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3-8「管理者と」

静かな対面。

クレージュと管理者。

二人の対話が始まった。

気配は、

 唐突だった。


 森の中。

 訓練場から少し離れた場所。


 風が止み、

 鳥の声が途切れる。


 



 


 アーニャが、

 最初に気づいた。


「……誰かいる」


 クレージュは、

 ゆっくりと目を開く。


 魔力ではない。

 敵意でもない。


 だが――意思の輪郭が、はっきりしている。


「出てきてください」


 声を張らず、淡々と告げる。


 数拍の沈黙の後、木々の間から

 一人の男が姿を現した。


 黒に近い外套。装飾は少ない。


 だが、

 隙がない。


「……さすがだ」


 男は、穏やかに言った。


「これほど静かに来ても、気づかれるとは」


 フレイが、一歩前に出る。


「名乗ったらどうだ」


 男は、フレイを一瞥し、

 クレージュに視線を戻した。


「エイドだ」


「世界側の人間だ」


 その言葉に、

 空気が張りつめる。


 クレージュは、逃げなかった。


「……管理者、ですよね」


 エイドは、小さく頷く。


「そう呼ばれることもある」


「今日は、拘束しに来たわけじゃない」


「……なら」


 クレージュは、一歩踏み出す。


「何しに来たんですか」


 エイドは、

 即答しなかった。


「確認しに来た」


「君が、どこに立つ人間かを」


 フレイの視線が、鋭くなる。


「確認だけで済む話じゃないだろ」


「六彩は――」



「分かっている」


 エイドは、遮るように言った。


「だから、敵対行動は取らない」


「今は…な」


 クレージュは、

 その言葉を逃さなかった。


「……今は?」


「ああ、そうだ」


「君の選択次第だ」


 エイドの声は、

 感情を含まない。


「管理されるか」


「それとも――管理不能と判断されるか」


 


 沈黙。


 



 クレージュは、深く息を吸う。


「……放置、という選択肢は?」


 エイドは、首を横に振った。


「それが、一番多くの犠牲を生む」


「灰色の村が、証明している」


 フレイの拳が、わずかに震えた。


「……あれは」


「誰も、悪くなかった」


 エイドは、

 静かに言う。


「だが、結果は最悪だった」


「世界は、結果で壊れる」


 クレージュは、その言葉を

 まっすぐ受け止めた。


「……俺は」


「まだ、答えを持っていません」


 エイドは、

 初めて眉を動かした。


「それは、困る」


「でも――」


 クレージュは、続ける。


「逃げるつもりも、ありません」


「管理されるか、されないか」


「その二択だけなら」


「俺は、どちらも選びません」


 


 空気が、

 一段張りつめる。


 


 エイドは、しばらく黙って

 クレージュを見つめた。


「……第三の選択を口にする者は多い」


「だが、形にできた者はいない」


「それを君には、できると?」


 クレージュは、即答しなかった。


 そして、

 視線を逸らさないまま…


「……分かりません」


「でも」


「だからこそ、考え続けます」


「一人で、決めない」


 フレイと、アーニャを見る。


「誰かと一緒に」


 エイドは、

 小さく息を吐いた。


「……興味深い」


「では、猶予をやろう」


「期限は――近いがな」


 そう言って、外套を翻す。


「次に会う時、答えを聞かせてもらう」


 


 エイドの姿は、

 森の奥へと溶けた。


 


 気配が、

 完全に消える。


 


 しばらくして、

 フレイが口を開いた。


「……ついに、やつが名乗りをあげたか」


 クレージュは、

 小さく頷く。


「はい」


「……でも」


 胸に手を当てる。


「まだ、終わってません」


 アーニャが、短く笑った。


「面倒なことになってきたね」


「……そう…ですね」


 クレージュは、空を見上げる。


 


 雲は流れ、光はある。


 だが、逃げ場はない。


 


──管理者は名乗った。


 


──だが、

 少年は屈しなかった。


 


──選択の期限は、

 刻まれ始めている。

お読みいただきありがとうございます。

第三の選択をしたクレージュ。それに猶予を与えたエイド…。

これからの二人はどこへ向かうのか。

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