3-9「第三の選択」
クレージュは自身の心を決めた。
第三の選択という形で。
そしてここから仲間たちと力に向き合っていく。
エイドが去った後、森は元の静けさを取り戻していた。
だが、
空気は変わっている。
クレージュは、その場に立ったまま、しばらく動かなかった。
「……期限、
近いって言ってたな」
アーニャの声は、軽い。
だが、
冗談ではなかった。
「そうだな」
フレイが答える。
「次は、“話を聞くだけ”じゃ済まん」
クレージュは、頷いた。
「分かってます」
拳を、ゆっくりと開く。
(管理される未来)
(世界のために、自分を縛る)
(……楽だ)
責任を、預けられる。
判断を、委ねられる。
(放置される未来)
(自由だが、いつか必ず誰かが壊れる)
(……嫌だ)
どちらも、選びたくない。
「……第三の選択」
クレージュは、呟いた。
「そんな都合のいい道があると思うか?」
フレイの問い。
「そうですね……ないかもしれません」
「でも」
「作るしかない」
その言葉に、フレイは黙った。
否定もしない。
肯定もしない。
クレージュは、一歩前に出る。
「管理は、“世界の都合”です」
「放置は、“個人の都合”です」
「どちらかに寄るから、歪みが出る」
アーニャが、腕を組む。
「じゃあ、その間って何さ」
クレージュは、少し考えてから答えた。
「……共有です」
「共有?」
「力も判断も責任も」
フレイが、目を細める。
「具体的には?」
「一人で決めない」
「世界にも、自分にも」
「見える形で監視される」
アーニャが、
顔をしかめる。
「それ、管理と何が違う?」
「……縛られない」
クレージュは、即答した。
「力を奪われない」
「選択権を、渡さない」
「でも」
「暴走したら、止められる」
「俺自身を含めて」
沈黙。
「……自分を止めさせる気か」
フレイの声は、低い。
「はい」
「それが、一番怖い」
「だからこそ、必要だと思います」
クレージュは、
視線を上げる。
「管理は、外から縛る」
「放置は、何もしない」
「俺は――」
「中に立つ」
その言葉が、静かに落ちた。
フレイは、
しばらく何も言わなかった。
やがて、短く息を吐く。
「……無茶だ」
「分かってます」
「英雄気取りでもない」
「管理者になる気もない」
「……ただ」
クレージュは、
はっきりと言った。
「同じ力で、同じ結末は迎えたくない」
アーニャが、
肩をすくめる。
「面倒な役、背負うね」
「はい」
「でも」
小さく、笑う。
「一人じゃないなら、背負えます」
フレイは、その笑みを見て、
目を閉じた。
「……ああ」
「それなら」
「俺も、剣を拾う理由ができた」
クレージュは、驚いてフレイを見る。
「まだ、振らない」
「だが――置いたままにはしない」
その言葉に、
クレージュは頷いた。
空の雲が、
ゆっくり流れる。
選択は、
まだ完全ではない。
だが――
道筋は、
見え始めていた。
──管理でもない。
──放置でもない。
──その間に立つ選択を、
少年は口にした。
──それは、
世界にとって
最も面倒で、
最も危険な道だった。
お読みいただきありがとうございます。
次回は第三章最終話となります。
お楽しみに。




