4-15「灰色の兆し」
何者かが灰色の村を再現しようとしているのか!?
王都で兆しの事件が起きた。
クレージュの対応は?
それは、夜明け前に起きた。
王都外縁部。
城壁にほど近い倉庫街。
巡回中の衛兵が、最初に異変に気づいた。
「……何だ、これ」
石畳の一角が、淡く変色している。
霜のようにも見える。
だが、冷たくはない。
触れた瞬間。
魔力が、逆流した。
「ぐっ……!」
衛兵が膝をつく。
魔力が吸われる。
奪われる。
音もなく。
静かに。
それは、灰色の村とよく似ていた。
だが今回は――
“六彩は関与していない”。
⸻
「倉庫街で魔力異常です!」
朝の報告が、クレージュの元にも届いた。
「……行きます」
迷いはない。
フレイとアーニャも同時に動く。
現場に着いた時、
既に小規模な結界が張られていた。
魔導院の初動班。
「六彩は下がれ」
到着と同時に、冷たい声。
「原因不明だ。
刺激は避けたい」
クレージュは反論しない。
代わりに、目を閉じる。
(……感じる)
これは、暴走ではない。
圧縮。
誘導。
“流れ”を歪める力。
「……六属性じゃない」
ぽつりと呟く。
「何だと?」
魔導士が振り向く。
「これ、単一属性じゃありません」
「でも六彩でもない」
クレージュはゆっくり膝をつく。
地面に触れる。
吸われる感覚。
だが、流れがある。
「……奪う魔法じゃない」
「“集めている”」
その瞬間、
灰色の部分が広がった。
衛兵が一人、倒れる。
「下がれ!」
フレイが叫ぶ。
だがクレージュは動かない。
(ここで暴発させたら)
六彩が原因にされる。
管理の理由になる。
だから。
深く息を吸う。
火も、雷も、使わない。
光も使わない。
選ぶのは――
風。
極めて弱く。
流れを読むだけの風。
灰色の中心を探る。
(……ここだ)
一点に、魔力が集約している。
誰かが“回路”を作った。
意図的だ。
クレージュは、土属性をほんのわずかに重ねる。
遮断ではない。
“逸らす”。
魔力の流れを、横へ流す。
灰色が、止まった。
「……止まった?」
魔導士が目を見開く。
クレージュは額に汗を浮かべながら、立ち上がる。
「壊してません」
「流れを変えただけです」
「根は、別にあります」
沈黙。
魔導院長が一歩前に出る。
「……六彩は使ったか?」
「いいえ」
「二属性だけです」
「最低限で」
魔導院長は、静かに息を吐く。
(制御している)
周囲の空気が変わる。
恐怖ではない。
評価。
クレージュは、倒れた衛兵のそばへ行く。
「大丈夫です。
命は吸われていません」
衛兵は、ゆっくりと目を開けた。
「……助かったのか」
「はい」
クレージュは、静かに頷く。
その様子を、
少し離れた場所から見ている人物がいた。
フランソワーズ。
そしてさらに遠く。
塔の上から見下ろす影。
エイド。
「……ほう」
エイドは小さく呟く。
「暴れないか」
「枠を壊さないか」
「力を誇示しないか」
そのすべてを、
彼はしなかった。
王都の空気が、変わる。
今度は、
六彩のせいではない。
“六彩が止めた”。
その事実が、
静かに広がり始める。
だが同時に。
管理派は焦る。
「……彼は」
軍部代表が低く言う。
「理想だけでなく、
実力も証明した」
それは、
最も厄介な存在への進化だった。
六彩は危険か。
それとも必要か。
問いは、
もう曖昧ではいられない。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。




