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2-19「観測の終わり」

鐘の音は、

 思ったよりも早く止んだ。


 ルーン塔の中庭に、

 奇妙な静けさが戻る。


 ざわめきも、

 慌ただしさもない。


 ――それが、

 逆に不気味だった。


 



 


「……街が、

 落ち着きすぎてる」


 アーニャが、低く言う。


「警戒が解除されたわけじゃない」


 ミレイアは、空を見上げながら答えた。


「むしろ――次の段階に移った」


 クレージュは、

 無意識に拳を握る。


「……観測が、終わった?」


「そうだ」


 ミレイアは、はっきりと言った。


「回収者は、もう“調べ終えた”」


「君が何者か」


「どこまでできるか」


「どれだけ危険か」


 その一つ一つが、

 胸に落ちてくる。


「……結果は?」


 アーニャの問いに、ミレイアは一瞬だけ間を置いた。


 「……“未確定”だ」


「だが」


「未確定という判断は、最も厄介だ」


 クレージュは、

 小さく息を吐いた。


「……次は、どうなるんですか」


「選別だ」


 即答だった。


「放置するか」


「管理するか」


「――排除するか…だ」


 最後の言葉が、

 空気を切る。


 アーニャが、一歩前に出た。


「……排除?」


「可能性の話だ」


 ミレイアは、

 落ち着いたままだ。


「管理できないと判断されれば、そうなる」


「それが、彼らの“最終手段”だ」


 クレージュは、視線を落とす。


 (……俺は、まだ未完成だ)


 (制御も、選択も)


 (それでも……)


 拳を、ぎゅっと握る。


(それを理由に、消されるのは……)


 納得できなかった。


 



 


 その時。


 



 


 塔の入口で、

 別の研究員が駆けてきた。


「ミレイア様!」


「……何だ」


「外縁部の結界に、正式な通告が」


 ミレイアの表情が、わずかに引き締まる。


「……来たか」


 研究員は、小さな魔導板を差し出した。


 そこには、簡潔な文言が刻まれている。


『観測段階、終了』


『対象は、引き続き注視下に置く』


『次回接触時、最終判断を下す』


 アーニャが、歯を食いしばる。


「……次、会ったら終わりってこと?」


 


「いや、違う」


 ミレイアは、

 板を閉じながら言った。


「次は、逃げられない。ということだ」


 



 


 沈黙。


 



 


 クレージュは、

 空を見上げた。


 雲ひとつない、青。


「……俺」


 小さく、

 だがはっきりと言う。


「隠れるつもりはありません」


「制御も、学び続けます」


「でも――」


 視線を戻す。


「管理される前提で、生きるつもりはありません」


 ミレイアは、その言葉を聞き、

 わずかに目を細めた。


「……覚悟は、できているようだな」


「ええ、まぁ…」


クレージュは苦笑いをしながらそう答えた。が…


その答えに、迷いはなかった。


 遠くで、風が鳴る。


 



 


 同じ頃。


 街の外れの高台。


 一人の男が、街を見下ろしていた。


 


 黒衣の無駄のない佇まい。


 「……観測は、終わった」


 エイド=クロウフォードは、

 低く呟く。


「次は――」


 彼の視線が、ルーン塔へ向く。


「判断の番だ」


 風が、

 彼の外套を揺らした。


 


──観測は終わった。

──静寂は、嵐の前触れだ。


 


 六彩の少年は、

 もう“試される存在”ではない。


 


 これからは――

 選ばれる存在になる。

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