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2-12「混ざる力」

力の制御に向かって取り組み始めたクレージュ。

「制御」について改めて教えられ、そして…

ルーン塔の内部は、

 外観から想像していたよりも広かった。


 石造りの通路。

 壁一面に刻まれた無数の魔法陣。

 淡く光るルーン文字が、静かに脈打っている。


 


「……全部、

 稼働してるんですか」


 


 クレージュが、

 思わず尋ねた。


 

 「一部だけ…かな」


 ミレイアは、

 歩きながら淡々と答える。


「常時動かしていたら、街が吹き飛ぶ」


 

「……え」


「冗談ではないぞ」


ミレニアがニコニコした顔で答えた。


 

 アーニャが、

 小さく肩をすくめ


「やっぱり、

 優しくない街」


と、ポツリと言った。


 



 


 三人は、

 塔の中層にある広間へ入った。


 円形の床。

 中央に、

 透明な結晶柱が立っている。


 


「魔力観測用の触媒だ」


 ミレイアが説明する。


 


「一応無害…ではある。

 暴走させなければ、だが」


 



 


 クレージュは、

 一瞬だけ息を呑んだ。


 


「……やらなきゃ、

 ダメですか」


 

「ここまで来て、

 今さら?」


 ミレイアは、

 振り返らずに言う。


 



 


 クレージュは、

 ゆっくりと結晶柱の前に立った。


 



 


「……何をすれば」


「何もしなくていい」


 ミレイアは、

 はっきりとした声で言った。


「使おうとするな」


 

「え?」


 

「六彩は、君の意思で発動していない」


「発動“してしまっている”んだ」


 



 


 クレージュの眉が、

 わずかに動く。


「……だから、制御できない…」


 



 


 ミレイアは、

 結晶柱に手をかざす。


「まずは、どう混ざっているかを知っていこう」


 



 


 次の瞬間。


 結晶柱が、

 淡く光った。


 そして、


 火の赤。

 水の青。

 土の黄。

 風の緑。

 光の白。

 闇の紫。


 六色の光が、

 柱の内部を流れる。


 

「……きれい」


 アーニャが、

 思わず呟く。


 



 


「普通は、こうはならないんだ」


 ミレイアの声が、低くなる。


「属性は、分離する」


「だが――」


 



 


 結晶柱の光が、

 ゆっくりと変化する。


 六色は、

 境界を失い始めた。


 溶けるように。

 絡むように。

 互いを侵さず、

 しかし確実に。


 

「……混ざっている」


 ミレイアは、

 息を詰めた。


「しかも――調和している」


 



 


 クレージュは、

 無意識に胸を押さえた。


「……俺、何もしてない」


 

「だからだ」


ミレイアは、はっきりと言う。


「六彩は、単一属性の集合ではない」


「状況に応じて、最適な比率で混ざる力だ」


 



 


 アーニャが、

 目を細める。


「……じゃあ、昨日の暴発は」


 

「“逃げたい”と“守りたい”が同時に走った結果だ」


「方向が、定まらなかった」


 



 


 クレージュは、

 息を吐いた。


「……じゃあ、俺が悪いんじゃない」


 

「悪くはない」


ミレイアは、訂正する。


「だが――未熟だ」


 その言葉は、

 冷たいが、

 誠実だった。


「制御とは、抑えることではない」


「選択を一つに絞ることだ」


 



 


 クレージュは、

 ゆっくりと頷いた。


「……守るなら、守る」


「逃げるなら、逃げる」


「両方を選ぶと、力が迷う」


 

「その通り」


 ミレイアは、初めて、わずかに微笑んだ。


「……君は、面白い」


 

「え?」


 

「六彩は、歴代すべてが失敗した」


「だが――」


「君は、失敗を恐れている」


 その言葉は、

 重かった。


「恐れる者は、学べる」


 



 


 クレージュは、静かに答えた。


「……学びます」


「壊さないために」


 



 


 結晶柱の光が、

 ゆっくりと収束する。


 六彩は、

 再び静まった。


 だが――

 確かに、

 一歩前に進んでいた。


 


──六彩の少年は、

 力を振るう前に、

 考えることを学び始めた。


 


──制御とは、

 選択の連続

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