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2-16「管理という正義」

回収者たちの会議。

もちろん六彩のことについてであり、そして、それは

クレージュのことを指す。

回収者たちの正義とは。

会議室は、静まり返っていた。


 円形の卓。

 無駄のない石造りの空間。

 装飾は一切ない。


 ここでは、

 感情は不要だった。


 



 


「……報告を」


 低い声が響く。


 黒衣の男が、

 一歩前に出た。


「対象――六彩」


「制御を開始しています」


 わずかなざわめき。


「……成功例か?」


「部分的に、です」


 男は、

 淡々と続ける。


「単一属性を選択し、暴走を回避」


「未完成ながら、意思による制御を確認」


 



 


 沈黙。


 





「……前例は?」


「ありません」


 会議室の空気が、

 一段重くなる。


 奥の席で、腕を組んでいた男が、ゆっくりと口を開いた。


「――だからこそ、危険だ」


 エイド=クロウフォード。


 回収者を束ねる男。


「成功例がないという事実は、希望ではない」


「警告だ」


 彼の声は、冷静だった。


「六彩は、例外を許さない力だ」


「一度でも“制御できた”と思わせれば――」


「人は、必ず慢心する」


 別の男が、

 反論する。


「しかし――」


「対象は、力を恐れている」


「過去の六彩とは、行動原理が違う」


 エイドは、

 ゆっくりと視線を向けた。


「……恐れは、いつか薄れる」


「だが、力は残る」


 静かな断言。


「我々は、何度も見てきた」


「最初は皆、善人だった」


 エイドの脳裏に、

 過去がよぎる。


 泣き叫ぶ街。

 崩れ落ちる城壁。

 魔力に焼かれた大地。


「……灰色の村」


 誰かが、小さく呟いた。


 エイドは、

 否定しなかった。


「あの村は、救えたはずだった」


「六彩が、“正しく使われていれば”」


「だが――」


「正しく使える人間は、存在しなかった」


 



 


 沈黙。


 



 


 エイドは、

 ゆっくりと立ち上がる。


「だから、我々は管理する」


「殺さない」


「奪わない」


「ただ――」


「世界から隔離する」


「それが、最も犠牲が少ない」


 



 


 一人が、

 問いかける。


「……もし、本当に制御できるのなら?」


 エイドは、

 一瞬だけ目を伏せ――

 そして答えた。


「その時は、私が判断する」


「個人の感情ではなく」


「世界の存続として」


 その言葉に、

 反論はなかった。


 



 


 会議は、

 終わりに近づく。


「当面は、観測継続」


「だが――」


 エイドは、

 最後に告げる。


「一線を越えた瞬間、回収に移る」


 誰も、

 異議を唱えなかった。


 



 


 会議室を出た後。


 エイドは、一人で廊下を歩く。


(……フレイ)


 かつての仲間。

 剣を捨てた男。


(また、同じ選択を迫ることになるか)


 だが――

 彼は立ち止まらない。


 正義とは、迷わないことだ。


 少なくとも――

 彼は、そう信じていた。


 


──回収者は、

 世界を守るために存在する。


 


──それが、

 正しいかどうかは、

 誰にも分からない。


 


 だが――

 選ばなかった未来より、

 犠牲は少ない。

お読みいただきありがとうございます。

制御を覚えようとするクレージュに対し、回収者たちはどう判断していくのか…

この先、それぞれの正義がぶつかる。

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