4-14「管理者の視界」
クレージュを中心に各々の価値観の衝突へと向かいはじめた。
彼らはその先に何を望むのか。
王都を見下ろす塔の上。
夜風が強い。
だが男は動かない。
エイドは、街の灯りを静かに見下ろしていた。
中央市場。
王城。
魔導院。
人々が眠る場所。
そして――
六彩の少年がいる場所。
「……思ったより早い」
小さく呟く。
背後に、気配。
「報告です」
黒衣の部下が膝をつく。
「王国は“協力要請”の形で取り込む方針を検討中。
王女は非公式に少年を保護。
影勢力は牽制済み」
「均衡は?」
「保たれています。
しかし、脆い」
エイドは頷く。
「当然だ」
「少年が“第三の選択”を公言した」
「それは、
管理側にも責任を生む」
部下は一瞬、迷う。
「……本当に、
彼を管理対象に指定しないのですか」
エイドは振り返らない。
「現時点ではな」
「彼は暴走していない」
「むしろ――」
一拍。
「極めて理性的だ」
部下が顔を上げる。
「ですが、灰色の村は」
「六彩の暴走ではない」
即答だった。
「あれは、
管理側の過失だ」
夜風が、強く吹く。
「我々は、
危険を排除する組織だ」
「だが」
エイドの声は低くなる。
「“可能性”まで排除する権利はない」
沈黙。
王都の灯りが揺れる。
「王女は?」
部下が問う。
エイドはわずかに口元を緩めた。
「聡明だ」
「感情に流されているようで、
立場を崩していない」
「だが」
視線を王城へ向ける。
「彼女が動けば、
少年は守られる」
「守られすぎれば、
自立を失う」
「……どちらも危険」
部下は小さく息を呑む。
「では、どうするのですか」
エイドは答えない。
代わりに、別の問いを口にする。
「彼は、
今日何をした」
「市場の火を鎮め、
市民の疑念を逸らしました」
「戦闘では致命力を使っていません」
「……そうか」
エイドは静かに目を閉じる。
(抑えている)
六属性を持ちながら。
圧を受けながら。
それでも。
「……試す」
部下が顔を上げる。
「何を」
「彼の“選択”を」
エイドはゆっくりと歩き出す。
「王国が枠を用意する」
「王女が守る」
「影が揺さぶる」
「その中で」
塔の階段へ向かいながら言う。
「彼が何を選ぶか」
一瞬、足を止める。
「もし彼が、
力を使って均衡を壊すなら」
その声は、冷たい。
「私は迷わず管理する」
だが次の言葉は、静かだった。
「だが、
もし彼が均衡を保つなら」
「……?」
「我々の役割が、
変わる」
部下は理解できず、沈黙する。
エイドは夜の中へ消えていく。
王都の均衡は、
まだ崩れていない。
だがそれは、
一人の少年の選択に
依存し始めている。
管理者は敵ではない。
だが味方でもない。
彼はただ――
世界の“保険”として立っている。
そして…
いよいよ思想を超え、
価値観の衝突へ進む。
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次回もお楽しみに。




