2-16「管理という正義」
回収者たちの会議。
もちろん六彩のことについてであり、そして、それは
クレージュのことを指す。
回収者たちの正義とは。
会議室は、静まり返っていた。
円形の卓。
無駄のない石造りの空間。
装飾は一切ない。
ここでは、
感情は不要だった。
◆
「……報告を」
低い声が響く。
黒衣の男が、
一歩前に出た。
「対象――六彩」
「制御を開始しています」
わずかなざわめき。
「……成功例か?」
「部分的に、です」
男は、
淡々と続ける。
「単一属性を選択し、暴走を回避」
「未完成ながら、意思による制御を確認」
◆
沈黙。
◆
「……前例は?」
「ありません」
会議室の空気が、
一段重くなる。
奥の席で、腕を組んでいた男が、ゆっくりと口を開いた。
「――だからこそ、危険だ」
エイド=クロウフォード。
回収者を束ねる男。
「成功例がないという事実は、希望ではない」
「警告だ」
彼の声は、冷静だった。
「六彩は、例外を許さない力だ」
「一度でも“制御できた”と思わせれば――」
「人は、必ず慢心する」
別の男が、
反論する。
「しかし――」
「対象は、力を恐れている」
「過去の六彩とは、行動原理が違う」
エイドは、
ゆっくりと視線を向けた。
「……恐れは、いつか薄れる」
「だが、力は残る」
静かな断言。
「我々は、何度も見てきた」
「最初は皆、善人だった」
エイドの脳裏に、
過去がよぎる。
泣き叫ぶ街。
崩れ落ちる城壁。
魔力に焼かれた大地。
「……灰色の村」
誰かが、小さく呟いた。
エイドは、
否定しなかった。
「あの村は、救えたはずだった」
「六彩が、“正しく使われていれば”」
「だが――」
「正しく使える人間は、存在しなかった」
◆
沈黙。
◆
エイドは、
ゆっくりと立ち上がる。
「だから、我々は管理する」
「殺さない」
「奪わない」
「ただ――」
「世界から隔離する」
「それが、最も犠牲が少ない」
◆
一人が、
問いかける。
「……もし、本当に制御できるのなら?」
エイドは、
一瞬だけ目を伏せ――
そして答えた。
「その時は、私が判断する」
「個人の感情ではなく」
「世界の存続として」
その言葉に、
反論はなかった。
◆
会議は、
終わりに近づく。
「当面は、観測継続」
「だが――」
エイドは、
最後に告げる。
「一線を越えた瞬間、回収に移る」
誰も、
異議を唱えなかった。
◆
会議室を出た後。
エイドは、一人で廊下を歩く。
(……フレイ)
かつての仲間。
剣を捨てた男。
(また、同じ選択を迫ることになるか)
だが――
彼は立ち止まらない。
正義とは、迷わないことだ。
少なくとも――
彼は、そう信じていた。
──回収者は、
世界を守るために存在する。
──それが、
正しいかどうかは、
誰にも分からない。
だが――
選ばなかった未来より、
犠牲は少ない。
お読みいただきありがとうございます。
制御を覚えようとするクレージュに対し、回収者たちはどう判断していくのか…
この先、それぞれの正義がぶつかる。




