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2-20「境界線」

第二章、最終話です。

クレージュはどんな決断をするのか?

夜明け前の空は、

 薄い群青色に染まっていた。


 ルーン塔の屋上。


 冷たい風が、

 石の縁をなぞる。


 クレージュは、

 手すりに寄りかかり、

 街を見下ろしていた。


 眠れなかった。


(……ここが、境界なんだ)


 隠れるか。

 管理されるか。

 それとも――自分で立つか。


 足音が、

 背後から近づく。


「……早いな」


 ミレイアだった。


「眠れませんでした」


 正直に答える。


「だろうな」


 彼女は、クレージュの隣に立った。


 しばらく、

 言葉はなかった。


「……結論は出たか」


 ミレイアが、静かに問う。


 クレージュは、

 ゆっくりと頷いた。


「はい」


「六彩を、隠しません」


「管理される前提で、生きることもしません」


「でも――」


「力を誇るつもりも、振り回すつもりもない」


 言葉を選び、続ける。


「制御を学び続けます」


「失敗も、恐れも、全部含めて」


「俺の人生として」


 ミレイアは、

 空を見つめたまま言った。


「……危険な線を選んだな」


「分かってます」


「それでも――ここで引いたら」


「俺は、ずっと逃げ続けることになってしまう」


「それは、生きてるって言えません」


 



 


 沈黙。


 



 


 やがて、

 ミレイアは小さく息を吐いた。


「……なら」


「しばらく、私も同行しよう」


 クレージュが、目を見開く。


「え……?」


「正式な護衛でも、弟子でもない」


「だが――」


「制御の研究は、現場でしか進まない」


「君は、最高の“未完成例”だ」


 クレージュは、

 思わず笑った。


「……褒められてます?」


「研究者的にはな」


 



 


 その時。


 屋上の扉が、

 きぃ、と音を立てて開いた。


「……話、終わった?」


 アーニャだった。


「ええ」


 クレージュは、振り返る。


「アーニャ」


「俺、この先も進む」


「危ない道だけど」


 アーニャは、即答しなかった。


 代わりに、腰の短剣を確認し、

 一歩前に出る。


「……今さらでしょ」


「逃げるなら、とっくに逃げてるだろ?」


 そして、

 はっきりと言った。


「私は、仲間として一緒に行く」


「守るとか、守られるとかじゃない」


「隣に立つ」


 クレージュは、胸の奥が、

 じんわりと温かくなるのを感じた。


「……ありがとうございます」


「礼は、生き延びてからだ」


 三人は、

 並んで街を見下ろす。


 空が、ゆっくりと明るくなっていく。


 



 


 その頃。


 街道の向こう、丘の上。


 一人の男が、

 夜明けを迎えていた。


 エイド=クロウフォード。


 彼は、ルーン塔を見据え、

 低く呟く。


「……境界線を、越えたか」


 


 管理か、

 放置か。


 そのどちらでもない選択。


「……厄介だ」


 だが、

 彼の瞳にあったのは、

 嫌悪ではなかった。


「しかし――」


「見届ける価値は、ある」


 



 


 風が、

 丘を吹き抜ける。


 ルーン塔の屋上で、

 クレージュは一歩踏み出した。


 ここから先は、

 誰も正解を知らない。


 だが――

 選ばなければ、

 進めない。


 


──六彩の少年は、

 境界線に立ち、

 自分の道を選んだ。


 


──それは、

 世界にとって危険で、

 同時に――

 希望でもある。

お読みいただきありがとうございます。

次回は第三章の前に幕間となります。

是非、お読みください。

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