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4-8「第三の選択は通じるか」

クレージュはもうコソコソしない。

そう決めそして…


クレージュの取った行動はこれからどうなるのか?

王都の中央広場は、昼過ぎになると人が集まる。


商人。

冒険者。

職人。

そして、ただの市民。


特別な催しがあるわけではない。

だがこの日は、空気が少し違っていた。


理由は、はっきりしている。


「……あれが」


「六彩の……」


「噂の少年だ」


視線が、集まる。


クレージュは、それを感じながらも歩みを止めなかった。


フレイは少し後ろ。

アーニャは、いつでも動ける位置。


守られているというより、

支えられている距離だ。


(逃げないって、決めた)


それだけで、足は前に出る。


広場の中央。

簡易的な壇のような場所に立つと、

ざわめきが一段階、下がった。


誰かが叫ぶわけでもない。

誰かが止めに入るわけでもない。


皆、待っている。


「……聞こえますか」


声は、思ったよりも落ち着いていた。


「突然すみません。

王都の正式な場じゃないことも、分かっています」


視線が集まる。


「でも、

このまま黙っていると」


一瞬、言葉を切る。


「俺のことが、

“誰かの都合のいい形”で決められてしまう」


空気が、張り詰めた。


「俺は、六つの属性を使えます」


否定しない。

隠さない。


「危険だと思う人がいるのも、

当然だと思います」


「実際、

灰色の村という出来事もありました」


ざわめきが起きる。


だが、クレージュは続けた。


「でも、

俺はあれを繰り返すつもりはありません」


「だから、

管理されたいわけでも」


「放置してほしいわけでもない」


その言葉に、

一部の人間が眉をひそめる。


「……じゃあ、どうするんだ」


誰かが、問いを投げた。


クレージュは、その方向を見る。


「分かりません」


正直な答え。


「でも、

分からないままでも」


「考え続けることはできます」


「話し続けることも、できます」


拳を、軽く握る。


「もし俺が間違えそうになったら、

止めてください」


「一人で抱え込むつもりはありません」


「でも」


視線を、まっすぐ前へ。


「最初から

“危険だから縛る”

“力があるから管理する”

そう決めつけられるのは、

違うと思うんです」


沈黙。


正論ではない。

理屈としては、穴だらけだ。


だが――

人の言葉だった。


「俺は、

王国の敵になりたいわけじゃない」


「でも、

王国の道具にもなりたくない」


「だから」


深く息を吸う。


「第三の選択を、

探させてください」


その瞬間。


広場の端で、

一人の男が腕を組んだ。


魔導院の紋章。

隠さない立場。


「……理想論だ」


低い声。


「だが」


一拍、間を置く。


「完全な拒否ではない」


別の場所から、

小さな拍手が起きた。


一人。

また一人。


賛同ではない。

理解でもない。


ただ――

「聞いた」という意思表示。


クレージュは、

それで十分だった。


(通じたかどうかは、

 分からない)


(でも、

 投げなかった)


壇を降りる。


足が、少し震えているのに気づく。


アーニャが、小声で言った。


「……やっちゃったね」


「はい」


「でも」


フレイが、静かに続ける。


「逃げなかった」


クレージュは、

広場を振り返った。


人々は、もう日常に戻り始めている。


だが、

何かが確実に残った。


正論だけではない。

恐怖だけでもない。


“考え続ける余地”。


第三の選択は、

まだ形にならない。


それでも。


世界は、

少年の言葉を

一度、受け取った。

お読みいただきありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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