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3-7「選ばない未来」

クレージュは六彩のチート能力を持ってしても、

英雄やましてや管理される者にはならないと言う。

そしてその想いはこれから接触するであろう回収者にどう映るのか…

朝の訓練場は、

 静かだった。


 


 森を抜けた先、

 簡易的に整えられた空き地。


 


 剣を振る者もいない。

 魔法を放つ者もいない。


 


 クレージュは、

 ただ立っていた。


 


 目を閉じ、

 呼吸を整える。


(……できる)


 火も。

 水も。

 風も。

 土も。

 光も。

 闇も。


 どれも、

 今なら迷わず引き出せる。


 世界が、

 手の中にある感覚。


 だが――クレージュは、

 何もしなかった。


「……やらないのか」


 背後から、フレイの声。


「はい」


短く答える。


「今日は、やりません」


 フレイは、

 それ以上聞かなかった。


 代わりに、少し距離を取って

 腰を下ろす。


「……理由は?」


 少し間を置いて、クレージュは答えた。


「分かるからです」


「力を出したら、楽になる」


「安心できる」


「……でも」


 拳を、ゆっくり開く。


「それは、選んだことにはならない」


 フレイの視線が、鋭くなる。


「……ほう」


「力があるから、使う」


「危ないから、抑える」


「管理されるから、従う」


 クレージュは、

 一つずつ言葉を置く。


「全部、正しいと思います」


「でも――」


「それは、“誰かの正解”です」


 風が、

 訓練場を抜ける。


「俺は、まだ」


「自分の正解を知らないんです」


 フレイは、

 小さく笑った。


「……だから、今日は振らない」


「今日は、考える…と」


 クレージュは、

 頷く。


「はい」


 


 沈黙が、

 場を包む。


 


 だが、

 居心地は悪くない。


 


 しばらくして、

 フレイが口を開いた。


「……もし」


「本当に、どうしようもなくなったら」


「どうする?」


 クレージュは、

 すぐには答えなかった。


 少し考えてから、口を開く。


「……誰かに、聞きます」


「一人で、決めません」


 フレイは、

 目を細める。


「……それが、お前の選ばなかった未来か」


「はい」


「一人で全部背負う未来」


「英雄になる未来」


「……管理される未来も」


「管理する未来も」


 クレージュは、

 静かに首を振った。


「どれも、今は選びません」


 その言葉に、

 フレイは何も言わなかった。


 そして、立ち上がる。


「……十分だ」


「今日は、それでいいだろう」


 クレージュは、

 空を見上げた。


 


 雲は薄く、

 光が差している。


(……使わない、という選択)


 それもまた、選択だ。


 


 遠くで、

 枝が折れる音。


 誰かが、

 近づいている。


 まだ、

 姿は見えない。


 だが――

 クレージュは感じていた。


(……来る)


 管理でも、放置でもない。


 その中間に立つための

 問いが。


 


──六属性の力は、

 未来をいくつも示す。


 


──だが少年は、

 その多くを選ばなかった。


 


──選ばなかったことこそが、

 彼の意志だった。

次回は管理者と直接対話となります。

お互いがお互いを理解できるのか!?

お楽しみに。

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