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2-14「制御の代償」

制御の訓練の後、クレージュは体を壊した。

それは「代償」だと聞かされる。

そして、アーニャはそんなクレージュを見て…

異変に気づいたのは、

 昼を少し過ぎた頃だった。


「……寒い」


 クレージュは、

 毛布にくるまりながら呟いた。


 額は熱い。

 だが、指先は冷たい。


 呼吸は浅く、胸の奥が、ひりつくように痛む。


「……やっぱり来たか」


 ベッドの脇で、

 ミレイアが静かに言った。


「来た……って?」


 声を出すだけで、喉が焼ける。


「反動だ」


 アーニャは、

 濡らした布を絞り、クレージュの額に乗せた。


「……無茶しすぎ」


「……成功、したのに……」


 弱々しい声。


「成功したからだ」


 ミレイアは、

 腕を組み、壁にもたれる。


「六彩は、“混ざる力”だ」


「それを無理やり一つに絞った」


「君の体と精神が、追いついていない」


 



 


 クレージュは、

 天井を見つめた。


(……やっぱり、

 簡単じゃない)


「……俺、間違ってますか」


 



 


 一瞬、

 室内が静まり返る。


 



 


「間違ってはいない」

ミレイアは、即答した。


「だが――代償は、必ず発生する」


「制御とは、安全装置じゃない」


「選択の精度を上げる行為だ」


 



 


 アーニャが、低く言った。


「……つまり?」


「迷わなくなった分、消耗が増える」


「今までは、六彩が勝手に逃げ道を作っていた」


「今は、君が責任を持って選んでいる」


 



 


 クレージュは、

 小さく笑った。


「……それって、大人になるみたいですね」


「そうだな。似ているかもしれない」


ミレイアは、否定しなかった。


「そして――大人になる過程は、

大抵、辛い」


アーニャが、黙って水を差し出した。


 クレージュは、それにゆっくりと口をつけた。


「……それでも」


「……僕は続けます。やめません」


 その言葉は、弱々しいが、

 揺れていなかった。


「……壊すより、ずっとマシです」


 



 


 ミレイアは、

 しばらく彼を見つめ――

 小さく息を吐いた。


「……やはり、君は厄介だ」


 


「歴代の六彩は、力を恐れなかった」


「あるいは、恐怖を力で塗り潰した」


「だが君は――」


「恐れたまま、前に進もうとしている」


 



 


 その夜。


 クレージュは、

 高熱にうなされながら、

 夢を見た。


 



 


 見知らぬ荒野。


 


 崩れた街。

 焦げた大地。


 そこに立つ、

 少年とも青年ともつかない影。


 六つの光が、体から溢れている。


 

「……やめろ……」


 影は、

 誰かに向かって叫んでいた。


 だが、

 声は届かない。


 次の瞬間。


 光が暴走し、世界が白く染まる。


 



 


 クレージュは、

 飛び起きた。


「……っ、はぁ……」


 汗だくの体。

 荒い呼吸。


 アーニャが、すぐそばにいた。


「……恐ろしい夢でも見たのか?」


 クレージュは、

 小さく頷いた。


「……俺、ああなりたくない」


 アーニャは、少しだけ黙り――

 そして、静かに言った。


「……なら、一人で抱えるな」


 


「選択するなら、一緒に考えてやる」


「それが、仲間でしょ?」


 クレージュは、

 目を閉じた。


「……ありがとうございます」


 その言葉に、

 返事はなかった。


 だが――

 アーニャは、静かに目を瞑っているだけであった。


 



 


──制御には、代償がある。

──選択には、責任が伴う。


 


 それでも――

 六彩の少年は、

 選ぶことをやめなかった。

お読みいただきありがとうございます。

クレージュとアーニャの距離が少し縮んだみたいです。

これからの冒険にもプラスになるでしょう。

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