就寝についた。



 翌日。

 余裕を持って起床し、いつもより念入りに身支度を整えて、勉強会の場所であるコメダ珈琲へやってきた。

 スマホを見ると、あやせから連絡が入っていた。

「先に入っていますね。奥の方の席です」

 今が9時50分、連絡が来たのは9時40分。

 待ち合わせの20分前に着いていたのか。律儀な子だと感心する。


 店に入り、奥へと歩いて行く。

 一歩近づくごとに、胸の鼓動が加速していく。


 そして、顔が見えた。

「おはよ、鈴木さ、、、」

 俺は途中で声が消えた。

 あやせはいる。けれど、その横には、いつものように斎藤がいた。

「斎藤さんもいたんだね。おはよう」

 おいー、あやせ!

 なんで斎藤がいるんだ!?

 聞いてないぞ。

「あれ!?斎藤さんも来ること言ってませんでしたっけ?」

 あやせは慌ててスマホでチャットを確認し始めた。

 どうやら伝えたと勘違いしていたらしい。

「あれ、もしかして邪魔でしたか?」

 斎藤は申し分けなさそうに席を立ちかける。

「全然邪魔じゃないよ。むしろ多い方が楽しいじゃん。それに来てくれたって事は教えてほしいってことでしょ?一緒に勉強しよ」

 斎藤に非はない。

 教える側としては、一人も二人も大差ない。

 ただ、お近づきになるプランが消えたのはちょっと悲しい。

「じゃあ、気を取り直して勉強するか」

 そういって、机にテキストを広げて勉強をスタートした。

 あやせは事前に分からないところをピックアップしてきたらしい。

 科目は物理基礎。範囲は波動。

「波の式とグラフの見方が全然わからなくて、、、」

「あー、そこね。確かにこの式分かりづらいよね」

 俺は紙に波の図を書きながらできるだけ丁寧に説明した。

 二人とも真剣に聞いてくれる。

「あー、そういうことだったんですね」

 理解した瞬間の表情が、二人とも同じようにぱっと明るくなる。

 そのたびに、教えている側としてはとても嬉しい。

 そうして質問を聞いては説明しを繰り返した。

 気付けば、二人の疑問は全て解消されていた。

 全然できないと聞いていたのだが、意外にもすんなりと理解してくれた。

「俺なんかの説明でわかるなんて凄いよ」

「先輩が教え方上手なんですよ。大学行ったら塾講とかいいんじゃないですか?」

「確かにね。時給いいし」

 軽口をたたきながらも、内心ではとても誇らしかった。

 二人に頼られるのは悪い気がしない。


 期末テストは二週間後だ。

「他の科目は大丈夫なのか?よかったら教えるけど」

 あやせは数秒考えてから答えた。

「他の科目は何とか大丈夫そうです。全然分からなかったのが物理だけなので」

 斎藤の方を見ると、うんうんと頭を振ってくれた。

「じゃあ、安心だな」

 時刻は予想していたより早く14時だった。


 俺は二人より先に片付けを終え、会計をしようと席を立った。

 そのままレジへ向かい、三人分をまとめて支払ってしまう。


 それを見た二人は慌てて財布を取り出し、お金を出そうとしていた。

「あー、いいよ。僕が出しておくよ」

 あやせが申し分けなさそうにする。

「それは駄目ですよ。むしろ、私たちが先輩の分を出すべきだと思うんですが」

「ここは先輩に任せなさい。長期休暇にバイトしてたのがあるからね」

「本当に良いんですか?」

「いいって言ったろ」

 そう言って店を出ると、あやせと斎藤が深々と頭を下げた。

「本当にありがとうございます。今度お礼させてください」

 あやせが提案してくれた。

「そんなお礼なんて.....でも、してくれると嬉しいかも」

「じゃあ、今度二人でお礼しますね」

「おう、楽しみにしてるな」

 そう言って、解散した。


 一人帰り道、自転車を走らせる。

 今日一日の、あやせの顔が浮かんでくる。

 真剣に話しを聞いている時の顔。

 理解した瞬間の明るくなる顔。

 そして、

 笑ったときの顔が鮮明に思い出される。

「可愛かったな」


 家に帰った。

 さてさて、自分の勉強でもしようかと机に向かったとき、LINEが入った。

 誰だろうと画面をみると、斎藤だった。

「今日は本当にありがとうございます!先輩はアレルギーとか嫌いな食べ物とかありますか?」

 お礼で食べ物でもくれるのか。

 そんなことを思いながら返信する。

「アレルギーも嫌いなものもないよ」

 返信すると、すぐに返信が来た。

「わかりました。ありがとうございます」

 それで会話は終わった。

 どんなものをくれるのだろうな。

 そんなことを考えると、自然と口元が緩んだ。

 楽しみにしておこう。

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