0話 後悔
「私は、彼氏が出来ました!自慢したいんで話聞いてください!」
誕生日にお祝いLINEを送った。返ってきたのはそんな一文だった。
時間が止まったように感じた。
彼氏。
彼氏ができた、のか。
胸の奥がざわつき、思わず返信を凝視する。見間違いじゃない。何度読み直しても、そこにははっきりと「彼氏」と書かれていた。
頭の中が一気に真っ白になる。とりあえず、返信をしなければ、とショートした思考を必死に動かす。
「おめでとー!うんうん、聞きたい!」
これが今の自分ができるベストな返信だと思った。返信ボタンを押した瞬間、胸の奥に鋭い痛みが走る。
つらい。
おめでとう?全然嬉しくない。
話を聞きたい?そんな話聞きたくなんかない。
ショックはすぐに自己嫌悪へと姿を変えた。
こんなに辛いのは、僕が悪い。僕が呑気に告白を「次会った時」「また今度」と先延ばしにしてきたせいだ。
伝えるタイミングなんて、いくらでもあっただろう。
ご飯に行った時。
思い出の公園で散歩した時。
映画に行った時。
カラオケに行った時。
夜景を観に行った時ーー。
どうした。
どうして。
どうして。
どうして。
どうして。
たった一言、「好きだ」と言えなかったのだろう。
今、こんなに胸が痛い程好きだというのに。
もうすべてが遅い。次にどんな返信がくるのだろうか。
果たして、その返信に僕は平常心を保っていられるのだろうか。とても不安だった。
ーーだが、そんな心配は必要なかった。
返信は来なかった。
それどころか、僕のメッセージに既読すらつかなかった。
「僕は弱虫で臆病で嘘つきな男だ。だから、こんな馬鹿みたいなことになったんだ。」
誰もいないリビングでひとりごちる。
その言葉は、やけに広い部屋に吸収されていった。




